表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
83/83

3人でデート!?編




 とうとう、この日がやってきてしまった……!




 以前、燐太郎(りんたろう)の仲間を探している時に、レオルド様がとても有用な情報を持ってきてくれた。

 その褒美として、わ、私と……デートしたいって言い出して。

 それに文句をつけたのがクラトスで。


 話の流れで、3人デートをすることになっちゃったんだ。



 実は先日、お祭りでクラトスとデートしました、とはレオルド様には言わない方がいいんだろうな……。


 そんなわけで、保護施設からゲートを使って、街へと移動する。

 レオルド様が提案してくれた場所は、港町カナリア。


 燐太郎と初めて会った場所だ! この街で食べたパンケーキ、すごく美味しかったんだよなあ。

 風に交じる潮の匂いに、ほんの少し懐かしさを覚える。


 街に降り立つなり、レオルド様が手を差し伸べてきた。


「さあ、行こうか。エリン」

「え?」


 私が唖然としていると、ばちん!


 雷のようなものが弾け、レオルド様の手を打った。

 クラトスの魔法だ。


「何をする……!」

「君、今日はエリンに触るの、禁止」

「なぜ君がそれを決めるんだ!? というか、私はまだ納得いってないぞ! せっかくのエリンとのデートだというのに、なぜ、君までついてくるんだ!」


 クラトスはむっとしたような顔をする。


「そういう約束だっただろ? 今さら、文句をつける気?」

「ぐう……それは、その通りだが……!」


 レオルド様は嫌そうにクラトスから顔を逸らす。そして、私と向き合った。どうやら、クラトスの存在は無視することを決めたみたい。


「まあ、いい。今日はせっかくのデート(・・・)だ。存分に楽しもう、エリン」


 そんなに『デート』の言葉を強調しなくても……。何度も言われると照れちゃうよ。


「エリンは今まで王都に住んでいたから、こういう港町に来るのは初めてだろう?」


 レオルド様が得意げに先頭に立って、歩き出す。


 あ……あ……どうしよう。つい先日も来たばかりです! とは、言い出せない雰囲気だ。

 私がそう思って口をつぐんでいたのに、クラトスが言った。


「ここ、こないだも来たばかりだよ。丘の上のパンケーキ屋がエリンのお気に入りだ」

「なんだと……!?」


 愕然とした顔で振り返るレオルド様。


 クラトス……。私と一緒にいる時は優しいから忘れがちだけど、本来のクラトスってこういう偏屈というか、ちょっと意地悪なとこ、あるよね……。


「それはまさか……二人きりで……!? エリン、クラトスで二人きりで、この街に来たのか!?」

「いえ、ミュリエルも一緒でしたよ。それに、幻獣保護の依頼で来たので……」

「なーんだ、そうか! 仕事(・・)で! 来たのか! それも、ミュリエルも一緒だったのだな」


 レオルド様は今度は、『仕事』の部分を強調した。

 クラトスがイラっとしたように顔を逸らす。


 あーもう、なんで、この二人って仲良くできないのかなあ~!?


 険悪な二人の間に、私は慌てて割り込んだ。


「あの! レオルド様! 今日はせっかく来たんだし、早く街を歩きましょう。わ、あれ、何かなあ~? 気になります!」


 道沿いに露店がたくさん並んでいる。この辺りは市場になっているみたいだ。

 私がそちらを指さすと、レオルド様は機嫌を治したみたいで、笑顔で頷いた。


「そうだね。では、さっそく行こうか、エリン」


 懲りずに私へと手を差し伸べてくるが、即座にクラトスの魔法で弾かれていた。



 ◇



 今日のレオルド様はお忍びらしく、フードを目深にかぶっている。

 王都から離れたこの街では、それだけでも案外、周りに気付かれないものだ。


 私も聖女として顔を知られているから、王都ではすぐ人に囲まれちゃうけど。

 この街では、堂々と外を歩ける。


「エリンには、こういうのが似合いそうだ」


 レオルド様が露店の一つで足を止めた。

 そして、ペンダントを手にとる。


 おお、さすがレオルド様。センスがいい……!


 中央にエメラルド色の石がはめこまれていて、陽の光を浴びて、キラキラと輝いている。全体的なデザインはシンプルで、普段使いもしやすそうだ。


 ただ……ちらりと見えてしまった値札が、まったく可愛くない。


「わ、すごく素敵ですね」


 確かに綺麗だけど、私には高すぎると思うなー。


 それに、私、普段はアクセサリーは身に着けないんだよね。一応、侯爵家の生まれではあるんだけど、修道院での暮らしが長すぎて。

 質素な生活というのが骨身に染みすぎちゃってる。


 そう考えて、私が気後れしていると。


「エリンが好きなのは、こういうのだよ」


 クラトスがそう言って、別の露店の商品を手に取った。

 リスの置物だ。あ、見た目がスゥちゃんに似てる!


「か、可愛い~!」


 そう思ったら、もう可愛くてたまらなかった。買って帰って、スゥちゃんに見せてあげたい!


 私がはしゃいでいると、クラトスはどや顔でレオルド様を見た。


「ほらね」

「ぐぬぬ……! 幻獣の可愛さに頼るとは卑怯だぞ……!」


 レオルド様は悔しそうに言って、すぐに別の商品を選び始めた。


「エリン! これはどうかな!? ほら、マーゴにそっくりじゃないか?」

「ほんとですね! 表情がそれっぽい!」

「エリン、これ……ディルベルに似てる」

「似てる、似てる! ディルベルにそっくりなのに、顔がちょっと間抜けっぽくて可愛い!」


 私が喜ぶと、クラトスとレオルド様は睨み合う。

 ばちばちっ。視線だけで火花が飛び散りそうだ。


「ふ……ここは引き分けといったところかな?」

「僕の選んだ物の方が嬉しそうだったから、僕の勝ちだよ」

「大人げないぞ、クラトス!!」


 だから、どうしてそうやって競い合おうとするのかなあ?


 それからも二人がいちいち張り合おうとするので、私は思わず言ってしまった。


「あの……! 今日くらいはケンカしないで、楽しくできないかな?」


 二人がハッとして、私を見る。


「せっかく来たんだし……ねっ?」


 黙りこむ二人。

 それから、顔を見合わせた。


「エリンを困らせるわけにはいかない。今日のところは、協定を結ぼうじゃないか」


 レオルド様がそう言って、


「わかったよ」


 クラトスが渋々と頷いた。


「――君のためじゃなく、エリンのためだけどね」


 嬉しいけど、ちょっと余計な一言!



 ◇



 それからは、とても平和な時間を過ごせた。

 市場を見て回るのって、楽しい! 二人が喧嘩しなくなったから、心持ちも穏やかだ。


 露店には、色とりどりの商品が並んでいる。アクセサリー、工芸品、港で獲れた魚介類とかも。


「エリン、見てごらん。あれはこの街の名産品だよ」

「綺麗ですね」

「王子、あっちは何?」


 レオルド様が案内してくれて、クラトスも時々口を挟む。

 楽しいなあ。このまま二人がずっと、喧嘩しないでいてくれたらいいのに。

 そう思った、その時だった。


「返してーっ!」

「誰か捕まえてくれ!」


 突然、通りの向こうから悲鳴が上がる。

 振り返ると、小さな光が人々の頭上を飛び回っていた。


「あれは……妖精? いや、幻獣か?」

「……【フェーリヤ】だ。幻獣だよ」


 クラトスが呟いた。


 見た目は、手のひらほどの大きさの幻獣だ。

 きらきらと羽を輝かせながら飛び回り、通行人の帽子や財布、装飾品を次々と奪っていく。


「ああ、またか」


 近くにいた市場のおじさんが頭を抱えている。


「また……? よくあることなんですか?」

「この辺りでは時々見かけるんだ。悪意はないんだが、いたずら好きでね。ああやって通行人の持ち物を奪って、しばらく逃げた後、その辺に持ち物を投げ捨てて帰っていく。盗みはしないが、迷惑なことには変わりない」


 おじさんが困った様子で説明してくれた。


 妖精は戦利品を抱えながら、嬉しそうに笑っている。

 全然反省していない。


「クラトス……あの子、捕まえた方がいいかな?」

「そうだね」


 クラトスが前に出た。

 指先に魔力が集まる。


 だけど、


「待て、クラトス!」


 レオルド様が慌てて止めた。


「人前だ。魔法は使わない方がいい。君は非正規の魔導士なんだぞ?」


 クラトスは無表情のまま、手を下げた。

 少し考えるそぶりを見せてから、レオルド様の方を向く。


「……王子。風魔法は操れる?」


 レオルド様は目を瞬かせた。


「攻撃魔法なら得意だが、あんな小さな幻獣を攻撃するわけにはいかないだろう」


 妖精は人々の頭上を飛び回っている。

 レオルド様の言う通りだ。

 それに、こんな人ごみの中で魔法を撃てば、被害が出る。


「攻撃はしない。捕まえるだけだよ。風を渦にするんだ。そよ風を作るような、弱めのイメージで……」

「……え?」


 レオルド様が固まった。


「待て……クラトス。まさか、君は私に魔法を教えてくれようとしているのか?」

「僕からの教えは聞きたくない?」

「そんなことは言ってないぞ! 続きを頼む!」


 すごいなあ。レオルド様って素直だ。クラトスに対抗心があるはずなのに、こういう時には躊躇しない。

 きっと、優秀な生徒になれるだろう。


 クラトスも同じことを思ったのか、茶化したりはせずに、真面目に説明を続けた。


「風を渦にして、作ってみて」

「こうか?」

「もっと柔らかく」

「難しいな……」

「魔力をこめすぎだ。包みこむイメージで……そうだな。籠の中にマーゴを入れるイメージ。力が強すぎれば、中にいるマーゴは傷つく」

「それは大変だ……! なるほど、中にいるマーゴが傷つかないように……こうか?」


 次の瞬間。

 レオルド様の手から、ふわりと風が巻き起こった。


 クラトスは満足そうに頷いた。


「いい感じだよ。それで【フェーリヤ】を捕まえて」

「ああ、やってみよう!」


 あ、妖精が戦利品を手に、逃げようとしている。

 レオルド様はためらわず、魔法を放った。


 風が妖精の前に回り込んで、行く手を阻む。風はそのまま妖精を取り巻いて、渦の中へと閉じこめた。


「成功……したのか?」


 呆然と呟くレオルド様。


「やった! 悪戯妖精が捕まったぞ!」

 

 周囲から歓声が上がる。


 妖精は風の壁を突破しようとする。しかし、それ以上は阻まれて進めない。風の魔法に当たっても妖精は傷つくことはなく、平気そうだ。


「すごい!」


 私は思わず拍手した。


「レオルド様、やりましたね!」

「ああ……上手くいったようで、よかった」

「まあ、悪くなかったよ」


 クラトスも素っ気なく言う。

 でも、ほんの少しだけ誇らしそうだった。


 妖精が奪った物は回収して、通行人たちに返した。妖精の本来の生息地は、こことは別の森の中みたい。いったん施設に連れ帰り、生息地に戻してあげることになった。


 レオルド様は、素直にクラトスと向き直る。


「ありがとう、クラトス。君のおかげだ」

「…………」

「また今度、私に魔法を教えてくれるか?」


 クラトスは一瞬だけ目を見開いた。

 それから視線を逸らす。


「……気が向いたらね」


 あれ?


 もしかして。

 もしかしてだけど。


 少しは仲良くなれたのかな!?


 私がそんなことを考えていると。


「おおーっ! あそこにいるのは……!」


 突然、誰かの声が上がった。

 そこで私は気付いた。


 あ、騒ぎのせいで、レオルド様のフードが少しめくれてしまっている!


 ご尊顔がチラ見して、さすがに気付かれてしまったらしい。


「レオルド殿下じゃないか!?」

「え、本物の王子様!?」


 人々が一斉に集まってくる。


 なぜか皆の視線は、レオルド様の横にいる私にも向けられている。


「殿下、お隣の女性は恋人ですか!?」

「お似合いですね!」


 え? え? どうしてそうなるの!?

 っていうか、クラトスの存在は無視!?


 レオルド様は一瞬だけ固まってから、


「はは……! 光栄だよ」


 満更でもなさそうに笑った。


 ちょ、否定しないんですか!?

 周囲の歓声はさらに大きくなる。


「お幸せにー!」


 私は真っ赤になった。


「ち、ちがいますから!」


 必死に否定するけれど、誰も聞いてくれない。


「…………やっぱり、二度と教えない」


 ぼそりと呟く声が聞こえた。

 振り返る。

 クラトスが思いっきりむくれていた。


 完全に機嫌が悪い。


 えー!

 せっかく二人が仲良くなれたと思ったのに!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コミカライズ1・2巻が発売中です!

html>

html>
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ