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47話 いないはずの魔物

「山に入ったら、こんな時間に戻っていませんってば。

 これは林の奥のエリアで狩ったんです」


「林に、これらの魔物がいたんですか!?」


僕の説明に、ニールさんがもっと驚く。

 なんか、話がややこしくなってきた気がするぞ?


「ここに置いた魔物って、普段はあそこにいないんですか?」


レイ無双でまとめて狩っちゃったんで、正直どれくらい強い魔物だったかなんてわからないんだよね。


「ええ、これらは山に少し登ったあたりに生息している魔物ですよ」


ニールさんが難しい顔で答えた。

 それだったら、避けているアースドラゴンはどうなるんだろう?

 あれこそ初心者エリアに近く場所にいたことに、違和感があったんだけど。


「あのぅ、だったらコレはどうなんでしょうか?」


僕はアースドラゴンを、頭だけ鞄から出してみせた。

鞄の口とアースドラゴンとのサイズの違いが半端ないが、鞄が破けたりしないのが謎仕様だ。


「それは、アースドラゴンではないですか!?

 冒険者でも高ランクグループ複数で当たり、下手をすると国の軍が出るレベルの魔物ですよ!? 

それでも討伐に数日かかるというのに……」


ニールさんが悲鳴交じりに叫ぶように告げる。

 ……すみません、レイが一人で狩っちゃいました、ソレ。


「ちなみに、どのあたりに生息しているものなんですか?」


「山頂です。

 こちらから攻撃しない限りは無害なのですが、危害を受けると狂ったように暴れまわるため、非常に危険な魔物です。

 攻撃がほとんど効かないこともあり、見かけても素通りするのが通常ですね」


「でも、コレも同じ場所で狩ったんですけど」


「それが本当の話だとすると、非常にまずいことになります。

 あのあたりを狩場にしている冒険者には、到底手に負えるものではない」


「ニールさん、大変だ!」


そこにギルド職員らしき人が、倉庫へ飛び込んできた。


「何事ですか?」


「林から帰って来た冒険者たちが……、とにかく来てください!」


そう話す職員に連れられて行ったのは、ギルド入り口前のホールだった。そこには、大勢の怪我人が溢れていた。


「林の狩場に向かった連中が、皆このような状態で戻ってきました」


職員がニールさんにそう説明する傍らで、他の職員が薬や包帯を持って駆け回っているのが見える。


「どういう状況でこうなったのか、聞きましたか?」


「はい、彼らの話によると、急にいつもより強い魔物がどこからかやって来たそうです。

 到底太刀打ちできるものではなく、命からがら逃げて来たとか」


僕らが街へ戻る際に見かけたときは、それほどでもなかったんだけど。通り過ぎた後のことかな?

 ……これって、レイが暴れた影響、とかいうことはないよね?

 レイという絶対強者の存在が、魔物パニックにさせたとか。

 あり得る、のかな?

 どうやら生態系がおかしなことになっているみたいだし、否定できない気がしてきた。


「痛ぇよぉ」


「私、死んじゃうの?」


「誰か、コイツに薬をくれ!」


悲壮な声が溢れるこの場で、僕はだんだんいたたまれなくなってきた。 

 それにこの怪我で、一生モノの後遺症が残ったら可哀想だ。

 あのエリアは初心者向けの狩場だったわけで、当然怪我人は初心者の十代の若者ばかり。

 そんな子たちの未来を折るのは忍びない。

 ここは、魔術でやっちゃうか?

 治癒の魔術はいざという時のためにちゃんと練習しているんだけど、この人数を一人一人見るのは手間だし、時間がかかるし。

 いっそエリア指定みたいにして一気にやるといいのかな?

 結界のイメージで、怪我人を丸っと囲むイメージだとイケるかも。


「『治癒』」


僕が小さく唱えると、ホールに淡い光が満ちた。

 その光が怪我人にまとわりつくと、彼らの怪我がまるで映像を早送りするかのように、急激に癒えていく。

 そして光るが治まると、痛みを訴える声が止んでいた。


「今の、なんだったんだ?」


「あれ、もう痛くない」


「おい、動いていいのかよ!?」


再びザワザワと騒ぎ出す若手冒険者たちの一方で、僕は猛烈に体がダルい。

 もしかして、今の『治癒』の魔術のせいか?

 それを確認するためにも、自分を鑑定してみることにする。

 それも今までよりもより詳しく。


名 前 戸次明久

性 別 男性

年 齢 20歳

職 業 異世界人、冒険者

レベル 8

体 力 35/48

魔 力 6/92

 力  29

守 備 28

器用さ 44

素早さ 30

 運  9

スキル 全属性魔術レベルMax 鑑定レベルMax 探索レベルMax 精神攻撃耐性レベルMax 料理レベル9

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