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70話 チーズフォンデュと雪遊び

チーズフォンデュの作り方は簡単で、鍋にチーズと白ワインとミルクを混ぜて温め、それに好きな具を絡めて食べるだけ。

 学生時代にオシャレな料理を食べたくて、友人と集まってパンとソーセージでチーズフォンデュパーティーをやったんだよな。

 友人連中が料理がてんで駄目で、作ったのは僕だった。

 混ぜるだけ、切るだけなのに、何故失敗するのか謎だったっけ。

 白ワインは、料理酒代わりに安いのを買っておいたんだよね。

 黒パンを暖炉の火でカリカリに焼いて、他にもソーセージや野菜も出しておく。

 チーズのいい匂いに釣られたようで、離れたところで積み木遊びをしていたレイとシロがジワジワと暖炉ににじり寄ってきている。

 うん、そろそろ食べごろだろうし、暖炉からチーズの鍋を出して床に置く。


「じゃあ、いただきます!」


「いただきます」


「アン!」


食前の挨拶の後、僕はまず黒パンにチーズを絡めてから、ちょっと冷ましたのをレイの皿に乗せてやる。

 チーズがしみて柔らかくなったんで、レイにも食べやすいと思うんだけど。

 冷ましてやっているうちに、僕も自分の分の黒パンをチーズに絡めてパクリ。

 うん、美味しい!

 たぶん、この山小屋の雰囲気も美味しさにプラスされている気がするけど。

 僕が食べたのを見たレイは、チーズが絡んだ黒パンを多少ハフハフしながらも食べる。

 そしてモグモグしてから、皿をサッと差し出す。

 うん、美味しかったんだね。

 シロも皿をカリカリと引っ掻いていたので、同じようにして皿に乗せる。

 お腹がいっぱいになったら、明日に備えて早めに就寝だ。

 毛布にレイと一緒に包まると、寝つきがいいレイはあっという間に寝てしまう。


「すぅすぅ」


寝ていると年相応のあどけない寝顔を見せるレイ。

 シロを抱きしめて眠る姿は見ててすごくホッコリするけど、実は道中で意識が半分山頂を気にしていて、心ここにあらずみたいな様子だった。

 今のところ戦闘に支障はないけど、レイが気にしている正体がなんなのか、早くはっきりさせてモヤモヤをスッキリ解決させてやりたいものだ。



山小屋で朝を迎えると、外は雪景色だった。

 夜の間に雪が降ったらしい。

 ニケロの街で買っておいた冬物コートの出番というわけで。

 昨日のチーズフォンデュの残りでチーズリゾットを作って朝食を食べると、外が気になるらしいレイを暖かい格好に着替えさせて外に出てみる。


「しろい」


レイは初めて見る雪を、不思議そうにペタペタしていた。


「つめたい」


そして濡れた掌を見て首を傾げる。

 あ、手袋を忘れてた。

 濡れたままだとしもやけになるので、丁寧に水気を拭ってから手袋をつけさせ、雪について説明する。


「この白いのは雪って言ってね、あんまり寒いせいで雨が凍っちゃったんだよ」


「あめ、こおる」


「そうなんだ。

 もっとたくさん雪が降ると、雪だるまとか作って遊べるようになるんだよ」


けれどあいにく、今はそこまで積もっていない。

 雪は寒かったら降るわけじゃなくて、寒さプラス雨で雪になるんだし。

 この辺りって雪が積もるのかな?

 誰かに後で聞いてみよう。

 僕が薄く積もった雪を集めて雪玉を作ってみせ、レイに軽く投げたらあっさりキャッチして、しげしげと見ている。

 雪玉に興味があるとか。子供らしいなぁ。

 これだけでも、ここまで登ってきてよかったかも。


「雪がたくさん降ったら、雪遊びをしような」


僕がそう言うと、レイはコックリと頷いた。

 けどその前に、あの謎の鳴き声の正体か。

 それから雪玉を地面に返したレイだったけど。

 それをシロがシャクシャクと食べてしまった。寒いところで冷たいものを食べると、お腹を壊さないか?

 シロはよく僕の服の中に避難するんで、くれぐれも中で粗相だけは勘弁してほしい。

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