2 開戦―2つの世界がぶつかる時
警察に連行された亜森数真。一方、魔王軍がルイラ・アモリを捕まえるため動き出す。
-もはや、戦争は避けられないー
ー毎話、前書きで登場人物紹介をさせていただきますー
・亜森数真
合理主義者、機会主義者を自認する高校2年生。学者系の家系にあるだけあって賢いが、しかし一方で物事をリスクリターンチャンスで割り切るので「冷たい」と思われ、告白されて「僕に得がない」と応えて以降友達は少ない。
異世界などというモノに結び付けられたくないと考えて来たのに、あわれ、巻き込まれた。
・内川田康介
大企業のお坊ちゃま。亜森数真の親友。警察を裏から動かせるくらいの力のある家で、しかも康介に甘い。しかしそうしたところをからかう気にはなっても憎めない性格をしている。
・中井美久
露出が多くギャルっぽいが、しかしお嬢様。内川田康介の許嫁。いろいろと思うところがある。
※本編の欠陥を紹介文で補うのは個人的に避けたいので、どうでもいい補足情報が飛び出すかもしれません。字数稼ぎだと思ってお目こぼしをば。
―*―
2040年1月24日(火)、山形県某市
取調室から見える夕日は、血のように赤い。
「まずったか…」
誰にも聞こえないよう、僕は呟いた。
―*―
警察官が、誘拐されていたと思われる身元不明の白色人種系の少女を保護した時だった。
「あっ…!!!」
ルイラは、唐突に頭を押さえ、そしてすぐさま、崩れ落ちた。
意識を失ってしまったルイラを見て、慌てる警官たち。
もしこの時、ルイラの目を覗き込んだものあらば、気づいたであろうー
-ルイラ・アモリの両目の青い瞳に、黒色線で構成された3重円ー魔法陣が現出していたことを。
―*―
「…『絶対未来視』、起動したか。なるほど、位置把握、地形把握、敵性把握。
全軍、ゆけ。」
「はっ!」
何もない、雲一つない、澄み切った空。そこで、声だけが響いた。
「…発生地点設定、魔力放射開始。」
重々しい声が、青空を揺らめかす。
-戦争が、始まろうとしていた。
―*―
目が覚めれば、私は、おかしな乗り物の中にいました。
家畜に引かれていない...魔法もなしに、どうなってるのでしょう?「科学」、すごい...
「やあ君、もう大丈夫だ。安心してくれ。」
「な、何が安心!できるものですか!」
私が倒れる前の「絶対未来視」で見えたのは、数々の魔物に、焼き払われる街の光景。
「すぐ!住民を!避難させてください!あなたも!逃げて!」
「…何を言っているのかわからないが、まずは名前を...」
「だから…もう!離してください!」
「警部補、どう思います?」
「…誘拐されたショックで錯乱しているか、それとも、そう思わせようとしている他国の工作員か...」
「…どちらにせよ、名前を教えてくれないことには...」
「名前は!ルイラ・アモリです!」
「…『亜森』?それってあの家だろ?」
「家主が自分の家の人間を『息子が誘拐してきたかもしれない』と通報するとは考えられん。偽名か、そう名乗るよう言われているか...」
ダメ...全く信用されてません…早く、アモリさん...
―*―
「いい加減教えてくれ。君の部屋にいた少女を、君の親は知らんと言った。なあ、アレは誰で、何の目的がある?」
「…言うわけにはいきません。」
「悪いが、こちらには上からの指示がある。情勢からして、この時期に不審人物をかくまおうとはただ事ではない。
…早く、吐いてくれないか?」
ただ事じゃないから言わないんだよ。
「…今ならば補導記録を抹消してもいい。引き返せるぞ?」
「…上役の機嫌を取って司法取引ですか?」
「…ガキが、生意気な口を。」
刑事が舌打ちする。
...挑発してもどうにもならないが、とはいえ異世界うんぬんといったところでどうにもならない。八方ふさがりな現状を鑑みれば、康介が、内川田家が何とかしてくれるのに賭けてそれまで時間を稼ぐしかない。
...さて、どうするか。
―*―
異変を最初に捉えたのは、航空自衛隊松島基地のレーダーだった。
透明化の魔法は、「己に向けられるすべての視線をはじく」効果があり、魔王はこれを全軍にかけていた。しかし、その規模でレーダー波が反応しない空域を作れば、「魔王軍がいる空域に鳥が侵入すると見えなくなる」などの異変が発生し、まして隣国が戦時下の今ステルス偵察機対策のおかげで些細な異変にも敏感になっている。気づかないわけがなかった。
直ちに、主力戦闘/攻撃機F-i3「心神」2機が、哨戒のために飛び立つ。
マッハ3まで加速できるF-i3ではあるが、それでは観察ができないため、三角形の第六世代ステルス機は、マッハ0,8で轟音鳴らして宮城から山形の上空へ進入し...
ー「『波城壁』?」
…そこで、突然に、一瞬で、完全につぶれて、放物線描く金属くずの群れとなって落下していった。
―*―
「ルゼリア、やりすぎである。」
「あーら、そうかしら?でもこの世界がどんな魔法を持つのかわからない以上、先手必勝は原則よ?恐怖を刻み付けておかないと、ね?」
「恐怖ではなく復讐心を植え付けているから陛下は怒っておられるのであるルゼリア殿。」
「バギオ、うるさいよ?」
何もない空中で、3人の声が響く。一人は女、二人は男。
「陛下、小手調べにいいかしら?」
「…関係ない建物にしてくれ。」
「ぬるい気もするけど?
…『波長槍』?」
―*―
刑事が、じれてきている。これ以上の無言はまずいな...殴られたくはな...
ガーンッッッ!!!!!!!!!
ー殴られるどころではないすさまじい振動が、僕の全身を貫いた。骨にしみる…
「な、なんだ今のは!?」
刑事が、しりもちついて驚いている。
ガーンッッッ!!!!!!!!!
再びの振動に、今度はグラグラという大きな揺れが混じる...崩れる!?
「刑事さん、状況はこれを読んでください。僕は行く!」
服に縫い込んでおいたメモリーチップを渡し、ひしゃげてしまっている取調室の扉をぶち破る。
「ちょ、ちょっと、きみ!」
-状況を鑑みるに、爆発か、それに類似した攻撃。少なくとも地震ではない。そして、何回も連続しての周期的振動は、「振動により攻撃している」ことを示す。
工具以上では振動剣、高周波ブレードといったものは実用化されていない―接近する必要があるだけ無駄だからーが、魔法ならば、あるいは銃火器なくば、その限りではないのかもしれない。いずれにせよ、振動によって建物を破壊するなどという攻撃を、わざわざ開発したバカがこの世界にいるとは思えない。
「待ちなさいっ!」
警官が、僕の腕をとる。
「借りますよ!」
近くの机の上のスマホー古いなーを手に取り、サウンド入力を起動...くそ、ロックなんかかけやがって!
「じゃあもうしゃあない!全員逃げて!」
「お、お前何を...」
ガーンッッッ!!!!!!!!!
再び、すさまじい振動。その中で、見える。
天井が、机が、床が、ある一点だけ粉のようになって一瞬で砕け散り、四方にひびを入れながらも、穴が拡大していく。それはまるで、無理やり巨大なドリルか千本どおしで貫こうとしたかのような...
「…これはもう、魔法はあるで確定か!」
グラグラと、足元が揺れる。一刻の猶予も...!
バラバラと天井からかけらが降ってくる階段を駆け下り、道路に出てなお、安全そうな距離まで走る。
ゴッ…ガッシャ――――――ン!!!!!!
轟音が、背後から響いてきた。
振り返れば、警察署の道路側半分が崩れて崩壊し、逃げだしてきたと思しき警官たちが、呆然とがれきの山を見つめていた。
―*―
俺は、かなり焦っていた。
「だから親父、聞いてるのか!?」
「ああ!そもそもお前、いくら何でもすぐにどうこうできるわけないだろう。今から国会議員に話をしてくるから...」
「…いいやもう!だったら親父、数真の釈放はいいから、今市内で動いてるパトカーの位置!」
「だからそんなすぐわかるか!」
ピー、ピー…
「だあくそっ!」
地団太踏む。
「コースケ、そんな慌てなくても...」
「だけどパトカーは警察署のほうへ来てない。ならどこ行っちまったっつうんだよ!」
「コースケ、落ち着いて。パトカーが向かう場所なんて、乗せてる人を連れていく場所しかないでしょ?」
「…じゃどこだ?」
「警察じゃなければ...
…病院とか!」
「なるほど。
…市立病院へ!最速で!」
自動運転車は、あっという間に加速して、市立病院へと向かう。
ガーン!!!
後方から爆発音のような音が響いてきた。
「見てコースケ!煙が!」
「煙...?っておいあれ警察署のほうだぞ!
…警察署へ引き返せ!最速で!」
―*―
空自機2機の反応消失、続く謎の爆発。不審船騒ぎで臨戦警戒をしていたこともあり、防衛省はすぐに反応した。
最新鋭戦闘機を2基同時に一瞬で撃墜できるかもしれない敵がいるかもしれないということで、F-i
3戦闘/攻撃機とV-22ーJオスプレイ改の編隊が西へとスクランブル発進する。
さらに陸自の基地でも、無人ヘリこと新無人偵察システムが発進を始めようとしていた。
―*―
「乗って、亜森くん!」
「中井!康介!」
時速60キロ以上で滑り込んできた自動運転車に、飛び込む。
「ルイラの居場所は!?」
「たぶん市立病院!」
「なるほど、警察病院は遠いからな...」
「ところで、亜森、あの煙は?」
「…災害じゃないなら、何かの攻撃だと思う。おそらくは、振動を利用した。
砲弾の類がなかった。ビームの類かも知れないが...」
「魔法ってやつかもしれないってこと?」
「…ああ。だとすれば自衛隊でも勝てるかどうか...」
現代兵器を詳しくは知らなくても、それがAIとかを内蔵した精密機械であることは知っている。そしてそうなら、物理法則を無視するだろう魔法に対して、正常に対処できるのか?最悪、巨額の防衛費がすべて無駄だったということにも...
考えている間にも、自動運転車は病院の前についた。一台のパトカーが止まって、何やら騒ぎになっている。
「は、離して!下さい!」
「ちょ、ちょっと、検査を受けて...」
「あ!アモリさんこっち!です!」
騒ぎの中から、ルイラの声で呼びかけられた。
「この人たち!離して!くれなくて!」
「…誘拐の被害者を保護したつもりが、誘拐犯と思われちゃザマねえな。」
「康介、皮肉言ってる場合か?
ルイラ、大丈夫か?」
警官たちが色めき立つが、知ったこっちゃない。
「その人たちにも事情があるから、悪く言わないでやって...」
「皆さん!伏せて!」
ルイラが、頭を抑えたかと思うと、叫んだ。
一瞬なんのことかわからなかったが、言葉を咀嚼するとともに中井の頭をつかんで、僕自身とともに地面に押し付ける。
「え、ちょ、亜森くん!?」
ガーンッッッ!!!!!!!!!
次の瞬間、轟音がして、嫌な風が吹き荒れた。
パトカーが粉々に砕け、血肉が散っている。
「な、何...?」
「中井、見るな。」
僕ですら、ちょっと現実感を見失いそうだ...康介、吐いたな。
ルイラが、コートに赤い血をつけながらもこっちへ走ってくる。
「大丈夫か?」
「はい!それより!逃げましょう皆さん!」
「いいけど、あの攻撃は!?」
「『波長槍』です!波で作った!長槍だと聞いています!」
「波で作った?」
波…振動か?
「あーらお嬢ちゃん、他人の秘密を勝手におしゃべりするなんて、いけないじゃない?」
考えながらもとりあえずルイラの手を引き走っていると、前から声が響いてきた。
目の前、何もない空間に、徐々に陽炎のような人型のもやが生まれ、次いで赤く色がついていき...
深紅の衣装。ヒラヒラと細い布がいくつもはためいている。天女のような服装と例えればわかりやすい。天女のイメージ通り薄く肌がかすかに透けて見えるが、全ての布がレースでできているからのようである。胸元のガードがなっておらず、胸の上と谷間が見えている。
衣装の主の女は、血のように赤い口紅を塗り、黒髪を意思を持つものかのように動かしていた。
「ル、ルゼリア殿!?わ、私を!追って!?」
美人。年はあっても20前半か?いたずらっぽい、というかウザい笑みを浮かべている
「アレ、ドSだな。」
「コースケー?」
「すいません。」
しかし康介、この女がドSが似合うというのは、わかる、うん。
「後ろの3人、どいてくれる?用がないの?」
日本語で話しかけてくるのは一体...と思ったが、左耳から口にかけて、インカムマイクのようなものがかかり、黒色の、五芒星入り二重円が耳元と口元で小さく回転している。…翻訳魔法か?
「どいたら、どうする?」
袖をつかんで震えるルイラをかばいつつ、尋ねる。
「あーら、それ聞いてなんになるの?」
「信用度がわかる。」
「そんなものわからせなくても?無理やり奪い取ればいいだけだし?」
ルゼリアとルイラに呼ばれていた女ーもう魔女でいいだろう―の黒髪が、重力に逆らい舞い上がった。背後で円を描くように広がっている。そして、四重の円とフラクタルのような三角形からなる赤い魔法陣のようなものが、その髪の毛の表面で光っている。
「『波城壁』?」
「伏せて!ください!」
―*―
街のあちこちで煙が上がり始め、到底ただ事とは言えなくなってきたところに、空自のF-i3は現れた。
地上で何らかのテロが起きている、最初、パイロットはそう感じた。しかし、一秒立たずにその仮定は裏切られた。
-「『意光変』」
一番機が、一瞬で赤熱、蒸発する。
誰も、何が起きたのかすらわからなかった。
地上からの攻撃ならば、上空数千メートルを飛行中に受けるとは思えない。ビームの類だとしても、指向性エネルギー兵器が亜音速で飛行するFーi3に命中できるとは思えない。
考えている間に、2番機から5番機のパイロットは、猛烈な吐き気に襲われ、意識を手放した。
―*―
比較的低空を高速飛行したオスプレイ改は、正体不明の攻撃を受けることもなく、現場へ到着した。
ちょうどその時、透明化の魔法が解かれた。
「な、なんだこれは!?」
パイロットは、何度も目をこすった。夢かとも思った。
街の上空を飛行する、首が長いプテラノドンの化け物のような、黒褐色の巨大生物。そして、町の東西南北に鎮座する、ビルのような高さを誇るカミツキガメのような何か。
プテラノドンモドキが、口から黄色のビームのような何かを放出して迫ってくる。
「隊長機より全機!こ、攻撃を許可する!」
半ば現場の独断ではあったが、バルカン砲がうなりを上げる。
一秒の間に100発を越える弾丸がほとばしった。プテラノドンモドキが、肉片へと変わって墜落、どこかの家の屋根にぶつかって周囲を血で赤く染める。
ほかのプテラノドンモドキが激昂し、黒板をひっかくような聞くに堪えない鳴き声を上げて口を開いた。
口の奥で、黄色い魔法陣が回転を始め、その中心に黄色い球体を生み出す。
ほかのオスプレイ改が、バルカン砲を発砲、何体かの胴体をひき肉に変えた。
生き残ったプテラノドンモドキが、首をまっすぐ伸ばした。
ズンー!!!!
何かが、その口から光を発した。衝撃波らしきもので、オスプレイ改がふらつく。そしてその向こうのビルが、大きくえぐれた。
肉眼では、何が起きたのかさっぱりわからなかっただろう。しかしオスプレイ改のレーダーは、プテラノドンモドキの口から何かが超音速で飛び出したのを感知していた。
慌てて、オスプレイ改が旋回を始める。
「恐れるな!奴の欠点は長いく」
ズンー!!!!
首を緩く湾曲させたプテラノドンモドキの口から黄色い光がほとばしり、隊長機の中央部に大穴が開いた。そのままフラフラ、空中分解しながらオスプレイ改が墜落していく。
「マジか…首を曲げてても撃てるのか...」
次の瞬間、そうつぶやいたパイロットもまた、両断されるほどの大穴を開けられ絶命した。
―*―
一瞬で魔物の巣窟と化した市内で、かすかに漂う焦げ臭いにおいをかぎつつ、僕らは地面に横たわっていた。
起き上がって、前に進もうとする。しかし、空気が叩くような衝撃を伝え、呼吸できなくなり、後ろへ吹き飛ばされた。
「な、なんだいったい...っ!」
その時、風が吹いてきた。巻き上げられた砂が、目の前へ飛んでいき...
…空中に立てられた見えない平面があるかのように、その上で砂が波打っていた。
「バレちゃ仕方ない?それは『波城壁』。空間に作り出した、波打つ壁よ?こんな風に、波を変えることも...?」
砂粒の波打ち方が小さくなり、、波ではないタダの平面になった...かと思うと、赤く光って消え去った。かすかに、熱が伝わってくるー激しい振動の摩擦熱で、砂粒を蒸発させた?
「…警察署を破壊した振動も、お前か?」
「それが何か知らないけど、味方で振動使い、波使いは私だけ?」
おそらく、波の壁のこちらに僕、康介、中井、向こう側にルイラと魔女ルゼリア、そう分断されてしまっている。
ルイラを渡すべきでないのはちょっと考えただけでも分かる。何より、僕はこの魔女が気に入らない。
が、波でできた見えない壁などという物をどう越えるか。不用意に近づけば、強烈な振動で内臓をやられたり、振幅の大きな波で吹き飛ばされる可能性が高い。さて、どうする…
いや、少なくとも声は普通に通っている?なら、音なら通るか?…
「康介、中井、スマホを壊してもいいか?」
「いくらでも買えるしいいぜ。」
「…亜森くんがそうすべきだって言うなら。」
二人がスマホを投げてくる...ホント、いい友人だ。
「あーら、何かしら?魔法?それとも物理?」
「…さあな!」
よし、セット完了!
「受け取れ魔女!」
輪ゴムでくくった3台のスマホを、思いっきり、前方へ投げる。
さあ一か八か!
「無駄なのだけど?」
3台が、空中で、何かに止められたかのように静止し...
ピキーンーーーーーーッ!!!!!!!!
甲高い、耳障りなハウリング音が、一瞬、辺りを満たした。誰もが両耳押さえてうずくまる。
入力音はスマホの破壊音と波自体の振動音、そして、全てのスピーカーとマイクを最大にし、3台相互でハウリングさせた、騒音兵器(?)。おえ、吐き気がする...
ルセリアの、魔法陣広がる黒髪が、耳を両腕で思い切り抑えたためかうずくまったためか何なのか、消えうせた。髪の毛が垂れさがる。
魔法が解除された方に賭けて、ルイラのほうへ突進、抱き着く。これで、もし五体無事に連れ去るつもりなら、どうにもできまい。
…まだ、耳が痛い。
「ふ、ふぇえ!!?」
「ル、ルゼリア、僕はルイラから離れるつもりはないぞ。無理に引きはがすつもりなら...」
この世界の武器など知らぬはず。シャーペンをルイラの首に突き付けるだけで、ハッタリに、なるか?
「ふえ!?えええー!?ど、独占欲!?」
「…おまけ付きで持ち帰るわけにもいかないし?一緒に攻撃したら姫を傷つけるし?あーら...
…なんですって?いったん退け?
…陛下!?了解です、直ちに透明化、合流します!?」
よくわからないやり取り―通話?―ののち、ルゼリアは唐突に、もやのようになって消え去った。
―*―
空を飛び交う化け物たちが、消えてゆく。
「ああ、耳いてえ。」
「よ、よくわかんないけど、勝った、の?」
中井が、へなへなへたり込んだ。
「す、すごいです!アモリさん、ルゼリア殿って!魔王軍2位で...」
「ルイラ。
そんな大物が、なぜここに現れたのか、教えてはくれないか?」
…夏休みなら書き進められるかと思いきや、一日中自由になるとだらけて、一日1000字しか進まないことも…
大丈夫です。「神話の」は既に書き終わっているので、後8話できちんと終了させます。投稿を忘れなければ遅延もしません(だったら今予約投稿しろって?いや、ものぐさとはこういう人のことを言うのですよ…)。
この後、物語は一気に戦乱へとなだれ込みます。圧倒的な威力と戦力を持つ「魔王軍」に対して、現代技術の申し子たる自衛隊が立ち向かう中、4人の行き着く先、見届けてやってもらえたら幸いです。