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最後にあなたに魔法をかけるわ

作者: 八重
掲載日:2022/11/21

「リズ、今日も可愛いね」

「ありがとうございます、ルイス様」


 私とルイス様はガゼボでアフタヌーンティーを楽しみながら二人でいつものように甘いひとときを過ごす。

 目の前にいるルイス・シュタリー様はこの国の第一王子で、その麗しい銀色の髪と碧眼で女性の皆を虜にしてしまう。

 そんなルイス様と私は7歳からの婚約者で、ルイス様の成人と共に結婚することが決まっている。



「どうした? 今日は浮かない顔じゃないか」

「そうですか? そんなことないですわ。ルイス様と一緒に過ごせて嬉しいとぼうっとしてしまいました」


 そう言うと、ルイス様はふっと微笑むみ椅子から立ち上がって私の左側に跪くと、そのまま私の手を取って唇とつける。


「ルイス様っ?!」

「本当に君は可愛いことを言うよ。益々好きになってしまう」



 私は顔を赤くしながら、ルイス様の見目麗しい姿を目に焼き付ける。

 そんな時、ルイス様付きの執事が遠慮がちに声をかけてきた。


「ルイス殿下、これ以上はお身体に触ります」

「まだ大丈夫だ」

「いえ、ルイス様。私は大丈夫ですから、そろそろお戻りになってください。だいぶ外も寒くなってきましたから」

「リズ……」


 ルイス様は申し訳なさそうに私のおでこに唇をつけると、部屋の中へと入っていった。



 家についてからもルイス様のことが頭から離れなくて、私はベッドの上で天井を見上げては目を閉じてルイス様の顔と声を思い出す。

 お身体は大丈夫だろうか?

 でもいつもこの貴重な時間を私に使ってくださる。

 なんてお優しいのだろうか。


 私は窓から見える月を眺めてそっと呟いた。



「大好きです、ルイス様──」






◇◆◇






 そしてその時は突然訪れた。



「心から好きな人ができた」


 突然のルイス様の言葉が私の胸に深く突き刺さった。


 あ、そっか。

 これが婚約破棄というやつなのね。


 私はだんだんとルイス様の言葉が自分の胸に響いてきて、その言葉は全身を蝕んで苦しくて涙が溢れそうになった。

 ダメよ、そうよ。

 この時を待ってたんだもの。


 この時を待ってた……。



 ルイス様はいつも優しくお茶に誘ってくださった。

 

 ルイス様はいつもその声で私を魅了した。

 

 ルイス様はいつも私の手を取って無邪気に微笑んでくださった。

 

 ルイス様は……ルイス様は……。




 私は必死に涙を抑えながら、そっと右手を胸の前に持っていって想いを込めた。

 すると、私の右手の中はぼわっと熱くなり、やがて温かく淡いピンク色の光集まる。


「リズ……?」

「ルイス様……」


 私はそっとその光をルイス様に向かって放つ。


「最後にあなたに魔法をかけるわ」


 その光はルイス様の胸元に入っていくと、ルイス様がわずかに温かく光る。


「リ……ズ……」

「さようなら、ルイス様。あなたが大好きでした」



 私はその言葉を告げると、そっと扉を開けて部屋から出る。

 すると思いが止まらなくなったように涙が止まらなくて、私が歩いた床を濡らしていく。



 私の治癒魔法は強力だから人生で一度きりしか使えない。

 発動条件は2つ。


 一つは「私がその人を好きであること」。

 

 もう一つは……「その人が私を好きでないこと」。


 今までお互いに好きだから使えなかった。

 だけど、これであなたの余命わずかだった身体を治してあげられた。

 あなたが好きだから、これから生きて好きな人と一緒になってほしい──





「リズっ!!!!!」

「──っ!」


 声のしたほうを振り向くと、そこには息を切らして追いかけてきたルイス様がいた。


「なん……で……?」



「君のことが好きになった」

「え?」


 ルイス様は私を抱きしめて耳元で語り掛ける。


「今まで親の決めた婚約者だからって思いがどこかにあって、リズのことを本気で好きになれてなかった。政略結婚なんだからって。だけど、段々と好きになっていって気持ちが収まらなくなった」


 ルイス様がさらに力強く私を抱きしめる。


「僕は君を本気で好きになった。だから言わせてほしい」


 私の身体をそっと離すと私の前で跪き、その美しい瞳が私を捕らえた。



「リズ、僕と結婚してください」



 どうして、私の欲しかった言葉を言えるの?

 私の魔法は確かに発動したはずなのに、どうして。


「リズは魔法を使って僕の身体を治してくれたんだね?」

「え、ええ。でも私の魔法は私を好きじゃない人にしか発動しない……」

「それは違うよ、リズ」

「え?」

「その魔法はお互いに想いあっていることが発動条件だ」

「うそ……でもなんでルイス様が魔法の発動条件を知ってるのですか?」

「僕の母親も同じ魔法が使えて、それを父上に使ったからだよ」


 父上ってことは国王様。それに亡くなった王妃様が同じ魔法を使っていた……。

 じゃあ……。


「リズ」

「は、はい」

「私と一緒にこれからもいてくれますか? 隣でずっと、ずっと私と共に歩んでくれますか?」


 そんなの答えは決まってるじゃないですか。


「ええっ! 喜んで!!」

短いお話でしたが、どうでしたでしょうか?

ブクマや評価☆☆☆☆☆などつけていただけると励みになります。


読んでいただきありがとうございました!!


新作「呪われ令嬢、王妃になる」も良かったら読んでみてくださいませ!

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[良い点] 治って良かったー! [気になる点] 「その人が私を好きでないこと」が条件だと思った理由が気になります
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