表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無色透明のトロイメライ  作者: 皐月凉
2章 力の責任
62/62

61話 再確認を

「あぁー……しんど……」

「……なぁ葵、大丈夫か?」

「全然です。遥ってば容赦なさすぎですよ」


 遥に拉致されてからだいたい1時間は経った頃、遥にひたすらボコられてからようやく解放された。殴られ蹴られ投げられ……ホント多彩だな、アイツ。そして、グロッキーになった俺はソファーに突っ伏していた。つ、疲れた……。ていうか、痛い。体の節々が痛い!


 外に出ていた後藤さんが俺を見かねて声をかけてくれるが、それに答える元気もなかった。


 途中からは少しずつ反撃できるようになったんだけど、如何せん遥があまりにも怖い。隙があれば急所狙ってくるし、蹴りや投げ技も多彩。これさっきも思ったな。まぁ、アレだ。何と言うか……躊躇というものがない。最善と思った行動を即座に移している印象だ。

 まだ戦闘経験の少ない俺だと、変に色々と考えてすぐに動けない癖がある。足りないのはそういう部分だろう。それに加えて反射神経とかも違いそうだな。


「まぁ、せやろな。アイツは容赦せんし、そういう手加減っていう感情とかもないんちゃうん?」

「あー……0か1しかない感じですかね?」

「そうそう、そんな感じや」


 手加減は感情とは別だと思うが、そういう相手を想う感情が今の遥にはないってことか。自分への感情がなければ、そもそも他人……人の心が分からない。そういうことかな。


「そういえばなんですけど、今までどれくらいロード倒したんですか?」

「んー、まだ20はいってないくらいやな」

「思いの外多いですね。今まで見たことありませんよ」


 ……そのくらいロードがいたなら、もっとニュースにもなっていそうだが。不自然な事件や目撃情報とか。

 ていうか、地震の影響からこっちに流れてきたロードはどうやって今まで生きてきたのかも疑問だ。こっちの環境はロードにとっては毒だし、レーヴェみたいな裏技は使えないだろう。今俺の持っている扉のような物がロードの世界にもっとあるとかか? 可能性としては充分アリだが。


「そりゃあな。けっこうがっちり情報統制してるし。目撃者がおってもどうにかするし」

「なんかまだ会ったことのない人が融通利くんでしたっけ。……イテテ」


 話ながら痛む腕を抑える。


「そうそう。……つーか、明日本番なのに大丈夫か?」

「最悪どうにかできますんで、大丈夫です」


 レーヴェなら身体の時間を巻き戻せば痛みは治まるはずだ。


「ならええけど……」

「で、葵さん。もうそろそろ帰るだろ? いい時間だしよ」


 途中宿題をしていた慶が割って入る。宿題してたはいいけど、めっちゃウトウトしていたな。チラッと時計を確認したが、確かにもうすぐ6時になりそうな時間帯だ。


「さすがにな。親に明日の説明もしないとだし」

「お、帰るか。葵、途中まで送るで?」

「助かります」


 正直ありがたい。まだ少しは体が痛くて長距離歩くのはしんどい。痛いのは差し引いても疲れたこともあるしね。体がけっこうダルい。


「お疲れ、葵さん」

「慶もありがと。口裏合わせよろしく」

「おーう。さてと、俺も帰るかねー。明日に向けて寝たいし」

「慶はバックアップやろ。頑張るのは主に葵なんやから……。あ、慶も送ろか?」

「あー、今日はいいわ。歩いて帰りたいし」

「ほいよ。んじゃ、葵、行くか」

「はい。慶、またな」

「おーう。明日頑張れよー」



 と、送ってもらえることになった俺は後藤さんに車を乗せてもらい、家の近くで降ろしてもらった。


「じゃあ、ゆっくり休んでな。遥のせいでどこまでゆっくりできるか分からんがな……ったく、本番は明日だってのに、そんなキツくボコボコにする必要ないやろ」

「まぁまぁ、俺は大丈夫ですよ。痛みはもうそれなりに引いてますし。多少疲労感は残ってる程度ですので」

「ならええけど。じゃ、僕はこれで」

「お疲れ様でした」


 後藤さんが乗った車が離れたのを見てから、少しだけ歩いて帰宅。


「ただいまー」

「おかえりー。お兄ちゃん遅かったねー」


 ソファーでだらけながらおやつを食べている凪が出迎えて……いや、これ出迎えてないな。


「まぁな。つってもまだ明るいだろ」

「そりゃほぼ夏だからですよ。冬ならもうとっくに真っ暗だよ」

「確かにこの時間ならそうだな。でも、今までこんな時間に帰ってくるの何回もあったよな」

「んー、あったけどさー、最近多くない? 昔はこんな多くなかったよ」

「そう?」

「うん」


 あまり覚えていないな。確かにちょこちょこ学校帰りに図書館やら本屋に寄ってはいたけど、凪の言う通りそんなに時間はかけなかった気がする。途中どこかカフェみたいなとこに寄るというのもしなかったし。だから、凪の言うことは正しい……のかなぁ。


「奏さんは?」

「お母さんももう少ししたら帰ってくるんじゃない? 今日買い物行ってるだけだし。どしたの、何か用でもあるの?」

「あー、明日な」

「うんうん」

「友だちの家に泊まることになった。というのを報告しようとして」

「――――」


 何気なしに言った言葉に対して、凪はしばらく固まった反応を見せる。目が丸い。信じられない、そんなことを考えているのが見てとれる。君、失礼だな。お兄ちゃんだって外泊……全然したことねぇな。

 しばらくしてから、意識が戻ったのか凪が再起動する。


「お、お、お……お兄ちゃんが!?」

「声大きいって」

「いやいやいやいや! あのお兄ちゃんが!? ちなみに、友だちって誰?」

「お前知らないぞ。学外で知り合った奴だし」


 こいうときは完全な嘘は言わない方がいいと、どこか本とかで知った覚えがある。1つは本当のことを交ぜるみたいな?


「男? 女?」

「男だってば。1つ年下の。ていうか、女だったら色々とヤバいでしょうが」

「うん、ヤバい。めっちゃヤバい」

「だろ?」

「それもうエロいことするしかないじゃん」

「エっ……いやいや、お前何言ってんの」


 唐突に差し込まれる言葉に驚く。ごめん、聞き間違いじゃないよね?


 しかし、凪は『何をそんな驚いているの?』と言いたげの表情だ。何だコイツ……。


「え……? だって男と女が泊まるって、つまりはヤることヤるってことだよね?」

「なにいきなり下ネタ言ってんの、お前は……」

「やーね。二次元に触れているとそういう知識ばっかり増えるもんだから」

「極論すぎないか?」

「でも、お泊まりだよ? 男女2人だよ? エロいことめちゃくちゃするでしょ。そういう漫画やら小説やらね、ネットにゴロゴロ転がっているんですよ」

「だとしても自重しろ」

「はーい」


 ああもう、なんかびっくりしたわ……。


「ていうか、お兄ちゃん。この前会った……えーっと、九条さんと村上さんの他に女の子の友だちいるの?」


 九条さんたちを友だち判定していいのか、ろくに友だちがいない俺には分からないが……。友だち……友だちかぁ。単純に知り合いでいいなら、えーっと、斉藤に遥に……。


「いるにはいるかな」

「えっ、うっそ! マジで!?」


 なんかさっきよりも驚いた反応見せてくるな。目を丸くして、表情がオーバーというか。


「正確に言うと、友だちかどうかはさて置き、知り合いって意味合いならいるにはいるって感じかな」

「あー……うん。うん、そだね。お兄ちゃんに女の子の友だちいることに驚いたけど、断言しない辺りお兄ちゃんだなって思うよ。やっぱりお兄ちゃんはお兄ちゃんだよ」

「やかましい。凪だって全然友だちいないくせに」

「友だちは量より質だってこの前お兄ちゃん言ってたじゃん」

「言った。言ったな。ならさ、凪も変にツッコミするなよ」

「でも、気になるんだよー」


 兄妹のじゃれあいは続く。


「そこはいいとして、お兄ちゃんがお泊まりとか、きっとお母さんも驚くよ!」

「だろうな。今まで学校の行事除けば外泊したことなかったし」

「そうそう! お兄ちゃんろくに友だちいなかったもんね! そんなお兄ちゃんがまさかお泊まりとはー。私嬉しいよ~。友だち、大事にしなよ?」

「…………」


 俺、少しの沈黙。それに対して何か察したっぼい凪は慌てた様子でさっきの言葉を訂正する。


「あ、なんかゴメンね? お兄ちゃんあの頃ホント大変だったもんね。なかなかに無神経でした」

「あぁいや、そういうことじゃなくて……反応がなんかまるで鬱陶しい親戚みたいだなって」


 凪は俺が過去に受けたイジメを危惧していた様子だったが、俺は全く違うことを考えていた。たまーに本とかで読む面倒な親戚なんだよなぁ、今の反応。恋愛系の小説にあるという主観。


「おい、せっかく人が心配したのにその言い草はひどくないか」

「だから悪かったって」

「心配したのに損したよ」

「まぁ、あんなのもう過去のことだし、今さらだよ」

「でもお兄ちゃん、あれのせいで人間不信になったじゃん」

「そうだけどな。ただ、なんつーか、あの出来事がなくてもけっきょくは人見知りになってた気がする……」

「……うん、そだね。似た者兄妹なんだもんね。多分そうだったよ」


 自分で言ってて悲しくなるな。あのときは理想と現実の折り合いがつかなくてポッキリ折れちゃったけど、やっぱりどこかで人見知りが露呈していたと思うな。こういうのは性格だし。


「ま、一旦シャワー浴びてくるよ」

「ほーい」



 奏さんが帰宅し、俺が明日外泊すると伝えたら案の定驚かれた。というより、微妙に泣かれた。俺、そんなに交友関係で心配されていたのか……。凪も若干引いていたし、ちょっと反応が過剰ではないかと思うんだが……まぁ、奏さんがいいならいいか。変に心配はかけたくないし、これからは交友関係広げていこうかな。


 そして、翌日。ぶっちゃけ今日は学校を休みたかったが、学校から家に連絡がいってしまったら誤魔化しが効かないのでちゃんと行くことに。簡単に着替えを持って登校。


 始業10前に教室に着く。まだ全員は集まっていないが、それでも充分騒がしい。もちろん、めちゃくちゃってわけではないが。みんな朝なのに元気だねぇ。まぁいいか。

 始まるまでちょっと寝るかな、と思いつつ席に座る。鬼塚は……どうやらまだ来てないか。朝練終わってないのかな。さて、寝るか…………。


 ……。

 …………。

 ………………。


 あぁダメだ、これ全然寝れないぞ。どうしてかって、理由は分かりきっているけども。今日本番だからな。自覚ないけど、やっぱりどこか緊張しているんだろうな。特に眠くないってのもあるだろうけど、それでも今日のことを意識しているのは間違いない。上手くできるだろうか、失敗しないだろうか、何か見落としはないだろうか、そんな余計なことを考えて思考がグルグル回る。目を閉じると、そんなことをずっと考えてしまう。

 昨日は遥にボコボコにされた疲れが寝る直前に出てきたのか、思いの外体のダメージが大きかったのかぐっすり寝れた。ただ、こうなると、俺は寝れないなぁ。


 あー、もう無理だ。少しは眠かったのに余計に目が冴えてくる。英単語帳でも読んでおくか。


「あ、あの……」


 って、今日は特に英単語のテストなかったな。


「あのー……」


 どちらかと言えば、今日は単語じゃなくて文章系が多かったはずだ。


「く、黒江君……!」


 教科書でも……ん? 誰か呼んだ?


「九条さん、おはようございます」

「あ、おはようございます」


 俺の隣に九条さんが立っていた。


「どうかした……って、俺今日、日直じゃないよな」

「ち、違います」

「あぁ、良かった。焦ったわ……。それで、どうしたの?」


 またやらかしたかと思った。ビックリしたー……。こういうの心臓に悪いよね、ホント。


「その、ですね。……今度の休日空いていますか?」

「えーっと、多分どっちでも大丈夫だけど、何か用事かな?」

「じ、実は、あのときのお礼をちゃんとしたいなと思いまして」


 意を決した表情になる九条さんに対して、俺は少しバツが悪そうに顔を逸らす。


「……お礼なら、もう受け取ったよ」


 ちゃんと言葉として九条さんから『ありがとう』を受け取った。俺にはそれで充分だ。これ以上は望まない。

 公園でも言ったけど、あのロードとの戦いはあくまであれは俺のためにしたことであって、結果として九条さんを助けることができたわけだ。全部、自分のためなんだ。だから、九条さんから形ある例を受け取るのは何か違うような気がするな。


「も、もちろん、黒江君の言っていることは理解しているつもりです。……でも、それでも、やっぱり恩人にはちゃんと感謝をしたいんです」

「――――」


 そうはっきりと告げられては、断るのは申し訳ない。


「じゃあ、その、よろしく。休日って言っても土曜日にする? 日曜日?」

「あ、できれば日曜日でお願いします。また連絡しますね?」

「……うん」


 気恥ずかしそうに笑う九条さんを見て、俺もどこか照れ臭くなって思わず笑ってしまう。……やっぱり、あのとき助けることができて、ホントに良かったと心から思う。




 ――――放課後。


 何事もなく授業が終わり、鬼塚とも。


「部活がんばれー。またなー」

「おーう。また明日ー」


 なんていつも通りの会話をしてから別れた。九条さんとも軽く会釈を交わす。


「あっつ……」


 日付が変わるまであとだいたい8時間。天気は良好。雲も少なく、夕方なのにカラッと気持ち良く晴れている。まだ夏に近いのですぐには日が沈まないからか、校舎から外に出るとやたら気温が高い。学校は冷房が効いていたから温度差がスゴい。

 これなら、戦うとき天気に悩まされることはないだろう。まぁ、そんな状況は稀有だと思うけども。あるとすれば、雨が酷いとなると、多少なりと大変になるくらいかな。


 まずは、後藤さんたちのいるビルに移動しよう。最終の打ち合わせとかあるはずだしな。そもそもあそこに行かないと何も始まらないし――――って、あれ?


「バイク……」


 少し校門から離れたところに見覚えのある大型バイクが鎮座していた。その隣にはヘルメットをしていて顔は確認できないが、それでも凛とした立ち姿に覚がある知り合いがいる。


「葵さん、待ってました」


 遥だった。どうしてここに……って迎えにか。前回の反省を踏まえてか学校からはちょっと離れているのであのときほどの騒ぎにはなっていない。

 目立ってないのはいいけど、遥が運転するバイクには乗りたくない。あんな暴走族なんて生ぬるいくらい荒っぽい運転をするバイクにはホント乗りたくない……! いや、暴走族の運転とか知らないけど!


「いや、歩くんで大丈夫ですよ」

「それでは非効率です」


 やんわりと断ろうとしたが、即座に否定される。そっか、こっちの感情読み取ろうなんて今の遥には難しいんだよなぁ。


「いやマジでホント、歩いていくので」

「ここから歩きだと早くて20分ほどはかかります。私のVTRの方が早いです」

「そりゃそうだろうけど」

「では乗ってください」

「歩きたい気分なので」

「大丈夫です、乗ってください」


 あー、断れそうになーい。え、これもういっそのこと正直に言って断る?


「……えっとだな、遥の運転するバイクは怖いから乗りたくない」

「では安全運転を心がけます。事故に遭ってしまっては元も子もないので」

「……ホントだな? ホントに、安全運転にしてくれるんだよな?」

「はい」


 嫌な予感しかしないんだけど。


「じゃあ……えー、あー……よ、よろしく」


 恐る恐るヘルメットを受け取る。こうやって被るのは3回目だったっけ? まぁ、そのくらい経ってるし、ちゃんとベルトを締めれるようになってきた。ただ少しは手こずる。なんかカチッとはめるタイプじゃなくて、普通にベルト形式だからやけに難しい。


 ……現実逃避している場合じゃない。そろそろ向き合わないと。大丈夫だよね? 安全運転って言ってくれてるし、大丈夫だよね? ね?

 戦々恐々しながら遥の後ろに乗る。


「では、行きます」


 さあ来い、どんな暴走運転でもどんと来いだ。覚悟はできて……る……。


「あ、うん……あれ、ゆっくりだ」


 法廷速度をちゃんと遵守している走り方だ。速すぎず、遅すぎず。


「さすがに自重はしますので。後藤さんからも厳しく言われていますので」


 安全運転だからか遥の声もちゃんと聞こえる。前回や前々回はバイクの走行音がうるさすぎて周りの音なんて聞こえようがなかったからなぁ。あれはホント勘弁してほしい。、


「今日は……いえ、明日ですか。よろしくお願いしますね」

「……おう」






だいぶ間が空いてしまいました……


この間に私は人生で初めてエロゲを買ってプレイしてました。千恋*万花や9-nine-シリーズをプレイし終えて、今はリドル・ジョーカーをプレイしています

いやもうホント、ゆずソフトはいいですねぇ。みんな可愛いです。そして、9-nine-は思いの外シナリオが鬱シナリオでなかなかキツかったです……w


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ