初商談
「ありがとうございます、バイスさん……あ、それにウィンさんも。こんなに美味しいものをたくさん食べたのは初めてです!」
「そうだろ、そうだろ。おい、ガキ! てめえも感謝していいぞ」
「……あんたさあ、そういうのって自分で言うもんじゃねーぜ……まあ、いいや。ありがとよ」
素直に喜びを全身で表し礼を言う姉と、いちいち大人びていて癇に障る弟。
「こんなもので良ければ、いつでも。君たちのような育ちざかりの若者を食べさせるのは大人にとっては喜びでもあるからね」
俺に対するときとは違いウィンのきざったらしい発言に、なぜか生意気なはずの弟が、
「へへっ、ウィンさんはずっとこの街にいりゃいいのに」
なんて胡麻を摺っている。
ウィンさん「は」ってなんだ、「は」ってのは。
「とにかくだ、俺はそのパームカンパニーってのからこいつらの親父さんを助けてやろうと思う」
「……僕らが置かれている状況を理解した上で言ってるんだね?」
食事中の会話で既にこの姉弟についてのあらましを聞いていたウィンは、最終確認のように、俺の覚悟を問う。
本来なら俺たちは、一刻も早く自由国家連合に渡るべきだ。
だが、嘘だけで海を渡ることは難しい。おまけに、当てにしていたウィンの金が外国で使えない今、俺たちの懐はかなり心許ない。
「もちろんだ」
「ふっ、なら僕もお前に付き合うまでだ。それに、同郷の君たちを放っておくというのも良心が咎めるからね」
ウィンはいつものように、格好を付ける。
相棒の同意を得られた俺は、姉弟の方を向いた。
「けどな、いいかお前ら。俺たちは救世主様でも聖人様でもねえ。ちゃんと対価は貰うからな」
「……おい、おっさん。言っとくけど金はねえぞ」
「んなもん、わかってるよ」
「お金はありませんが……私たちに出来ることならどんなことでもします」
「対価」という言葉に警戒し腕を組み斜に構える弟とは対照的に、父親のためなら身売りすら辞さなそうな意気込みの姉。
俺の見込んだ通り、こいつらはセットでこそ役に立つ。
「心配しなくても大丈夫、だろ?」
「ああ、お前らにはちーっとやってもらいたいことはあるが。まあ、心配すんな報酬は自分たちで稼ぐ」
長年の付き合いから既に俺の計画をある程度察しているらしいウィンの言葉を受けて、俺は計画のあらましを話して聞かせた。




