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83話 リュウさんの得意なこと

この目立つタワマンは、当然村人全ての目に留まったわけで。

 今、大変な騒ぎになっていた。

 それにしてもまさか、リュウさんがタワマンを生やすことができるとはビックリだ。

 そう思っていた僕の脳裏に、ふとリュウさんのステータスのことが浮かんだ。

 そういえばリュウさん、「地神」っていうスキルだったな。

 あれって、レイの「鬼神」の地属性版だとしか考えていなかったんだけど。

 ひょっとして攻撃系じゃなくって、生産系のスキルだったりするのか!?

 けどこれは完全にリュウさんの好意でやったことだし、建てちゃった(生やしちゃった?)ものは仕方ないとして。

 問題は、タワマンが生えた原因をどう誤魔化すか、ってことだよな?

 素直に「リュウさんが生やした」じゃあダメなのはわかっている。

 まだスキルについて詳しく認知されていないこの世界で、スキルの中でもぶっ飛んでいる部類に入るこのタワマン生やしを、世間は果たしてどう思うのか?

 いいイメージが思い浮かばないなぁ……。

 ブリュネさんが知ったら、頭痛どころじゃないよな……。

 僕がそんな風にグルグルと考えていると。


「山神様の奇跡じゃあ!」


タワマンを囲んでいた村人たちの中の、とある老人がそう叫んだ。

 え、なんで? って僕あたりは思ったんだけど。


「そうか、山神様が……」


「山神さまぁ~!」


何故か村人たちには、山神様パワー説が伝染するように広まっていく。

 神様どころか、生体兵器が建てたんですけど?

 責任を押し付けられて、神様は怒らないか?

 けど、この流れはありがたい。

 幸いなことに、誰もリュウさんがこのタワマンを生やしたなんて考えておらず、リュウさん自身も「これは自分が建てた」なんて主張も僕以外にしていないので。

 このまま「山神様のお恵み」ということにしておいても、問題は発生しないだろう。

 リュウさんも別に村人に感謝してほしいということではなくて、純粋に憐れんだだけみたいだし。

 なんか、リュウさんにとっての人間って、僕にとってのシロみたいというか、小動物系ペット的立ち位置なのかも。

 観察していると謎で面白くて、攻撃されてもくすぐったい程度。

 どちらかというと、保護するべき存在っていうね。

 このタワマンも、リュウさん的には「ペットにちょっといい家を用意した」くらいの認識なのかも。

 リュウさんの性格が比較的穏やかっぽい、ということもあるんだろうけど。

 そう言えばレイ相手にも、態度は怒っているっぽかったけど、やり返すとかの乱暴な真似はしなかったしな。

 僕へのシッポアタックは、うっかりヒット的要素が強かったし。

 圧倒的力の差があるから、人間なんて対等になり得ないってことなんだろう。

 これが性格が悪いというか、攻撃的だと、人間が害虫認定になるのかも……。

 例えば、ヤンチャでヒャッハーしていた時代のレイとか。

 どんだけやらかしたら初期化されるんだろうか?

 パソコンとかでも、初期化って最後の手段だぞ?

 そのレイはというと、お目付け役として役目を全うしたご褒美のおやつタイムで、タワマンを見上げながらシロと野菜クッキーを食べている。

 一方で、リュウさんは生やしたタワマンのことはもう忘れて、井戸を見て「なんと原始的な」と感心していた。

 どうやら井戸を使っているのが珍しいらしい。


「うん? ってことはこのタワマンの水回りとか、どうなっているんだ?」


そうだよ、井戸水を汲んでタワマンの上層階に持っていくなんて、とんだ苦行だぞ?

 この僕の疑問に、リュウさんがこともなげに答えたところによると、なんと水道設備が完備だそうだ。

 え、マジで?

 この世界的に、オーバーテクノロジーじゃないのそれ?

 なんでリュウさんはそんなもんを造れるの?


「リュウさんってもしかして、すごくインテリ系生体兵器だったりするのか?」


僕が漏らした台詞に、リュウさんはこともなげに言う。


「この程度でなにを言うか。

 かつてマスターが構築した都市機能を維持していたのは、我であるぞ」


そうなの!?

 そんな生産系な生体兵器なのに、だったらどうしてドラゴン型なんていう超攻撃型にしちゃったのさ!?

 生体兵器のマスターって、謎だな……。

 僕が生体兵器について新たな発見をしたのは置いておいて。

 タワマンなんて見たことのないアイカ村の人たちは、当然ながら興味津々で「上ってみよう」ということになり。

 数人が現在チャレンジ中だ。

 このタワマンは十五階建てだけど、エレベーター的なものはなく、移動は階段だ。

 この世界の高い建物というと、塔みたいなものはある。

 ニケロの街にも見張り台として建っているけど、それだって高くてもせいぜい四階建て程度。

 どうやらそれ以上高く建てる技術がないようだ。

 日本だともっと高い建築物があったものの、それだってエレベーターがなかったら使いにくいものだ。

 このタワマンも本来ならば、エレベーターの代わりに『転移陣』なるものがあって、それで各階へと移動するシステムらしい。

 けれど現在はマスターシステムがダウン中で、転移陣を発動するためのエネルギーが使えないとのこと。

 まあ、この世界の人たちは、比較的足腰が強いし。

 上層階には若い人をあてがえば、いけなくはないかとは思うけど。

 今タワマン上りをしている人たちは、調子に乗って上がっていると、下りるのが辛いよ?

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― 新着の感想 ―
[一言] ……実は降る時、楽に下れると思われがちだけど、体力的には下りの方がしんどいという事実が……www 体重を受け止めなければいけないので、素早く降りればするけど体力や肉体への負担は登り以上で、…
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