48話 やってしまいました
名 前 戸次明久
性 別 男性
年 齢 20歳
職 業 異世界人、冒険者
レベル 8
体 力 35/48
魔 力 6/92
力 29
守 備 28
器用さ 44
素早さ 30
運 9
スキル 全属性魔術レベルMax 鑑定レベルMax 探索レベルMax 精神攻撃耐性レベルMax 料理レベル9
なんだかまさしくRPGみたいなステータスが出た。
まずこれらの数字を見て思ったことは、「運が低くない?」だった。
他の項目が概ね20オーバー、器用さに至っては40オーバーなのに、運だけ一桁とか。
でもまあ、こんな世界に来ちゃったことは、確かに運がないと言えるかも。
そしてダルい原因は魔力だろう。
少ししか残っていない。
さっきみたいなエリア魔術は魔力を食うのかも。僕は全属性魔術のスキルはレベルMaxでも、そもそもレベル自体は低いからなぁ。
うん、今後のためにも積極的にレベル上げをしよう。
僕がそんなことを考えている一方で。
「これは、一体なにが起きたというのか」
怪我人たちが突然回復したことに、ニールさんが困惑していると。
「何事なの!?」
そこにブリュネさんが現れた。
「それがですね」
ニールさんがすぐに駆け寄り、事情を手短に説明する。
そして光が溢れた謎現象のあたりで、僕の方をジロリと見た。
「ハハハ……」
僕の仕業だと悟られたようだけど、とりあえずは笑ってごまかしておく。
それから、僕らはブリュネさんとニールさんと一緒に、再び倉庫へやって来た。
こんもりと積み上げられた、僕が持ち込んだ魔物の山を見て、ブリュネさんが険しい顔をする。
「ここにある魔物が、あの林で狩られたって?
本当なのそれ?」
ブリュネさんにそう尋ねられ、僕は真面目な顔で頷く。
「はい、手前の初心者エリアを素通りしたとはいえ、それほど奥へ入り込んでいなかったはずです。
むしろ帰りの事を考えて近場にいましたし」
これはマップを確認しながら移動したので、間違いないはずだ。
「そうね、レイちゃんを連れて行くなら、移動距離なんて知れたものだわ」
そう、どんなにスタミナがあっても、幼児の足の長さはいかんともしがないのである。
「僕もここの魔物だけだと気付かなかったんですけど、さすがにコレがここにいるのは変だなって思いまして」
僕はそう言いながら、もう一度アースドラゴンを頭だけ鞄から出す。
ブリュネさんもこれには驚いた顔をする。
「こんなものまでいたの!?
っていうか狩っちゃったの!?」
そう叫んだブリュネさんは視線をちらりと、倉庫の隅でシロと積み木で遊んでいるレイにやる。
話が長くなりそうだから、退屈しないように出してあげたんだよね。
というか、ブリュネさんはアースドラゴンを狩ったのが僕じゃなくてレイだと思うんだなぁ。
まあ、合っているけど。
ニールさんは僕の手柄だと考えていたみたいだけどね。
あれか、ブリュネさんは強者だけが感じる強さというので、レイの実力を把握しているのかもしれない。
そんなことはともかくとして。
「アースドラゴンが初心者エリアのすぐ隣にいたら大問題ですよね?」
「当たり前よ、あそこを速攻で封鎖して討伐依頼を出しているわ。
でも、アースドラゴンの目撃情報なんて、なかったはずよね?」
「はい、私もそのような情報を目にしていません」
僕の質問に、ブリュネさんが渋い顔で返し、後半をニールさんに確認する。
「そうなるとつい最近、今日の内にでも山から降りて来たんですかね?」
「そういうことでしょうね。
むしろここに置いてある魔物と遭遇したのがアナタたちで、助かったと言えるでしょうね」
まあ、もしこれが初心者を脱したばかりの冒険者だったら、逃げるのも難しかっただろう。
そもそも今日怪我人が続出したのは、強い魔物が山から下りて来たせいで、本来林の奥にいる魔物が初心者エリアに流れ出たせいかもしれない。
そしてレイ無双のせいで、そうした魔物が大暴走したとか。
うん、やっぱりあり得るかも。
今度からレイを暴れさせる場所は選ぶようにしよう。
僕が静かに積み木遊びするレイを眺めながら、そんなことを考えていると。
「ゴルドー山で異変が起きているのかもしれないわね」
「早急に調査隊を編成しましょう。
そしてしばらくあの林は立ち入り禁止とします」
「それがいいでしょうね」
ブリュネさんとニールさんが、そんな結論に達していた。
その後、ちゃんとアースドラゴンを倉庫に置いたら、その場にいた皆にものすごく騒がれたのは、言うまでもないかな。





