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クラゲと彗星蘭  作者: 暁紅桜
6/22

6話「白い画用紙」:叶恵side

HR。今日は文化祭の出し物についての話し合いが行われている。

うちの学校の文化祭は冬休み前に行われる。文化祭が終わって、休みを挟んで終業式。そして冬休みといった感じだ。


「どうしよっか」

「何がいいかな」


クラスメイトたちは楽しそうに出し物を話をするけど、叶恵は早く終わらないかなーって思ってる。

早く図書室。いなかったらあのカフェに行って先輩に会いに行きたい。

図書室では無表情で本に視線を向けるけど、声をかければ話してくれる。

カフェであれば嫌そうな顔をするけど叶恵のことを気にして少しだけソワソワしてる様子がすごく可愛い。


(今日はどっちかなぁ)


どっちでもひどく楽しみで顔が緩んでしまう。幼い子供のように足をパタパタとさせて頭の中で何度も「早く終われ。早く終われ」と唱えていた。


「それじゃ、競争率高いけどうちはカフェということで。頑張るぞー!!」


多くの口論の中、無事に決まった出し物。うちは共学だから男女でいい争いが激しくなるのはわかるけど、最終的にカフェはカフェでも王道の【男女逆転メイド執事喫茶】となった。

ちなみに叶恵は調理班になりました。お家で家事をやってるのがいい結果を生みました。V!

無事に出し物も決まり、各班に分かれて話し合い。そんなことをやっていればあっという間に授業は終了となった。

よし、終わったし図書室いくか!!先輩いるかなぁ。


「あ、海崎さん待って!」


るんるん気分で教室を出ようとした時、クラスの委員長に呼び止められた。

委員長とは同じクラスになってからはほとんど喋ったことがなかったから、ちょっとびっくりした。

こういう時って、提出物とか出してなくて声をかけられるっていうのが多いよね?


「あれ、なんか提出物出し忘れた?」

「あ、ううん。そうじゃないんだけどね」

「ん?じゃあ何?」


用事があるなら早く済ませてほしい。今は1分1秒でも早く先輩に会いに行きたいんだよ。お願い、早く!!


「海崎さんって、天川先輩と仲良いよね」

「……委員長、先輩と知り合い?」


他人から先輩の名前が出ただけでひどく不快に感じた。委員長、一体先輩とどんな関係なんだろう?随分親しげっていうか、みじかな感じで口にしたよね?


「ううん。名前だけは知ってるの。それでね、委員会の時に先輩に頼まれたんだけど、文化祭のポスターを描いて欲しいんだって」


渡されたのは、真っ白の大きな一枚の画用紙。一般的にポスターなどで使用されるサイズの紙だ。


「頼んでも断られたから、なかのいい海崎さんならって委員長の私に話が来て」


とりあえず事情はわかったし、委員長が先輩と接点がないこともわかった。うん、よかったよかった。

しかしなんだ。委員長には申し訳ないけど、きっと先輩は絵を描かない。もちろん、叶恵がお願いしてもだ。

そのことを委員長に話せば申し訳なさそうに謝罪された。その時、ふと一つの案が浮かんだ。


「じゃあポスター、叶恵が描くよ」

「え?」

「先輩は自分では描かないだろうけど、手伝いならもしかしたら書いてくれるかもしれないし。試しに聞いてみる」


先輩は自分では描かない。でもきっと、手伝いって形ならいいかもしれない。実際、叶恵の絵は壊滅的だけ、先輩が教えてくれるならうまく描けそうだ。


「任せて!叶恵と先輩は仲良しだからOKもらえる」


軽く胸を叩いて、委員長に叶恵に任せるように言った。




「いやよ」


だけど、当然それはフラグで、見事に先輩に断られた。

本日、バイトはなくて図書室で過ごされていた先輩。事情を説明すればバッサリと断られてしまった。何と無くわかってはいたけど、実際に言われると精神的にくる。


「お願いです先輩。叶恵の画力は知ってますよね」

「知ってるわ。私が描くだなんておこがましいほどの幼い子供以下の画力だって」

「先輩……なんでそんな平然と刃物を奥まで押し込むんですか……そんなのわかってますよ」


でも、これはチャンスなんだ。先輩が、また絵を描いてくれる。しかも、それをまじかでみることが出来る!


「か、描くのは叶恵です。出来の悪い子ですが根気よく教えて欲しいです」

「だから私は……」

「先輩は、教えてくれるだけで大丈夫です。描かなくて、大丈夫です」


本音を言えばもちろん先輩に絵を描いて欲しい。あの絵みたいなものをまじかで見たい。でも、それはもちろん叶恵のわがままだし、先輩が絶対に描かないのもわかってる。

どうすれば先輩が折れてくれるかわからない。叶恵なりに頑張って言葉を出していく。先輩がああ言えば、叶恵はこういう。といった感じ。

そんなやりとりが、図書室の閉館10分前までつづいた。結果は……


「はぁ……わかった。手伝うわ」

「ホ、ホントですか!?」

「ただし、図書室にくる日だけね。バイトは平日に週2、3だからない日だけ」

「もちろんです。じゃ、じゃあシフト教えてください」

「いやよ」


あ、先輩のIDもらえるチャンスって思ったのがバレたのか、即答で断られてしまった。だけど、連絡先知らないと打ち合わせとかできないし……。


「シフト教えたら、その日にお店にくるでしょ」

「……図書室来ない=バイトでは?」

「……それがわかってるなら教える必要ないでしょ」


気づいたのか、先輩はそういって背中を向ける。一瞬先輩の顔が赤くなっているのが見えた。

あぁ、先輩でもあんな顔するんだ。可愛いなぁ。


「じゃあ毎日図書室で待ってますね。来なかったらカフェ行きます」

「来なくていい」


なにはともあれ、先輩がOKしてくれてよかった。明日委員長にも伝えないとだなぁ。

これから放課後がもっと楽しみになったな。


「いっておくけど、今の画力じゃ話にならないから、自主練はしてよ」

「……はーい」


ポスター……無事に完成するかなぁ……

委員長には、完成に時間かかることも伝えないとだな……

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