50話 美味しいお肉をゲットしよう
というわけで、俄然アーマーバッファローの肉をゲットしたくなった僕に釣られて、レイもやる気になったようで。
しかもタイミング良く大きな群れに行き当たってしまった。
「おにくがいっぱい」
レイはそう呟くと、アーマーバッファローの群れに突撃してしまう。
僕がアーマーバッファローのことを「美味しいお肉」って説明してしまったものだから、レイの中ではアーマーバッファローは「おにく」になったようだ。
レイも宿の料理で「お肉は美味しい」って理解しているしね。
それからしばらくして。
「レイ、そろそろやめてあげようか」
アーマーバッファローを蹂躙する三歳児に、僕は声をかける。
「……」
声が聞こえたらしいレイは無言で振り返り、素直にこちらに戻って来た。
どうやら満足したようだ。
レイはアーマーバッファローの山をあちらこちらに積み上げていた。僕もそれらを鞄に回収しつつ、自分でも数頭を魔術で狩ったんだけど。
アーマーバッファローが多すぎじゃないか?
これももしかして、どこからか移動してきたとか?
これも一応報告しておくか。
そしてニケロの街に戻り、受付の人にアーマーバッファローを狩って来たと伝えると、倉庫に行くように言われた。
「また、凄い量を持ち込んだものだな」
再びやって来た僕らに、ここの責任者のおじさんに呆れ顔をされてしまった。
「まあこれで、アーマーバッファローの肉が安くなるか」
そんな事を言うおじさんに、僕はアーマーバッファローの山をシロと一緒にツンツンしているレイを見た。
「よかったねレイ、美味しいお肉が安くなるってさ」
「おにく」
レイはまだよく理解できないながらも、いいことがあるとだけ分かったらしい。
ちょっと嬉しそうだ。
そんな僕らに、おじさんが告げた。
「そうそう、昨日の分は半分程度解体が終わっているから、買い取り金は受付で貰ってくれ」
さすがにあれ全部の解体は無理だったようだ。その証拠に僕の視界に魔物の山がまだ残っているのが入っている。悪くならないのかと思ったら、この倉庫には僕の鞄のような状態を保存する機能があるという。なんでもブリュネさんがどこかで手に入れた古代の遺物を、この倉庫に使ったのだとか。
「はい、では行ってみます」
というわけで受付に行くと、ニールさんがスタンバイしていた。
どうやら僕らが戻ったことを聞きつけたらしい。
忙しいだろうに、いいんだろうか?
困惑する僕に、ニールさんが支払いの清算をしてくれた後で告げた。
「トツギさん、昨日持ち込まれた魔物分でランクアップとなりました」
「はい!? もうですか!?」
冒険者になったのは二日前だっていうのに、早すぎやしないか!?
驚く僕に、当然という顔のニールさんが言う。
「アースドラゴンを狩る実力のある方を一つ星にしておくなんて、もったいないですから」
アースドラゴン級の魔物を相手にするのは、四つ星以上らしく。
そのクラスの依頼を受けるには、自分の星の一つ上のクラスまで受けることができるため、せめて三つ星でなければならない。
というわけで、僕は特例として三つ星への飛び級のランクアップとなった。
それならレイも三つ星になるのかと思いきや、こちらは一つ上がった二つ星である。
レイがアースドラゴンを討伐したと気付いているのがブリュネさんだけだろうし、仕方ないかと思っていたんだけど。
どうやら理由はそれとは別にあった。
「三つ星は、大がかりな作戦の際には指揮役になるんですよ」
「それはマズいですね」
ニールさんの説明に、僕も納得である。
誰でも三歳児に指揮されたら困惑するだろう。
戦闘力だけでなくそういう点も見るのなら、確かにレイは三つ星に上げない方がいい。
揉め事の種は蒔かないに限るよね。
こうして星が増えたギルドカードを受け取ったところで、ニールさんに言われた。
「そうそう、忘れるところでした。
ブリュノルドが用があるみたいでしたよ?
なんでも今度、自慢の農園を見せる約束をしているそうですね」
そういえば、そんな約束をしていた。
忘れていたわけじゃあないけれど、この状況だと無理だと思っていたんだよね。
「見せてもらえるのは嬉しいですけど、ブリュネさんは今忙しいんじゃないですかね?」
遠慮がちな僕に、ニールさんはニコリと笑みを浮かべた。
「忙しいのは冒険者たちを調整する役割である私と、調査に向かう冒険者たちであって、ギルドマスターは平常通りですよ。
第一冒険者ギルドのトップが忙しい時は、かなりの異常事態でしょうね」
言われてみればそうかも。
むしろギルドマスターは、そういう場合の最終防衛を担う人材なのかもしれない。





