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序 転戦ーそしてすべてが始まった

 習作「鎌倉幕府滅亡せず!」に続きまして、いよいよ受験期間に考えておりましたシリーズを、第一部から投稿させていただきます。

 第一部「新たなる神話の相互干渉」は、異なる神話を持つ二つの世界ー魔法を持つ異世界と、軍事力を持つ現代世界が、2040年激突する物語です。その中で少年少女は、どこへたどり着けるのか。

 -ご覧いただければ無上の喜びです。

                    ―*―

神暦2700年1月1日(日) アディル帝国東方辺境

 「魔王閣下、準備、整いましてございます。」

 「そうか。」

 魔王、そう呼ばれた壮年の男は、周囲を何度となく見まわし、うんうんと頷いた。

 オリンポス神殿あるいはストーンヘンジをほうふつとさせる、何本もの真円筒形の巨石に囲まれた、円形の神殿。これも石の床には、円がいくつも直線で繋げられ、同心円状に幾何学的な古代文字が描かれた魔法陣がミゾとして刻まれている。

 「機は熟した!

 これより、星降りの儀を行う!」

 魔王は、そのマントを翼のように翻し、神殿の中央、魔法陣の中央に立った。

 杖を円の中心のくぼみに差し込み、魔力を魔法陣全体に流し込む。

 家臣である、外側は黒で内側は赤のマントを羽織った者たちー中にはシカのような角を持つ者、また白い仮面で素顔が全くわからない者のような異形もいるーが、魔力で光り始めた魔法陣から逃れようと、神殿を降りてその周りで平伏する。

 東の空に、現れる一本の光筋。

 やがて、甲高いキーンという音が、空から響いてくる。

 微動だにせず頭を垂れる家臣たち。

 光はやがて、まっすぐな軌跡を描き、神殿に迫った。

 魔王が、両手を天へ掲げ、3歩しりぞく。

 光は近づいてくるにしたがって、白熱する隕石という正体を現した。

 巨大な、白く輝く岩が、急速に大きく見えてくる。

 魔王が、神殿の外で一人だけひさまづかずに心配そうにしている、ベールをかぶった人物を見た。

 「…泣くな。泣いてはならん。」

 誰に対して、そうつぶやいたのだろう。

 次の瞬間―

 -視界を眩い白が埋め尽くし、炎が吹き上がり、巻き上げられた土砂が音速を超える爆風によって成層圏まで到達した。


                    ―*―

西暦2040年1月7日(土)、日本国秋田県某海岸

 警官隊が、吹雪吹く海水浴場を歩いている。

 「全く、正月早々、物騒な連中だ。」

 「まあまあ警部補、そうはいっても仕方ないことですよ。何も飛んでこないだけよかったじゃないですか。」

 「お前も評論家じみたことを...

 そもそもなぜ、隣国の情勢に俺が正月休みを返上せなならんのだ。」

 「そんな、僕だって彼女とのデート無くなったんですよ。せっかく姫始めしようと思ったのになあ…」

 「お前は県警の品位をどうしたいんだ...

 っておい、お前、アレ…」

 「…警部補、不審船ですよね...」

 「ああ...

 県警本部に連絡!不審船が砂浜に座礁しているのを発見!手すきの捜査員は直ちに当所へ集合、また地区一帯を封鎖せよ!

 繰り返す!漂着不審船を発見!山狩りも視野に入れ、当該地区に非常線を張れ!」


                    ―*―

2040年1月16日(月)、山形県某市

 その日も僕は、新学期の憂鬱に身を揺らしながらも、明日突然に30㎝積もるだろうと予報される初雪のことを考えていた。

 「宿題ってどうなってたかわかる?」

 親友の中井美久が、彼氏の内川田康介とつないだ手をそのままに、もう片方の手を振って問いかけてくる。

 「あ、カズマ、それ、俺も聞きたいわ。」

 「…君、本当に自分でやるのか?」

 「まさか。」

 おい、甘やかされすぎだろお坊ちゃま。

 「…ほら。」

 仕方がないのでデータを送ってやる。

 「コピペするなよ。」

 「もう、新年早々亜森くんに迷惑かけないよー。」

 「ならいいけど...

 それと内川田、次『カズマ』って呼んだら絶交な。」

 なんか異世界にでも行きそうな名前だから嫌なんだよ。

 「おい、誰に宿題教えてもらえばいいんだよお!」

 「お前の家なら、別に全科0点でも卒業させられる。問題ない。」

 問題「しか」ないな、うん。

 「つ、冷たいこと言うなよ亜森~」

 「そう、それでいい。

 じゃ、また明日な。」

 僕は、カップル二人に別れを告げ、家へ向かう下り坂を降り始めた。

 しばらくして。

 「あの!アモリさん!ですか!」

 透き通るような、不可思議にも語尾にいちいちアクセントがつく声。それがなぜか、前から呼びかけてきた。

 顔を上げる。

 灰色に汚れた、地面まで擦る大きな上着を羽織った少女。銀髪がこれも地面すれすれまで豊かに垂れている。

 …気象条件を鑑みれば上着のセレクトは正解、しかしオゾン層の現状を鑑みれば、メラニンが薄いことを示す銀髪の人間は紫外線対策をしなければ非常にまずい。

 「…亜森アモリ数真カズマだ。」

 下の名で呼ばなかったことは褒めておくとして。

 「…君、どうして僕の名字を?」

 「さっき!友達に!呼ばれてました!」

 …なるほど個人情報漏洩か。

 「で?僕に何の用?」

 用がないわけがない。しかし...

 …年下?少なくとも年上ではないな。おそらく顔立ちから鑑みるに、アジア系ではなく西洋系の金髪碧眼。日本語が使えているがおかしいところ、日本に来て日が浅いのか。

 「えっと!その!アモリさん!家に!」

 …かわいらしいが、胸はない。西洋には巨乳が多いという僕の中のステレオタイプに反証一つ。

 「かくまってください!」

 ...かわいいのにろくでもないことを。

 「結論から言おう。ダメだ。」

 「え!?」

 「常識を鑑みろ。いいか年頃の男子高校生が素性もわからん外国人美少女を家に泊めておけるか?

 そもそも僕の家には両親だっている。社会的立場を鑑みれる大人なら、高校生の息子がいるのに、家出娘を預かれるか?」

 小説じゃねーんだぞ。

 「で、でも...確かに見えたのに...

 …ううん、いいことですらダメなのかな...」

 「他を当たってくれ。虐待ならば児相と警察に電話するし、力になれそうな富豪にも心当たりがある。」

 いっそ内川田にかくまってもらえ。警察への捜索願ぐらい探し出(ハッキング)して圧力かけてひねりつぶしてもらえるぞ。

 「ダメなんです!それでは!あなたでないと!」

 「…オーケー、話だけ聞こうか。」

 考えは変わらないと思うけど。

 「…私!えっと!その!

 …信じてください!

 異世界から!来たんです!」   

※しつこいようですがフィクションです。実在の国家、人物、組織その他と関係はありません。

 なぜか「鎌倉幕府滅亡せず!」のようにプロローグを男女の出会いで締めようとしてすみません。

 それにしても先日親友に「なろうに書いてる」という話をしたところ、同じように小野篁にちなんだユーザーネームの方がおられるということを知らされ、絶句しましたーなかなか非凡な考えなどできないものです。あともう少しで被るところだった… しかしこちらのユーザーネームはグーグル検索では別のものが引っかかってヒットしないようで、皆さまどうもすみません…

 ところでこの話は「現代」か「近未来」か、ですが、自分としてはぎりぎり現代だと思います。科学技術がSFの段階に足を踏み込めば近未来ー車が無人運転するまでは現代、空を飛んだりチューブの中を動いたりすれば近未来かと。異論もございますでしょうがしかしおそらくその程度から目くじらを立てると終わらないので、向後とも平にご容赦を。

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