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眩暈

作者:

 足元がふわふわして、心臓だけが妙に重たい。初めての感覚だった。


 マンションの廊下からふいに見上げた空には、まだ大人になりきれない入道雲が中途半端に伸びている。その嫌な明るさとは裏腹に、私の心は瞳が写し出す全てにどうでもよくなってしまっていた。重たい溜息を吐く。体が熱い。思考がループし始める。頭の中がぐちゃぐちゃで、いますぐ脳みそを掻き出してしまいたい。


 ……半分は興味本位、もう半分は本気。私は廊下から身を乗り出して、真下を見つめた。8階から見下ろす景色は良くも悪くもなく、ただ駐輪場の黒いアスファルトが日差しを吸っていた。驚くほどに、怖くなかった。ふいに手を伸ばす。真下に広がる冷たいアスファルトに、私は温もりを感じてしまった。ほんの眩暈で手が届きそうだった。私は想像した。それはどんなに素敵なことだろうか、と。

この時、私は初めて確信してしまったのだ。私は“死ねる”のだということを。


あぁ、このまま。風が吹いたなら。

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