3話 塔の外は森でした
「あいたっ!」
あのコンピュータの部屋からの転送で追い出された先は、うっそうとした森だった。
地面からちょっと上の方へ出てしまったので、思いっきり腰を打った。
「着地をもっと丁寧にしてくれよな、全く……。
でも、なんか身体が軽いな」
腰を摩りながら立ち上がると、最近慣れっこになっていた、肩こり頭痛に全身の倦怠感なんかが、全く感じられないことに気付く。
身体を造ったってことは、健康体を手に入れたってことか!
二十歳に若返っているが、日本で暮らした二十歳の自分よりも身体が軽い気がする。
「ああ、健康って素晴らしい……」
しばし新しい身体に感激していたのだが、ふと傍らを見ると、サービス品である肩掛け鞄と三歳児が一緒に地面に落ちていた。
おっと、鞄はともかく幼児に服くらい着せてやってもいいだろうに。
横着なコンピューターだな。
「でも着せるのなんて持ってないし……。
って鞄に色々入っているって言ってたっけ?」
そのことを思い出した僕は早速落ちている鞄を拾い、中を覗く。
「……あれ?」
すると鞄の中は真っ暗闇だった。
というか、鞄の中が異次元空間なんだけど?
鞄の底はどこへ行ったんだ?
もしやこれは四次元ポケットとか、ゲームで言うインベントリ的なヤツなのか?
でもどこになにが入っているんだか。
そんな疑問を抱くと、目の前に突然あの透明パネルが現れた。
「うわっ、ビビったぁ!」
というかこのパネル、出したり消えたりできるんだな。
どうやらなにか知りたいと念じたら出現するようだ。
そしてパネルには「荷物一覧」という文字が表示されている。
その中には「食料品(一か月分)」や「テント」とかいうものがあったのだが、ずっと見ていけば下の方に「子供服」というのを発見した。
おお、ちゃんと服を用意してくれていたのか。
横着なんて言って悪かったな。
「でも、どうやって出すんだこれ?」
僕は首を捻りながら、なんとなくその「子供服」という文字に触れてみた。
すると目の前に子供服が現れる。僕がここへ出た時もそうだったけど、出現ポイントが地面から一メートルほど上なのは仕様なのか、僕は慌てて受け取った。これって気をつけなきゃ、割れモノとかだったら出した途端に壊れるな。
おっと、そんなことよりこの子の着替えだ。
早速服を着せていくんだけど、ちなみに男の子だ。
服は僕と同じく生成りのシャツとズボンの上下で、靴もちゃんとある。
肌が白くて髪も白く、まるで人形のように綺麗な幼児だけど、この子供って一体なんなんだ?
「あ、そうか。こんな時こそ『鑑定』の出番だ」
というわけで、この子を「鑑定」してみた。
名 前 無し
性 別 男性
年 齢 3歳(精神年齢0歳)
職 業 生体兵器No.03
レベル 1
スキル 鬼神レベルMax 気配察知レベルMax
※ 昔、ヤンチャが過ぎたので初期化の上、機能停止させられていた個体。
愛情を注いで育てて上げれば、優しい子に育つでしょう。
なんかぶっ飛んだ結果が出たんだけど。
ちょっとちょっと、「生体兵器」ってナニさ?
この疑問にすかさず「鑑定」が反応したらしく、パネルに答えが出される。
生体兵器
世界の中心の塔にて造られた、十体の兵器の総称。
それぞれの作成者が拘り過ぎた挙句、手の付けられない性格に育ったモノあり。
なお、破壊処分にされたNo.01以外は、現在でも残存している。
十体あってNo.01だけが破壊って、一体なにしちゃったんだよNo.01。
それにこの子もヤンチャが過ぎたので初期化の上、機能停止したみたいだけど。
どんなふうにヤンチャだったの?
盗んだバイクで走り出しちゃう系だったりする?
でも愛情を注げば優しい子に育つってあるし、こんな子供の内から先入観を持つのはよくないな。
でも子育てなんて、全く経験ないよ?
しがない元社畜に無茶ぶり過ぎないかなコレ?
こんな風に僕が一人、今後について考えていると。
パチッ
あ、子供が目を覚ました。
真っ赤な目で、まるでウサギみたいだな。