#記念日にショートショートをNo.23『月に結びて』(Tie to the Moon…)
2019/9/23(月)秋分の日 公開
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【関連作品】
なし
僕たちのクラスに転校生がやって来たのは、2学期がはじまる9月のはじめの頃だった。
髪の毛を左右2つのお団子に纏めた、女の子だった。
「秋野月葉」
黒板に書かれた彼女の字は、とても繊細で綺麗だった。
彼女はおとなしかった。休み時間も1人で本を読んでいて、僕たちは話しかけることさえ躊躇われた。
女の子とさえも、挨拶程度しか交わしていなかった。せっかく新しいクラスメイトになったのに、友達になれないまま、ただ時が過ぎていった。
そして9月も下旬に差し掛かった頃。母親から牛乳とティッシュペーパーを頼まれてコンビニに買い物に出た僕は、その帰り道、彼女を見かけた。
月が輝く秋分の日の夜のことだった。
時計の針が、9時を指した時。
彼女の身体が、白い光を放ちはじめた。泡のような光を全身に纏い、光がきらきらと闇に溶けていき
そして消えた。
街の夜の闇に、彼女はいなかった。
街行く人は誰も、見えていないみたいだった。
僕だけが、彼女を、見ていた。
彼女は、月に消えた。
翌日の学校で、秋野さんは家庭の事情で転校することになったと、先生は告げた。先生も突然のことに驚いているようだった。クラスメイトも、先生の言葉に、戸惑いを隠しきれないでいた。
でも、僕は知っている。
彼女は、月の精だということを。
【登場人物】
●僕:語り手
○秋野 月葉(あきの つきは/Tsukiha Akino)
【バックグラウンドイメージ】
◎ロシアの絵本『ゆきむすめ』
【補足】
【原案誕生時期】
公開時