終 新たなる戦へー汝ら、歩き続けよ、祈り続けよ
冬に、ルイラと出会って。
否応なく巻き込まれた戦いの末に、結ばれ。
夏、「合理的であるか否か」「理性を以て判断せよ」と肝に銘じてきたはずの彼は、ついには自分すら捨てた。
そしてふと、誰もが振り返る。
「これで、正しかったのか?」
-朝本と、亜森が選択させられる時、二つの世界は新たなステージへ…-
―*―
2040年8月15日(水)、宮崎県高千穂町高千穂神社
「ルゼリア、バギオ、短い間とはいえ、世話になった。」
「いえ、何もしてないし?」
「向こうで、ルイラを頼む。」
「…いいであるか?」
「…これ以上、いらん争いに巻き込むわけにはいかない。二つの世界は、まだ交わるべきじゃなかった。」
それに、こんな力も、あるべきじゃない。
「…任せて?」
「いつか、その時が来たら、ちゃんと来るであるよ。」
説明のつかない力が、説明のつかない方法で、世界の壁を越えて二人を帰していく。
薄れていく二人に、姿が消えても、なお僕は手を振り…
「っ!」
心臓が、痛い…
…血?
…はは、そうだね、朝本陸将補―
―*―
-これが、もっとも合理的な、解決手段だ。
この国、この世界に、魔法も、圧倒的な力を誇る超越者も、要らない。
そんな力、奪い合って戦を呼ぶだけだ。
そんな者、危険とされ争いのタネになるだけだ。
今度は彼の身柄をめぐって、純粋な悪意が渦巻き。
今度は彼の危険性に対し、純粋な攻撃本能から戦争が起きる。
戦死者全てを生き返らせ、魔物をチリに消し、異世界人全てをもとの世界へ送り返す、そんな力、あってはならない。そんな者、いてはならない。
タアン!
なぜか、ライフルの銃身に、涙がこぼれていた。
「…済まない、亜森くん、これも、平和のためだ。」
タアン!
もう、かすんで前が見えない。
「…帰る。」
「…遺体は?」
「確認したくない。」
―*―
「…君、もう少しで『虚ろに響く世界の理』にたどり着けるかも知れなかったのに。もったいないねえ。」
「兄様どうする?」
「…優しさを見せたくはないけれど、配役の問題があるからね。温情をかけることにしよう。」
「で、いただくの?」
「もちろん。こっちに限界があるから『死者をよみがえらせる』くらいが関の山になるだろうけどね。
やろうか。」
「ええ」
「「…起動、閲覧権限最上位、対象を接続、強制取り込み。
技能者亜森数真、魂を情報総覧へ。」」
「…これで、一応確保はしたわね。」
「じゃあ、彼には罰を与えよう。生き続けるという、ね。」
「それじゃ罰にならないんじゃない?軍事機密過ぎて刑事罰も困難だし。」
「一般人には良心の呵責とか、あと、会えない哀しみとかあるらしいよ。」
「なによそれ。」
「さあ?
さてと…
傀儡憑依、亜森数真、有効化。
甦れ。死んでもらうには早すぎる。
…祈のためにも、せいぜい長生きしろ。
そしてあがけ。万事を捧げろ。
歩き続けろ。
祈り続けろ。」
―*―
「あれ?僕は…」
死んでない?なぜ?
…そしてなぜ、力を、魔法を失っている?
…まあ、することは変わらないか。
僕は、再び、立ち上がることにした。
-ルイラにたどり着くため。
これにて、「神話の」は終了し、「新たなる科学の相互干渉」へと続きます(書き溜め済み、エタりません)。
続編は戦記ではなく、全てが地球側で完結いたします。
稚拙さが深まってしまい申し訳ありませんが、しかしご一読いただければ幸いです(投稿を忘れて遅れたらすみません)。
同時投稿の続編「新たなる科学の相互干渉」も、よろしくお願いします!




