74話 説明します
レイがドラゴンに謝らせて、満足したところで。
「で?
鬼神はなにゆえにそのようにちいさくなったのだ?」
「あ、それは僕から説明します」
首を捻るドラゴンに、僕は片手を挙げて主張する。
「そう言えば、お前はなんじゃ?」
ここでようやくドラゴンが僕に興味を持ったようだけど、いつまでもドラゴンの背中にいるのも変なので。
僕はレイをお腹にくっ付けたまま背中から降りて、ドラゴンの正面に立った。
「僕は、このレイの保護者です」
「ホゴシャ? とはなんじゃ?」
この説明では、まだ不十分なようだ。
けれど詳しく話す前に、こちらからも聞きたいことがある。
「あの、あなたはレイを『鬼神』と呼んでいますけど、
この子の正体を知っているということですか?」
「正体とな?
ああ、生体兵器であることか?」
僕の確認に、ドラゴンは別段特別なことではないと言った調子で告げる。
「やはり、ご存知だったんですね」
「そりゃそうじゃろう、ワシの同類だからな」
「はい?」
ドラゴンがぶっこんで来た単語に、僕の思考が一瞬停止する。
同類って、このドラゴンも生体兵器ってこと!?
「じゃあ、鑑定が通らなかったのはそのせいだったのか?
いや、けどレイは普通に鑑定できるぞ?」
大混乱して、思考が口から漏れていた僕に、ドラゴンがギョロリと目を動かす。
「お前、鑑定スキル持ちか?
鑑定できなんだのは、ワシが鑑定を弾くようにしておるからじゃろう」
「え、鑑定を弾くなんてことができるんですか!?」
ドラゴンに教えられた内容に、僕は驚く。
そして驚かれたことに、ドラゴンがまた驚いている。
「なんじゃ、知らんのか?
己よりも高レベルの相手には通じないが、下の連中相手には有効じゃぞ」
まさかの、スキルについてドラゴンが詳しいとか。
「どれ、試しに見えるようにしてやろう」
そう言ったドラゴンの目の前に、僕が扱うのと同じようなパネルが出てきた。
ただし、ドラゴンサイズで画面がデカい。
そのパネルを器用に尻尾で操作するその姿が、なんだか可愛い。
サイズ感は可愛くないんだけどね。
「ほれ、もう一度見てみよ」
「はあ、じゃあ鑑定」
ドラゴンに促されて、再び鑑定する。
名 前 無し
性 別 無し
年 齢 不明(忘却)
職 業 生体兵器No.02
レベル 999
スキル 地神レベルMax 威圧レベルMax 彫刻レベル63
あ、本当に生体兵器だ。
しかもレイより一つ上のNo.02。
確かNo.01が謎理由で欠番だから、となるとこのドラゴンが一番古いのか?
レベルが999って、カンストしているんだろうか。
鑑定を弾くのが自分よりもレベルが下の相手に有効となると、レベルがカンストしているドラゴンだったら全ての相手に有効ということだ。
しかも年齢が不明(忘却)って、数えるのが面倒になって忘れたってこと?
それに『地神』なんて凄そうなスキルだし。
けどしれっとある彫刻っていうスキルが気になる。
デカい図体だけど、チマチマとした彫刻をするのが趣味なのか?
けど、話ができるのは、ドラゴンが魔物じゃなくて生体兵器だったからか。
魔物のドラゴンみたいな見た目だけど、やはり身体のつくりが魔物とは違うんだろう。
「今度は見えました。
今はスキルについて詳しい人がいないんで、教えてもらえて助かります」
「そうなのか?
なんと不自由な世になっているのぅ」
僕がお礼を言うと、ドラゴンがきょとんとした顔になる。
なるほど、ドラゴンは世俗に疎いと。
そのあたり、あのコンピューターと同じだな。
僕がそんな事を思っていると、ドラゴンが問題発言をかましてきた。
「お前にソレが出せるということは、おまえもワシらの仲間ということかのう?」
「はい!? なんでですか!?」
「なんでって、お前が見ているその画面は、ワシら固有の能力だからのぅ」
ギョッとする僕に、ドラゴンが鑑定結果を表示しているパネルを目で示してくる。
「そうなんですか!?
じゃあ、僕も生体兵器ってこと!?」
僕はパネルに自分のステータスを表示する。
しかし、確認するがどこにも生体兵器の文字はない。
ドラゴンが僕のパネルをのぞき見しながら言った。
「いや、兵器と呼べるスキルが入ってないか。
ならば、生体兵器ではないだろう。
しかし、お前はどうやってその肉体を得たのじゃ?」
「それがですね」
僕はドラゴンに最初から語る。気が付いたらコンピューターの前にいて、この身体を貰ってレイの事を頼まれたことまでを、サラッと話すと。
「なるほど、マスターのシステムが引っかけたか。
たまぁに妙な物体をどこからか引っかけることはあったが。
生き物を引っかけたせいで、システムダウンを起こしたんじゃな」
ドラゴンの口から「システムダウン」という単語が出てくることに、激しい違和感がある。
けれど、僕がここにいることは珍しいことではあるものの、あり得る現象ということか。
「そしてお前の身体は、おそらくワシらと同じベースで作られたのだろう」
なるほど、じゃああのコンピューターは生体兵器のノウハウから肉体だけを流用させたと。
そう言えば、身体を造るのは上手くいったけど、スキルをつけるのにエネルギー不足だったみたいなことを、コンピューターに言われた気がする。
「それにしても、鬼神は初期化されておったのか。
しかも人間の子どもの姿とは、なんとも凝ったことをしたものよ」
「そうなんですか?」
しみじみと言うドラゴンに、僕は首を傾げる。
生体兵器的に、レイの存在もイレギュラーなのか?
「そうじゃ、たいていが成体の肉体と知識を与えられて造られるもの。
マスターは、鬼神に人間のような成長過程が必要と思われたのかのう?」
「にしては、僕に預けられたのはほぼ事故なんですけど」
「そこは、マスターのみぞ知る、じゃな」
ドラゴンがそう言って「フン」と鼻息を出した。





