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81話 再びの祭り

ゴルドー山の問題が本当に解決しているかどうかは、冒険者ギルドが正式な調査をして安全宣言をだしてもらう必要があって、それから封鎖が解けるという話だけど。

 モーリスさんとしては、安心材料ができただけでも目出度いということで。

 アイカ村では再びの祭りとなった。

 ちょうど麦ご飯を炊いていたので、麦ご飯祭りである。

 広場では、複数の大鍋で大量に炊かれている麦ご飯のいい匂いがする。

 僕もせっかくなので麦ご飯祭りに協力したい。

 前にモーリスさんに丼ものを食べてもらったけど、ご飯って言ったらふりかけだよね。

 あと佃煮も王道だろう。

 思い付いたら食べたくなってきたな。

 でもふりかけはともかくとして、佃煮はプロの料理人の意見が欲しいところだ。

 だからこっちは「とまり木亭」で相談することにして、ここで作るのはふりかけにしよう。

 そしてふりかけの材料として、僕が運んできた補給物資の中にアテがあった。

 実は物資にはけっこうな量の野菜のカブが入っていて。

 そのカブの白い部分は、スープにおかずにと活躍しているんだけど。

 葉っぱ部分がね、あんまり人気がないらしいんだよ。

 これはアイカ村独自の傾向じゃなくて、ニケロの街でもそうだった。

 特に子どもにとっては、カブの葉の青臭さが気になるみたいだ。

 大人になったらアレが美味しく感じるようになるんだけど。

 それで結果としてカブの葉だけが余ってしまって、腐って捨ててしまう羽目になると言う悪循環に陥るのが、カブの運命なのだそうだ。

 ちなみにこの現象は、大根でも起きがちのようである。

 だったらそんな可哀想なカブの葉を、ふりかけに変身させてやろうじゃないか!

 というわけで、僕は広場の片隅での作業となった。

 まず大量のカブの葉を貰ってきて、それを大鍋で湯通しすると、湯から上げた葉を絞ったらみじん切りにした。

 みじん切りはね、最初は自分でナイフで切っていたんだけど。

 途中でふと「『粉砕』スキルでいけるかな?」って思ってコッソリと試してみると、なんとできてしまった。

 みじん切りのイメージで『粉砕』をすると、ちゃんとみじん切りになるとか、便利なスキルだなぁ。

 おかげで作業の時短になって万々歳だ。

 みじん切りの葉に少々の塩をふって、馴染ませたら出てくる水気をもう一度絞る。

 こうすると、青臭さがずいぶん抜けるんだよね。

 この状態でもご飯に混ぜたら十分美味しいんだけど。

 保存の事を考えて、もっとカラカラにするべく鍋で炒っていく。

 夏だったらその都度作った方がいいだろうけど、涼しい時期だとこうすることで作り置きができる。

 炒ったことであんなに大量にあったカブの葉は、嵩が激減している。

 なので、嵩張るカブの葉の置き場所問題の解決にもなるはずだ。

 僕は早速味見をしようと、手持ちの麦ご飯にこのカブの葉ふりかけを混ぜて、小さいサイズのおにぎりにする。


「うん、美味しい!」


味はバッチリだが、果たして子どもの口に合うものか。

 それを試すため、レイを探しに行こうと思っていると。


「トツギさんそれはなんですか?」


遠目に僕の作業を伺っていたモーリスさんが近付いてきて、木の器にこんもりと盛られているふりかけを覗き込んでいる。


「カブの葉が余っていると聞いて、ちょっと加工してみたんです……試食しますか?」


「いいんですかっ!?」


僕が最後に勧めると、前のめりに頷かれた。

 なのでレイに食べてもらおうと作っていた小さめのおにぎりを、一個モーリスさんに渡す。


「その小さな緑色が、カブの葉をみじん切りにしてからカラカラに炒ったものです」


「うん!? 美味しいし、不思議な口触りですな!

 それに独特の青味もあまり感じない!」


僕の説明を聞きながらおにぎりを一口で頬張ったモーリスさんが、ふりかけの食感と香りに驚く。


「もちろん、カブの葉の栄養もとれますよ」


「ふおぉ!? これは子どもたちでも食べるのではないですかな!?

 なにしろウチも子どもの好き嫌いには苦労しましたし、どの家庭でも同じですよ。

 それが、こりゃあまさに救世主だ!」


「そうですね、僕も子どもたちの口に合うかと思って、作ってみました」


僕はモーリスさんの興奮ぶりに苦笑する。

 でも、この反応も無理はない。もしこれが現代日本だったら、多少の好き嫌いをしたところで、他の食物で栄養を補える。

 けれどリンク村のように、手に入る食べ物が限られる状況だと、好き嫌いは下手をすると命に係わる。

 ふりかけが受け入れられそうで、ホッとしていると。


 ワアッ……!


 村の離れの方から声がした。

 ……なんかあったのか?

 そういえば、リュウさんとレイはどこまで行ったんだ?

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