80話 用意した結論は
そんな麦ご飯はともかくとして、まずは話し合いだ。
二人で広場が見えるベンチに座って、モーリスさんに告げる。
「実はですね、ゴルドー山の山頂にドラゴンがいたんですが……」
「なんですとっ!?」
僕がサクッと言った結論の途中で、モーリスさんが顔色を変えて立ち上がる。
「なんという、なんということだ!?
ああ、では国に連絡して討伐隊を派遣してもらう必要がある。
しかし、きっとすぐには来ないだろうし、そうなると冒険者ギルドに……」
アワアワとその場をグルグルと回り出すモーリスさん。
うーん、話の出だしを間違えたかな?
「モーリスさんモーリスさん、落ち着いて最後まで話を聞きましょう。
ドラゴンはいました、けれど過去形です。
つまり、飛んでどこかに去ってしまって、もういません」
僕はモーリスさんを落ち着かせるように肩を叩き、そう説明する。
今回の事を馬鹿正直に「ドラゴン型生体兵器が水浴びをしていました」と説明できるわけがない。
そんなことを話せば、「生体兵器」という物騒な単語に過剰反応して、パニックを起こすだけだろう。
僕もうっすら思っていたんだけど、生体兵器の存在は、今この世界の人たちに知られていないんだってさ。
けど、生体兵器たちはそんな世界に紛れて暮らしているようで。
『ワシも、どいつがどこにおるのやら、知らぬわ』
とのリュウさんの言葉であった。
なので今回のゴルドー山の騒動のことをどう説明するかと考えたのが、この「ドラゴンがいましたが、飛んで行ってもういません」という言い訳だ。
なにせ真実から「生体兵器」の部分を抜いただけなので、まるっきりの嘘ではない。
さらに、ドラゴンがどこかに行ったという証明のために、わざわざリュウさんに飛んでもらったもんな。
ドラゴン姿で飛んで行ってもらって、人の姿で戻ってきてここにいるわけだ。
僕らとしてはそのまま移動してもらって構わなかったんだけど、リュウさんってば何故か戻ってきちゃったんだよ。
でもモーリスさんやトムくんの様子だと、飛んだのがニケロの街方面だったから、アイカ村からだとドラゴンが見えにくかったのかな?
「そもそも、ドラゴンというのは知能が高く、無益なことはしない生き物らしいです。
だからたまたまゴルドー山に遊びに来ただけかと思います」
僕はリュウさんから聞いたドラゴン事情を挟みつつ、そう話す。
僕的には、ドラゴンっていうと凶悪なラスボスで、財宝の番人(いや、番竜か?)っていうイメージだ。
それに冒険者ギルドでも、ドラゴンは災厄の生き物だと教えられたし。
でもリュウさん曰く、ドラゴンは賢くて穏やかな性格の平和主義者なんだとか。
けど一方で光りモノが大好きで、自分の巣に集めて、大事に仕舞っている。
そのコレクションにちょっかいを出されると、一転して狂暴になるんだそうな。
『人間どもが見るドラゴンとは、自分らがコレクションに手を出した際の姿であるのがほとんどであろう?
だからドラゴンは狂暴だ、などという説がまかり通るのだ』
とのリュウさんの意見だった。なるほど、そうかも。
「そうですか、ドラゴンのせいでしたか」
モーリスさんは「全部ドラゴンが原因」という説明に納得してくれたようだ。
むしろドラゴンが出たのに、村に直接の被害が出なくてよかったと、ホッとしている。
う~ん、こうしてドラゴンのデマ被害が拡大するんだろうなぁ。
なんか、ドラゴンに謝りたくなってきた。
しかしそれは心の中でやることにして、今は話を進める。
「ドラゴンがいなくなれば、魔物もゴルドー山に帰るでしょうね。
しばらく待てば、以前の状態に戻るんじゃないですか?」
今はむしろリュウさんがここにいるから、魔物も獣も慌ててゴルドー山に逃げていることだろう。
彼らもリュウさんに振り回されただけという、全方面で残念な事情だ。
「そうですかっ!」
モーリスさんは喜色満面といった様子だ。
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