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無色透明のトロイメライ  作者: 皐月凉
2章 力の責任
42/62

41話 Los‼

 皆様ここまで読んでくれたありがとうございます。嬉しいかぎりです。



「あれ、先輩?」

「? ……あ、斉藤か」

「やっぱり先輩だ。おはよーございまーす」

「おはよう」


 穏やかな朝。うっすら聞こえる鳥のさえずり。多くの生徒の賑わう声。いつも通りの登校。変わらなない風景。昨日、1週間前、1ヶ月前……それらと同じような時間を過ごすだけの毎日。

 ――かと思いきや、新しい日常がそこにはあった。鬼塚、九条さん……それから、レーヴェ。少しずつだけど変わってきている。そして、昨日図書室で知り合った後輩――――斉藤凛が学校の玄関にいた。制服姿で壁によりかかり誰かを待っているみたいだが。


「朝練、あるんじゃなかったか?」

「あるって言いましたけど、朝練に関しては1日おきなんですよ」

「そうなのか」

「はい。朝練はバスケ部とバレー部で体育館を交互に使っているっていう感じですね」

「へー。それ、夕方の練習だとどうなるんだ?」

「そっちも基本的には1日おきの交互ですよ。体育館使えないときは外で走ったり、使える日は体育館で練習したりと。うち男女共バスケ部もバレー部もありますからね。人数もそれなりにいますし、譲り合わないとダメなんです」

「それは……大変そうだな。というより、どちらかというと面倒そうだな。日によっていちいち違うとか」

「んー、ぶっちゃけそうっちゃそうですね。休日だったら午前午後で分かれるんだけどなぁ。でもまあ、もう慣れましたし」


 呆気なくそう言いのける斉藤だが、実際はそういうものなのだろうか。部活はやったことないから、その辺りは俺だと到底理解できない領域だ。


「ところで、こんなとこでジッとしてるけど、誰か待ってるのか?」

「え? ……ああ、はい。友だち待ってるんです」

「……教室で待てば? わざわざこんな人多いとこで待たなくても」


 軽く自分の意見を言ってから少し見渡して玄関を眺める。

 今は始業15分前。この時間になるとけっこうな数の生徒が集まってくる。それも学年問わず。1年と2年なら朝練ある部活も多少あるが、それでも数を比べたら朝練ない人の方が多いだろう。

 いくら靴を履き替えたら教室に流れるとは言え、待ち合わせには向いてなさそうな場所だ。


「待つと言っても、その友だちすぐそこにいるんですよ。ちょっとお花を摘みに……」

「なるほどね。……てか、そんな表現今どきなかなか訊かねぇな」

「先輩に面と向かって、そういうこと言うのちょっと恥ずかしいんですぅー。察してください」


 顔を若干赤らめ口を尖らせあざとく文句を言ってくる斉藤。

 女子ってそういう感じか。それは斉藤の性格なのかな。まあ、これ以上突っ込むべきじゃないな。


「そうかい。……じゃ、俺はこれで」

「はーい。あ、私の図書当番毎週水曜日なんで来てくださいねー」

「気が向けば」

「必ずですよ!」


 斉藤と話し終え俺も他の生徒に倣い教室へ足を運ぶ。


 しかしまあ、なぜこうも斉藤から気に入られているのか……甚だ疑問だ。いや、これは気に入られているのか? とはいえ、昨日話した程度の仲なんだがな。

 俺はあまり斉藤のことを知らないし、それは斉藤も同じだろう。今まで何か俺たちの間に積み重ねがあったわけではない。せいぜい図書室で少し話したくらい。それも事務的会話だ。……マジで分からんな。


「――――まあ」


 誰にも聞こえない小声で呟く。

 だからといって、悪い気はしないか。俺は昔からゴチャゴチャと考えすぎなんだ。悪い癖だ。一時期人間不信に陥ってたし、正直その思考は俺のかなり深くの部分に根付いてる。……ダメだ、これは未だに治りそうもないな。ちょっとずつ良くはなっていると思うんだけど。先は長いか。


「お、黒江」

「鬼塚」


 廊下をゆっくり歩きつつそんなことに頭を悩ませていたら、後ろから鬼塚に肩を叩かれた。


「おはよう」

「おはようさん」

「朝練お疲れ」

「おう、ありがとよ」

「ところでよ、黒江君。さっきお前女子と話してなかったか? あのお前が」


 ……どうやら鬼塚に見られていたのか。何だろう、悪いことなんてないのに、無性に恥ずかしいこの気持ちは。


「…………気のせいじゃないか?」

「おい、何だその間は。見てたの遠くからで薄っすらだったけど、あれ間違いなく黒江だろ? 全く釣れないなー。何だよー、教えろよー」

「ええい! 肩を揺らすな!」


 めっちゃグワングワンする。止めろ鬼塚、お前勢いが強い……! 加減して!


「何だよその口調。まあいいや。で? あの子誰?」

「教えない」

「おーい、別にいいじゃねぇかよ」

「何だか恥ずかしい」

「いやいや、コミュ力低いあの黒江がこうやって女の子友だちできたことを素直に喜んでるんだぜ? 恥ずかしがることなんてないぞ」

「ところで鬼塚。お前午後の英語の授業、課題出てただろ。終わってるのか?」

「うっ……」


 露骨な話題のすり替え。普通に下手な転回の仕方。しかし、鬼塚にはクリーンヒット。効果覿面ってやつ。見事にさっきまで喧しかった動きがピタリと止まる。


「やってないんだな」

「……いやさー、やる気はあるんだけど、家に帰ったら疲労ですぐに寝ちゃうんだよ。昨日なんて10時に寝てしまったんだよなぁ。起きたら7時。やる時間なんてとても……。夏木先生、課題に関しては厳しい人だからな」

「そりゃお疲れ」

「……あのー、それでー、黒江」

「昼休み、課題見てやるぞ。だから、この話題は打ち切りで」

「アザます! って、前みたいに見せてくれるんじゃないのか」

「それだと、鬼塚の血肉にはならないだろ。あのときも見せるべきじゃなくて教えるべきだったな。時間全然なかったけど」

「黒江は厳しいことで」

「まあ、ぶっちゃけると俺もそこまでの自信がないだけだ。古文ならともかくとして、今日の課題は英語。成績近い奴に教えれるほどできてるわけじゃない」

「俺ら成績どっこいどっこいだもんな。でも、マジ助かる! 実は半分ほどはやったから、残りそこまで多くないんだ」

「何だ、意外にやってるじゃん。てっきり手付かずの状態かと思ったのに。途中で寝落ちしたってところ? 確かに後半難しかったな」

「そうそう……。あの文章題、なかなか難しいぞ。何せ、まだ習ってない熟語が多すぎて……。俺の疲労が溜まりまくっている体では到底解ききれなかったぜ」

「ぜ、じゃないだろうが。別にあの熟語の数々は授業の予習になるんだから」


 水泳はただ走るだけではない疲労感が溜まると鬼塚も言っていたことがある。普段使わないような筋肉も使うと聞いたこともあるし、実際大変なんだろうな。

 でも、だからといって課題をサボる理由にはならないと思うけどね。部活と勉強を両立できる人なんて大勢いるだろう。……それを言ったら、部活もやってない俺が成績低いのどうかと思うな……。俺は偉そうに言える立場ではないな。うん。


 ――――などと互いに軽口を叩きながら午前の授業を受けて、早速昼休みがやって来た。


 昼飯を食べつつ俺は鬼塚の課題を見てる。


「このlook upって見るって意味だっけ?」

「調べる、だな。見るはlook at。つっても、lookは熟語多くていちいち覚えるの大変だよな他にもlook forとか色々」

「……だな。イディオムとか似たようなやつめちゃくちゃあるし。ああもう、ムズいな。黒江はどう覚えてる?」

「俺は前置詞で何となくのイメージ付けてからだな」

「前置詞?」

「熟語って大概前置詞あるだろ。例えばたけど、inって意味からして広いイメージあるじゃん。時間や場所とかinつけるパターン多いし」

「……なるほど。確かにそうだよな。中学でも先生が似たようなこと言ってたな。underは下って意味だし」

「前置詞の意味のイメージ掴んでから、こう、何て言うの? 熟語の何となくの意味を覚える……みたいな感じで。俺はそうしてるな。根性論じゃ正直キツいし。まあ、まだまだ覚えれてないけど」


 それでも英単語となると根性論で覚えるしか方法はなさそうだ。


「前置詞ね。コツさえ掴めば確かに一気に覚えれそうだ」

「一旦それは置いといて、次」

「おう」


 昼飯も食べ終わり、鬼塚の課題は順調に進んでいる。このままいけばもうすぐ終わるかもしれない。充分授業に間に合うな。朝の話も誤魔化せたわけだし。羞恥心なんてなかったらそんなの関係なかったと思うが、俺はただの小心者だ。正直キツい。


 何にせよ、鬼塚の課題もそろそろ終わる。一息つくために喉を潤していると――――


「あ、先輩! いたいた!」


 …………聞き覚えのある声が10人ちょっとしかいない教室に響き渡った。

 聞き覚えがあるも何も朝に間近で聞いた声だ。


「――――」


 まるで整備されてない錆びたロボットが首を動かすようにぎこちなく廊下の方に目を向ける。

 そこにはきちんと手入れされているであろうボブカットを揺らしながら、ご機嫌そうにこちらに手を振る斉藤が……間違いなくそこにいる。


 ちょっと待て……。お前図書室で会おうとか言ったよな? 教室まで来たら鬼塚に絶対問い詰められるじゃん。俺は何のために誤魔化して鬼塚の課題を手伝ったと思ってる……! いやまあ、別に頼まれたら断るつもりなんてなかったけど! それに斉藤も悪くないけど! それでも!


「おーい、せんぱーい!」

「どうして来た……」


ベタベタな展開大好き侍です

会話が続くと、どこかのタイミングで地の文入れた方がいいのか迷うけど、やっぱりそのままの方がいいのかなって思ったり……難しい

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