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57話 やる気満々!

準備が整った、翌日。

 街門の前に立った僕は、身軽に鞄一つ下げただけ。

 ついさっき受け取った補給物資は、既に鞄へ収納済みだ。

 そしてレイはなんのやる気なのか、シロとお揃いウイングドッグ着ぐるみ姿で、背中に特別製のリュックを背負っているんだけど。

 そのリュックに入っているのは、リンク村でベルちゃんに貰った花だ。

 実は昨日ニールさんと話した後でちょっとギルドマスターの部屋へお邪魔して、ブリュネさんから聞いた情報によると。

 この花は「ユーリルの花」という高価な薬草の元になるもので、この花だけでも治癒効果があるのだそうだ。

 宿では部屋の窓辺に置いて、レイが水やりをしていたんだけど。

 旅に出るならベルちゃんの意思を尊重して、いつでも使えるように持ち歩きたいんだと相談すると。

 軽い素材の植木鉢と、ブリュネさん特製ブレンド土を貰ってしまった。

 これらが室内から出て来たのでビックリしたんだけど、ストレスが溜まった時にこの部屋で植木鉢の園芸を楽しむんだとか。

 ブリュネさんからそんなものを貰った代わり、このユーリルの花の大きめの葉っぱを一枚プレゼントした。

 どうやら葉挿しで根付く種類みたいで、育ててみたいんだって。

 レイはどの葉っぱにするかすごく悩んだ末、ブリュネさんに一枚差し出していた。

 大事な花の葉っぱを千切るんだから、どうやらレイの中でブリュネさんの立ち位置は高そうだ。

 そんなわけで、ウィングドッグ着ぐるみでユーリルの花を背負っているレイは、門番の兵士にすごく奇妙な目で見られているけど、当人は全く気にした風ではない。

 ともあれ、僕らは準備万端というわけで。


「よーし、じゃあ出発!」


「しゅっぱつ」


「アン!」


僕たちはニケロの街を発った。



こんな風にニケロの街を出て、本日二日目。

 ゴルドー山の麓、アイカ村への道中は順調だ。

 布団のおかげで夜も結界内のテントでぐっすり寝れるので、疲れが翌日に残らないのがいい。

 そして、今日もレイは元気いっぱいに魔物狩りをしている。

 急ぐ旅なのでのんびり狩りはしないと言ってあるんだけど、どうやら道沿いがとある魔物の生息域になっているようで。

 それを嬉々として倒している。

 というのも、この魔物というのがマーダーモンターナという、でっかいスズメのような魔物なのだ。

 スズメと言っても、日本で見るような可愛らしいフォルムではなく。

 まず、顔が怖い。

 目の周りに赤い隈取みたいな模様があり、つぶらな瞳なんかではなく血走った目でこちらを睨んでいる。

 そしてマーダーという名がついていることからわかるように、敵を認識すると狂ったように襲い掛かってくる。

 けど一度の飛行であまり距離を飛ぶことができないのは、日本のスズメと同じなようで。

 飛行系の敵とは相性の悪いレイにとっては、数少ない得意な鳥だと言えるだろう。

 そして鑑定の結果だと、脂がのっていて美味しいのだそうだ。

 きっとどこかでいい餌を食べているんだろうな。

 まあこのマーダーモンターナもやたらと数が多いので、どこからか移動して来た口なのかもしれない。

 となると、放置も良くないよね。

 そしてレイが張り切ってマーダーモンターナ狩りをしているのは、別に魔物狩りが楽しいからというだけではない。

 そもそものきっかけは、レイがアーマーバッファローの牛丼を気に入ったことだ。

 確かに、アーマーバッファローの牛丼は美味しかったよ。

 レイはブリュネさんの農園で作った肉団子も美味しく食べてくれたんだけど、それよりも牛丼の方がより好みだったみたいだ。

 肉らしさを感じられる料理の方がいいのかな?

 だったらなんという肉食三歳児なんだろうか。

 なら今度、アーマーバッファロー100%のハンバーグを作ってやろうかな。

 ともあれ、イビルボア(豚肉)にアーマーバッファロー(牛肉)ときたら、僕としても気になるのは第三の肉である鶏肉なわけで。


「鶏肉ってなったら、どの魔物になるのかな?」


そんな僕の呟きをしっかりバッチリ覚えていたレイにとって、このマーダーモンターナ飛んで火にいるなんとやら、というわけだ。

 そんなこんなで、鳥肉狩りにしばし精を出し。


「よーし、もういないかな?」


「いない」


見渡して死屍累々なマーダーモンターナを見ながら、確認をする。

 レイの気配察知にも引っかからないということは、これで全部なのだろう。

 ならばさっさと片付けなければ迷惑だろう。

 ほとんどレイ、ちょっとだけ僕が倒したマーダーモンターナを鞄にしまいつつ、これをどうしようかと悩む。


「うーん、スズメ系かぁ」


どんなメニューにしようか考える僕に、レイはマーダーモンターナを引きずりながら集めつつも、期待の籠った目を向けてくる。

 そうか、そんなに鳥料理が食べたいのか。

 でも僕は解体が出来ないので、どこかでお願いしたい。

 アイカ村でやってくれるだろうか?

 それとも今後を考えて、解体技術を身に着けるべきか?

 というか、魔法でパパっとやれる術はないものか。

 そしてスズメ料理というと焼き鳥かな。

 あと実は卵とかも回収しているので、それで親子丼を作ってみようか。

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― 新着の感想 ―
[一言] スズメ 羽をむしって口からお尻に向けて五寸釘をぶっ刺して焼いて食べるという話をマンガで読んだなぁ 釘を抜くと内臓もついて来るんだとかなんとか…(^_^;)
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