表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/84

62話 依頼完了、からの再会

その後、書類にモーリスさんから依頼完了のサインを貰ったら、補給物資運搬の仕事は終了だ。

 それから村に一軒だけだという宿屋の場所を教えてもらい、支払いはモーリスさんが持つという一筆も受け取って向かう。

 その途中で、怪我人を集めて手当てをしている現場に遭遇したので、おやつを食べて休憩したおかげで魔力が回復した僕は、コッソリ治癒の術をかけた。

 急激に完治しても謎と混乱を呼びそうだから、寝て起きれば朝には治っているイメージで。

 一番重症だという人も一晩で治るってことだけど……そこは妖精の悪戯ってことでどうかな?

 そんな通りすがりの一仕事をこなして、再び宿へ歩いていると。


「おんやぁ?

 兄ちゃんじゃねぇか」


そんな声をかけられた。

 この世界での知り合いがまだまだ少ない僕なので、誰だろうかと思って振り返ると、どこか見覚えのあるおじいさんがいる。

 って、ニケロの街まで荷馬車に乗せてくれた人だ!


「ども、お久しぶりです!

 ここはあなたの村だったんですね」


「おぅよ、そういう兄ちゃんはチビもワンころも一緒だが、またなんでこんな時にここにいるんだぁ?」


思わぬ再会に驚く僕に、おじいさんの方も首を捻っている。

 そうだよね、魔物の問題で乗合馬車も商人の行き来もなくなっているのに、余所者がいるって不思議だよね。


「実は冒険者になりまして、ギルドで補給物資の運搬を引き受けてきたんです」


「そうかい!

 はあぁ、兄ちゃんは腕の立つお人だったんだなぁ」


僕が伝えた内容に、おじいさんが感心しきりである。

 あ、そうだ。この際せっかくだから聞いてみよう。

 さっきモーリスさんに聞きそびれていたし。


「あの、この村で獲物を解体してくれる店ってありますかね?」


そう、村に着いたらマーダーモンターナの肉を料理すると、レイと約束したのだ。

 早くしないと、一度我慢してもらったんだから、二度目の我慢は可哀想だ。


「おお、それならウチの息子が店で請け負っとるぞ。

 なんでも扱う雑貨屋だ」


なるほど、リンク村の雑貨屋みたいなものか。


「ついでにその獲物の肉、余計にあるなら売ってくれるとありがてぇんだがな。

 なにせ山賊と魔物のせいで、猟師が山へ入れねぇんだ」


「ははぁ、肉がないのは困りますね」


肉は健康維持のために必要な食材だ。

 補給物資は保存のきく物が大半だろうから、あっても干し肉だろう。


「すごくたくさん狩ってしまったので、分けるのは構いませんよ」


むしろ狩り過ぎて、一体どのくらいの期間食べれば無くなるのか、謎だし。


「そうか!

 そりゃあ助かる!」


こうしてマーダーモンターナの一部を売ることが決まった。


「レイ、疲れたなら先に宿へ行くけど……」


僕が一応、レイに確認しようとすると。


「おにく」


レイは僕がみなまで言うまもなく、即答である。

 そうか、そんなに鳥肉を楽しみにしていたんだね。

 卵だって養鶏のものとあんなに違ったんだから、肉だとどんだけなんだと期待が高まるよな。

 というわけで、レイたっての願いもあり、宿より先に雑貨屋へ行くことにした。

 雑貨屋は山賊被害を免れたそうで、特に壊れたり焦げたりはしていなかった。

 僕らを先導するおじいさんがドアを開ける。


「おぅいザッシュ、客だ客!」


「あぁ!?

 冗談を言ってるな父さん。

 こんな時にそれどころじゃねぇだろうが!」


声をかけたおじいさんに怒鳴り返してくるのが、店主だという息子さんだろう。

 年齢は四十代くらいか。


「すみません、マーダーモンターナを解体して、素材を買い取ってほしいんです。

 肉は半分程度渡してもらえれば、残りは買取で構いません」


僕が喧嘩になる前にと割って入って説明すると。

 息子のザッシュさんだけではなく、おじいさんもポカンとしていた。

 あれ、どうしたんだろう?

 僕が首を傾げていると。


「「マーダーモンターナぁ!?」」


二人揃って叫ばれた。

 店の中の品物を見ていたレイが、ビクッと驚いて僕の足に抱き着き、シロがレイの頭の上から落ちる。


「マーダーモンターナって、あの暴れ鳥か!?

 群れで出る行商の敵の!?」


「それを、兄ちゃんが狩ったぁ!?

 ありゃあ軍を出してもらわにゃならん魔物のはずだがなぁ……」


ザッシュさんとおじいさんが口々に言う。

 あれ、そうだったの?

 レイがあっさり狩ったから、そんな大物だと思わなかったな。

 っていうか、またこのパターンか!


「どうも街道沿いに巣が出来ていたようで、危ないので根絶やしにしてきました」


僕はそう話しつつ、鞄をゴソゴソしてマーダーモンターナを頭だけチラ見せしてみせた。


「マジックバッグか!」


「しかも根絶やしたぁ……」


「だから山ほど入ってます。

 それで、解体お願いできますかね?」


呆気にとられるザッシュさんとおじいさんに、僕がお伺いをたてると。


「待て、猟師連中に声をかけてくる。

 ここのところずっと村のモンは肉をろくに食えてねぇんだ。

 こりゃあ祭りだぞ!」


するとザッシュさんがそう言うなり、店を飛び出して行った。

 残されたのは、僕らとおじいさんだ。


「はぁ、兄ちゃんは大物だなぁ」


「はは……」


おじいさんの尊敬の眼差しに、僕は笑って誤魔化す。

 僕も一応いくらか倒したけど、根絶やしにしたのは主にレイだしな。

 そんなやり取りをしていると、レイが僕の服の裾をクイクイと引いてきた。


「どうした? レイ」


「おにく、たべられる?」


ザッシュさんが飛び出したのが不安だったのだろう。

 どうやら話の流れが分からなったらしい。


「うん、食べられるよ。

 卵も使って、美味しいのを作ろうな。

 親子丼っていうの」


「おやこどん」


レイがかすかに表情を明るくする。

 親子丼がどんな料理か分からないだろうに、「卵も使って」というのが嬉しいようだ。

 こりゃあ、気合を入れて作らなきゃな!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「百花宮のお掃除係~転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します」2巻がカドカワBOOKSより8月7日に発売されます!
ctpa4y0ullq3ilj3fcyvfxgsagbp_tu_is_rs_8s

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ