44話 依頼を受ける
丁度いいから、この人に聞いてみよう。
「あのこの依頼って、もう持っているものを出してもいいんですかね?」
「ええ、そのあたりは常時依頼ですので、事後承諾でも構いません」
僕の質問に、彼はニコリとほほ笑んでそう答えてくれた。
そうか、常時依頼っていうのがあるのか。
「じゃあ、これを受けます」
「では、こちらへどうぞ」
というわけで彼に連れられてカウンターに移動し、早速鞄から薬草を束で出す。
見つけた場所に群生していたんだよね。
「これでいいですか?」
「いいですか」
僕と真似をして尋ねるレイに、彼が一瞬固まる。
「……多いですね、これは見つけるのが難しいはずなのですが。
しかも根に土がついたままだということは、買って仕入れたわけでもなさそうだ」
「あれ、買うのもいいんですか?」
自力で採取っていうのが、冒険者の仕事だと思ったんだけど。
これに、彼はまたもやニコリと笑って答える。
「ええ、入手方法は厳密に決められていませんので。
ですが通常、買う方はいませんね、コストがかかりますから」
そりゃそうだよね。
そしてもちろん、盗品であるかはチェックするとのこと。
そして結果、薬草は良い値段で売れた。
これで冒険者としての初仕事完了なんだろうけど、仕事をした気がしないなぁ。
あ、でも薬草に常時依頼があるってことは。
「あの、魔物なんかを倒した場合、依頼を受けていなくても持ってきていいんですか?」
僕の疑問に、彼は「もちろんです」と応じる。
「街や街道周辺の魔物駆除は常時依頼ですから。
報酬は微々たるものですが、素材の買取手数料は格安になっていますよ」
そう親切に教えてくれた彼――ニールさんについでだからと、冒険者としての注意点もざっと聞いてみた。
なにせ僕らがギルドカードを手に入れた時の状況がアレだったんで、ロクに説明を受けていないんだよね。
するとニールさん曰く、依頼は掲示板の依頼書を持ってきて受けるので早い者勝ちで、たまに指名依頼というものがあるという。
あとギルドカードの再発行には銀貨一枚、冒険者同士での争いにはペナルティがあり、依頼を受けずに放置するとギルドカードは失効、などを教えてくれた。
「全く、ブリュノルドはなにも説明していなかったんですね」
「ははは……」
ニールさんの呆れた様子に、僕は苦笑するしかない。
こうして大体の話を聞いたところで、早速冒険者仕事に出かけることにするか。
「よぅしレイ、じゃあ適当に魔物退治をしに行こうか」
「たいじ」
「キャン!」
僕の呼びかけに、レイとシロも乗り気で返事をする。
こうして、僕らは街の外へ繰り出すこととなった。
そんなわけで、ニケロの街から一時間程歩いた所にある林へとやってきた。
林の向こうは山へと続いていて、結構険しそうな山だ。
この林の手前のエリアは、初心者向けの採取物や魔物が生息しているらしい。
けど奥へ行くと急に手ごわくなるのだそうだ。
そして山は高ランクでないと難しいらしく、うっかり初心者が入ったらまず生きて戻れないだろうとのこと。
そのあたりの境界の見極めも、冒険者には大切な能力だという。
とりあえず、今日はここで色々採ってみることにした。
「でも、人が多いなぁ」
林の手前の初心者エリアは、若いというか、まるっきり子どもの姿を多く見かける。
装備もあまり揃っていなくて、本当に初心者なんだろう。
まあ装備面で言えば、僕らも似たようなものか。
コンピューターが用意した装備のままだし。特にレイは防具がない。
近いうちに揃えてやろうとは思うけど、となるとサイズが合う市販品があるとは思えず、オーダーメイドだろうし。
こういうのは安物買いの銭失いになったら目も当てられないし、どこかいい店があったら作ろう。
装備のことはともかくとして、今は仕事だ。
「僕らがここにいるのは、さすがにマズいよね」
たぶんレイだったら、初心者用の魔物を全て狩り尽くす気がする。
それは他の初心者の迷惑だろう。
「レイ、奥に行こうか」
「おく」
ということで、僕はレイとシロを連れて林の奥へ行くことにした。
「おい……」
「なにあれ」
「奥へ行く気だ」
「馬鹿なんじゃないのか?」
僕らを見かけた子たちがヒソヒソとしているのが耳に入る。
まあ、こんな幼児を連れて奥へ行くなんて、自殺行為に見えるかもね。
こんなこと、些細な行き違いなんだけど。
「……」
レイが彼らの態度を悪意認定したのか、身構えるような体勢をとる。
いやいや、攻撃しちゃダメだからね!
「レイ、僕らの事を知らない人が勝手に言っているだけだよ。
気にしないでこっちだって知らんぷりしよう」
「しらんぷり」
僕に同意してくれたようで、レイはこっくり頷くと構えを解く。
よかった、ここで彼らと喧嘩になったら、レベル差で酷いことになるからね。





