77話 美味しいことはいいことだ
うーん、レイは最初から大人しかったんだけど、初期化前のレイってどんな奴だったのか気になる。
もしかして、人格設定みたいなものが、前と今とじゃ真逆だとか?
例えば、ゲームなんかでキャラを作るとして。
僕がもしガチャで「鬼神」なんていう中二病的な能力を手に入れたキャラなら、鬼神っぽいヤンチャな性格設定にしちゃいそう。
青年ドラゴンが言うところの「マスター」とやらも、同じことをしちゃったんだけど、ヤンチャ設定と鬼神スキルが予想外に相乗効果を発揮したとか?
挙句手の付けられない暴れん坊になってしまって……なんかありそう。
その反省を生かして今度は無口キャラにして、今のレイがいると。
まあ、そのあたりの事情はどうでもいいけどね、今のレイが可愛いことに変わりないしな!
そんな前のレイについての考察はともかくとして。
いつの間にかレイが三色丼を完食しそうになっているし、僕も食べよう。
「うん、美味しい!」
スクランブルエッグが思ったよりもトロトロに出来てる。
なんだろう、前世でもそこそこ料理はしていたけれど、それほど腕が良かったわけではない。
なのに今の僕は料理の完成度が結構高めで、失敗をしない。
これも、料理スキルのおかげなのかな?
ありがとう、料理スキルよ!
「ふむ、これが人間の食事か」
僕たちが食べる様子を見て、青年ドラゴンが慣れない手つきでスプーンを握り、三色丼をすくって口に運ぶ。
そしてカッと目を見開いて、ゴクッと飲み込む。
「ほう、白い粒と黄色と茶色が絡み合って、次第に調和していく様は、まるで世界の体現である!
これはなんと奥深きことか……」
なんか、壮大な食レポをされた。どうやらキャベツの千切りは避けられたらしい。野菜も美味しいぞ?
貴重な宝物であるかのように三色丼を捧げ持つ青年ドラゴンを、僕の膝の上のレイがチラッと見ると。
「それ、おいしい」
そしてボソッと呟く。
「うん? なんじゃ?
なんぞ文句があるのか?」
レイが自分に向けてなにか言ったと察知した青年ドラゴンが、ギロッと睨む。
三歳児に喧嘩腰の青年は、傍から見て大人げない。
「そうだねレイ、
ドラゴンさんが言うみたいなのを、『美味しい』って言うんだよね」
「ん」
レイは、青年ドラゴンに「美味しい」を教えたかったようだ。
レイが誰かになにかを教えたがるなんて、成長を感じてジーンとしちゃうなぁ。
「ぐぬぅ、あの鬼神がワシに教えを授けようとは……」
一方の青年ドラゴンは、レイから教えられるという行為が気に食わなかったようだ。
なんだろう、生体兵器は確か欠番のNo.01を含めても十体しかいない中で、この青年ドラゴンは一番古いはずなんだけど。
なんか案外子供っぽいなぁ。
レイの方は、三色丼をを食べたら気持ちが落ち着いたのか、青年ドラゴンをスルーしてお代わりを所望してくる。うん、食欲旺盛なのは健康な証拠だね!
食事を食べ終えて、お腹いっぱいになったところで。
「で、お前たちは何用でここへ来たのだ?
水浴びか?
ここの湖は魔素が濃いゆえ、浸かると心地よいのだよ」
なんか青年ドラゴンが、温泉の湯治に来たおじいちゃんみたいなことを言った。
というか、青年ドラゴンの目的は湖での水浴びだったのか。
「実はですね……」
僕は周辺の魔物が青年ドラゴンを恐れて移動し、近くにある人間の集落が被害を被っていることを説明する。
「ふぬぅ、昔はこのあたりはなにもなかったのだが。
今では人間が住んでおるとは知らなんだ」
うっかりしていた、みたいな言い方だけど。
生体兵器の言う昔って、どのくらい前のことなんだろうか。
「それで、すっごい鳴き声っていうか、咆哮が聞こえたんで、
何事だろうってことで、こうして様子見にきたんです」
「咆哮とな
……いつのことじゃ? それは」
青年ドラゴンが首を傾げているけど、
え、アナタのものだったんじゃないのか?
「四日前の夜かな、すごくビリビリ響いてた」
もしこれで人違い……魔物違い、いや、生体兵器違い? だったとしたら、振り出しに戻るんだけど。
僕がドキドキしながら説明すると、「四日前?」と青年ドラゴンが呟くと。
「おお! 寝ぼけてうっかり岩盤を割って落ちたな。
その際に驚いて吠えたかもしれない」
思い出した! と言わんばかりの表情だけど。
寝ぼけてベッドから落ちたみたいなことか?
寝ぼけたスケールがデカすぎる。
まさかあの恐怖の声が寝ぼけ声だったとは、事実を知るとなんともマヌケである。





