0. プロローグ
「レオン様!大丈夫ですか!?」
真っ暗闇の先から声がする。
うるさいなあ。
もう少しだけここにいたいのに。
「しっかりしてください!」
しっかりするもなにも、私ーー山田玲奈ーーは、休みをもぎ取ったはずだ。3件の締切を立て続けに済ませ、急に南国に旅立った先輩の分まで合わせて終えたばかり。
その無理がたたったのか、今日は朝から寒気がすごくて、顔色が悪い自覚もあった。あの会うたびに嫌味を言ってくる課長が、嫌味の1つも言わず、今日は帰って休めと言ってくれたのには少し驚いたが。入社日以来、3年目にして初の定時帰りなのだから、今日くらいは寝ていても許して欲しい。
「レオン様!レオン様!」
身体が揺すられ、真っ暗闇から意識を浮上させられた。
真っ暗闇から浮き上がった先は、とても明るかった。明るい光の中で、茶色い目が心配そうに自分を覗き込んでいる。段々と目の焦点があっていくにつれ、赤茶色の髪の男性に抱きかかえられているのがわかった。彼が羽織っている白いローブに、自分の身体まで包まれているようだ。
少し目を動かして辺りを見渡してみると、ここは庭園のようだ。私は芝生の中にいて、少し先にはレンガの道がある。その道を辿ると、ホテルのような豪邸があった。中世ヨーロッパを思わせるような佇まいには重厚感がある。
少し離れた木の下には、いかにもなメイド服を着たお姉さんと、ふわふわのドレスを着た金髪の少女がいた。金髪の少女は5歳くらいだろうか。目に涙をいっぱいに溜めてこちらを見ている。
「お兄様、本当にごめんなさい!」
……お兄様!?私が、お兄様!?
そういえば、下半身に違和感がある。
あるはずのないものが付いている。
「……お兄様!?お気をたしかに!」
叫ぶ声が遠のいていき、私の意識は再び暗闇に落ちていった。
初めての投稿で不慣れですが、よろしくお願いします。