37話 お話ししましょう
ちなみに、こんなやり取りをしている横では、レイがおやつのパンケーキをモグモグしている。
運動したらお腹が減ったんだね。
ブリュネさんはレイの食べているパンケーキが気になるようで、チラチラ見ている。
まあ、黒パンを見慣れていると珍しいよね。
「食べますか?」
「いただくわ」
僕の勧めに、ブリュネさんは間髪入れずに頷く。
といういことで一枚あげることにして、鞄に焼き立てで仕舞っていたパンケーキを、皿とフォークも一緒に出す。
「どうぞ」
ブリュネさんは僕が差し出した皿を受け取り、添えられたフォークで上品に一口に分けて、パクリと口に入れる。
「美味しいわね」
すると険しかった表情がふにゃりと緩む。
よかった、怖さが減ったよ!
パンケーキ効果万歳!
「ジャムとかクリームをのせて食べたら、さらに美味しいですよ」
ブリュネさんなら、お洒落に盛り付けしたパンケーキが似合うと思うんだよね。
「なるほど、それは美味しそうだわ。
ぜひ、コレをどこで買えるのか教えてほしいんだけど」
どうやら気に入ったらしい、ブリュネさんがそう尋ねてくる。
「あ、それなら僕の泊まっている宿屋の食堂へどうぞ」
宿でパンケーキのストックを作った際、レシピは既に流れている。
パンよりも短時間で作れて、なおかつ固くないので子どもと年寄りに人気が出るだろうと、ご主人が言っていた。
「どこの宿?」
「とまり木亭です」
早速行く気らしく、宿の名前を聞かれたので答えると、「ああ、あそこね」とブリュネさんが呟く。
「ワタシも食堂によく行くけど、こんなメニューあったかしら?」
「新作なんです」
首を捻るブリュネさんに、そう言っておく。
たぶん今日にでもメニューになっているはずだ。
なにせ材料も作り方も簡単だから。
そしてご主人プロデュースで、すっごくお洒落なパンケーキになっている気がする。
そんなパンケーキの話はともかく、腹が満ちたところで魔術の話だ。
「魔術のスキルを持っている人って、いないんですか?」
僕のこの疑問に、ブリュネさんが呆れた顔をする。
「教会が売っているスキルに、そんなものないでしょうに」
この言い方に、僕は内心で「うーん」と唸る。
「……もしかして、教会が売っているスキルしか手に入らないんですか?」
より正確に言うなら、「手に入らないと思っている」だ。
だってブリュネさんは既に持っているんだから。
「引っかかる言い方ね。
アナタは教会以外からスキルを手に入れたっていうの?
それって教会の取り締まり対象ってもちろん知っているわよね?」
いえ、全く知りませんでした。
というか、なんか不穏な話だな。
なにその「取り締まり対象」って。
宗教裁判みたいなのにかけられたりするの?
「いやいや、そんな危ない話じゃなくってですね。そもそもスキルって、人の中に自然発生するものではないんですか?」
「……はぁ?」
たっぷりと間を開けてから声を漏らしたブリュネさんの顔に、「意味不明」と書いてある気がした。
そして再び怖い顔になったかと思ったら、ソファーから立ち上がり、ドアを開けて出ていったかと思ったら、すぐに戻って来た。
「なんかヤバそうだから、人払いをしておいたわ。
その話、もっと詳しく説明して頂戴」
そう言って真面目な顔をした。
えっと、なにから話せばいいのか迷うけど。
「そうですね、まずはブリュネさん。
あなたには投擲スキルと格闘スキルがあります」
「はぁ? なにそれ、そんなもの買った覚えがないわ。
それになんで断定できるのよ?」
ブリュネさんの疑問に、僕はレイの口元についている食べカスを拭ってやりながら答える。
「だから、スキルは『買う』ものではないんですって。
実は僕、鑑定スキルを持っていまして。
失礼ですがブリュネさんを鑑定したら、剣術、投擲、格闘というスキルが見えました。
ああ、あと園芸もか。
どれも結構レベル高いですよ?」
僕のこの話に、ブリュネさんが頭が痛そうな仕草をする。
「……色々謎なことが多いんだけど、コレを先に聞こうかしらね。
『レベル』ってなに?」
「はい?」
ブリュネさんからの質問に、僕はポカンとしてしまう。
え、スキルにレベルがあるってことも、知らなかったりする?
それから、ブリュネさんとの話し合いとなった。
僕とレイはここではない、遠くから旅をしてきたこと。 そこではスキルを買うという行為がなかったこと。
元々持っている才能がスキルとなると教えられたこと、などを語った。
「実際、僕もこのレイもスキルを持っていますが。
元々持っていてレベルが高いのもあれば、最近身についてレベルが低いのもあります」
僕の料理スキルはだんだんとレベルが上がっているし。
レイは道々草を毟っているうちに、採取のスキルを覚えたんだよね。
ちなみに、僕たちのステータスはこんな感じだ。
名 前 戸次明久
性 別 男性
年 齢 20歳
職 業 異世界人
レベル 6
スキル 全属性魔術レベルMax 鑑定レベルMax 探索レベルMax 精神攻撃耐性レベルMax 料理レベル9
名 前 レイ
性 別 男性
年 齢 3歳(精神年齢0歳)
職 業 生体兵器No.03
レベル 12
スキル 鬼神レベルMax 気配察知レベルMax 採取レベル2
※ 昔、ヤンチャが過ぎたので初期化の上、機能停止させられていた個体。情緒が育ち始めています、もっと愛情を注ぎましょう。
レイの注意事項が微妙に変わっているけど、これは良い傾向だということだろう。





