表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/84

7話 鬼神スキル

うわ、どうしよう!

 まださっきの魔術のなにがわるかったのか、わかっていないのに。

 再びカマイタチで森林破壊は止めておきたい。

 幸いあちらはなにかに夢中で、こちらの存在に気付いていないようだし。

 ここはそっとこの場を離れて迂回するか。僕がそんな風に考えていると。


「……!」


突然レイが僕の隣から弾丸のように飛び出した!

 ちょっとレイ、どうしたの!?

 危ないから戻っておいで!?

 まさかレイが自ら危険に飛び込む真似をするなんて思っていなかったので、僕はただ固まっているしかできない。

 そしてすぐにレイの足音に犬たちが気付いた。

 っていうか、あの三歳児足早くない!?


「グァウ!」


リーダー格らしき犬が一吠えすると、他の犬たちもレイを威嚇して戦闘要体勢に入る。

 これはマズい、カマイタチをやっちゃうか?

 でもここからだとレイに当たる!

 ええぃ、僕は格闘なんてしたことないし、腰に下げてる短剣もこれから扱い方を覚えようとしていたところなんだからな⁉

 しかしレイを見捨てられるはずもない僕が、焦って駆け付けようとする前で、時すでに遅くして、一方的な惨劇が繰り広げられる。

 ……レイによって、犬たちが一方的にボコボコにされるというワンサイドゲームの様相で。


「は? ナニソレ?」


僕は途中で足を止め、思わず我が目を疑う。

 まずレイがダン! と可愛い足で大地を踏みしめると、まるで衝撃波をくらったかのように犬たちが吹き飛ぶ。

 そして手近な犬に素早く近寄り、拳を突き出すと「ドゴォッ!」と三歳児から発せられたと思えない衝撃音が響く。

 一匹を仕留めたらすぐ次にと、レイは飛び回るように犬へ襲い掛かる。

 ぱっと見軽い蹂躙だ。

 ちょっと、なんなのこの三歳児!

 あ、生体兵器か!?

 思い出せば、レイには「鬼神」というスキルがあったはず。

 字面的にも厳つそうなスキルだなとは思っていたが、もしやコレが鬼神スキルか!

 三歳児でコレって怖くない!?

 そりゃあヤンチャでヒャッハーしたくなるよね!?

 そして動かない犬たちが出来上がるまで、ものの数分もかかっていない。


「おーい、レイ。怪我とかしてないか?」


恐る恐る犬たちを避けつつ歩み寄ると、レイがまるで電池が切れたかのように動きを止め、じぃーっとこちらを見ていた。

 うーん、落差が激しい。

 スキルのせいかな?


「とりあえずぱっと見で怪我はないね。

 どこか違和感はない?

 殴り過ぎて手が痛かったりしないか?」


そう言いながらレイの身体をあちこち触ったりして調べると、特に痛がったりする様子はない。頑丈は三歳児だな。


「なんともないみたいだね。

 でもビックリするし危ないから、急に飛び出すのはやめような」


レイの頭を撫でながらそう言い聞かせるように話すと、レイは首を傾げていたものの、最後にはコックリと頷く。

 まあこれだけ強かったら、危ないっていう状況を想像できないかもしれないな。


「でも、おかげで助かったよ。ありがとうな」


レイが犬を蹴散らしたおかげで安全が確保できたのは本当なので、ちゃんと感謝の言葉も伝える。

 するとレイが無表情ながらもモジモジする。

 もしかして、照れているんだろうか?

 まあそれはともかく。

 戦闘が終わった僕らが直面している問題は、この仕留めた犬たちをどうするかだ。

 鑑定してみると「キラードッグ」という魔物だと出た。

 RPGのお約束としては、素材が売れたりするんだが。

 この毛皮なんてまさに売れそうだけど、毛皮の剥ぎ取りなんてできるはずもなく。


「面倒だし、放置していると腐って迷惑だろうし。

 このまま鞄に入らないかな?」


試してみると、なんと入ってしまった。

 どうやら生き物以外はなんでも入るみたいだ。

 なんとも便利な鞄である。

 にしても、このキラードッグたちはどうしてここに集っていたんだろうか。

 そんな疑問の答えはすぐに判明した。

 キラードッグたちが集っていたあたりに、角の生えたでっかいイノシシが倒れていたのだ。

 しかしその身体は半ばで真っ二つになっていて、あちらこちら齧られていて、もう既にほぼ骨の状態である。

 コレ、なかなか絵面がグロいな。


「明らかにカマイタチの被害に遭ったんだろうな……」


この角イノシシを鑑定してみると、こちらも魔物で「イビルボア」と出た。

 ちなみに高級食肉だそうだ。

 そりゃ集るわ。

 このイビルボアは、きっとわけのわからないうちに死んでしまったんだろうなぁ。


「すまなかったイビルボア。

 きちんと森の皆に最後まで美味しくいただいてもらうんだぞ?」


これ以上犠牲を出さないためにも、魔術は練習しなきゃだな。

 そしてレイの鬼神スキルって、どんなものなんだ?

 僕の疑問に、パネルが反応する。


鬼神スキル

その名の通り鬼神のごとく強い力を発揮するスキル。

 一度戦い始めたら止まらず、敵をせん滅するまで戦い続ける。


まんま狂戦士っぽいスキルだな。

 こんなもんを三歳児に持たせるなよ。

 あ、でも初期化されたのなら、その前はそこそこ大人だった可能性もあるか。

 しかしこれは、レイが再びヤンチャな性格に育たないようにするためにも、育児方針って大事だろう。

 でも僕は日本でも独身な社畜、育児なんて経験があるはずない。

 育児書、誰か僕に育児書をくれ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「百花宮のお掃除係~転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します」2巻がカドカワBOOKSより8月7日に発売されます!
ctpa4y0ullq3ilj3fcyvfxgsagbp_tu_is_rs_8s

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ