26話 フワフワパンケーキ
メニューが決まれば、手際よくやっていこう。
僕はかまどを二つ作り、その一つでイビルボアの肉を焼いている間に、フワフワパンケーキ作りに取り掛かる。
フワフワパンケーキの材料は、ライ麦粉と卵にミルク、バター、砂糖の代わりのハチミツだ。
本当は小麦粉の方がフワフワになるんだろうけど、ないものは仕方がない。
ライ麦粉も独特の風味が美味しいしね。
まず卵を卵黄と卵白に分けて、卵黄にミルク、バターをボールに入れて混ぜ、さらにライ麦粉を入れて混ぜ。
次に卵白とハチミツを混ぜつつ料理スキルで攪拌して、ピンと角が立つメレンゲを作る。
ふくらし粉を使えば楽なんだろうが、僕の母さんは極力ふくらし粉の類は使わないタイプだったので、我が家でパンケーキと言えばコレだった。
そしてメレンゲ作りに駆り出されたんだよね。
「うーん、何度やってもこの『攪拌』スキルの心地よさは最高だな」
労力をかけずにメレンゲが作れるなんて、まさに魔法の賜物だ。
ハンドミキサーだって、多少の労力を使うんだから。
スキルへの感動はそれくらいにして、このメレンゲを混ぜた生地の入ったボールに加え、さっくりと合わせる。
そしてあとは、この生地を焼いてみよう!
オラの実油をフライパンに広げたら、弱火にするため竈の火から離して熱する。
そして油がパチパチと音を立ててきたところに、生地をそっと流し込む。
ジュワァァ……
熱された生地から甘い香りが漂い、ゆっくりと膨らんでくる。
そのフワフワパンケーキのいい匂いとふんわり感に釣られたようで、いつの間にかレイが竈に近付いていた。
「レイ、危ないからもうちょっと離れていような」
そう声を掛けたら、一歩だけ下がったレイの足元では、シロがふんふんと鼻を鳴らして、口を半開きにしている。
まあこの子もどこから連れてこられたのか知らないが、フライサーペントにモグモグされている間は、当然食事なんてできなかったはずで。
きっと空腹なのだろう。
雑食だっていう情報だから、このパンケーキも食べれるだろうか。
「お前の分も作ってやるから、もうちょっと待ってな」
そういえばこうして見ると、レイも白い髪の毛なので、白×白で一緒にいると目立つ。
それに美幼児と子犬という組み合わせは、卑怯なくらいに可愛い。
……これは街に付いたら、変態に要注意だな。
しかし、このまま一人と一匹を横に張り付けて作業も、やり辛いし危ないだろう。
「レイ、早く食べたいならお手伝いしてくれるかい?
野菜をこの器にいっぱい入るくらいに、千切ってくれると助かるんだけど」
というわけでお手伝いを提案して、お手本として野菜を手で千切ってみせた。
レイは「早く食べたいなら」というセリフに反応したようだ。
こっくりと頷いたので、手を洗ってあげると野菜と器の並ぶ前にしゃがみ込み、後は黙々と野菜を千切りだした。
その小さな手から零れ落ちた野菜のかけらは、シロがつまみ食いしている。
そんなことをしている間にも、ボリュームのあるフワフワパンケーキが焼きあがった。
焼きの作業をあと二回繰り返し、全員分のパンケーキが揃う。
その頃にはポークステーキもいい感じに焼きあがっていた。
レイ作の千切った野菜サラダも出来上がっており。
これらとピクルス、タイム茶にアポルジュースを用意すれば、夕食の完成だ。
「「いただきます」」
「アウン!」
二人と一匹で食事の挨拶をしたら、早速食べることにする。
「……!」
レイはフワフワパンケーキにフォークを刺した瞬間、目を真ん丸にした。
ふふっ、やっぱりそんな反応になるよな。
そしてパンケーキのかけらを口にほおばると、へにゃっと頬が緩む。その顔は、どんな「美味しい」って言葉よりもリアルだよ、レイ。
シロもガツガツと食べ始め、口の周りをベッタベタに汚している。
シロ的にはポークステーキが美味しいようだが、フワフワパンケーキを食べると不思議そうな顔をしていた。
きっと、雲を食べているような気持になるんだろうな。
おっと、他人の事ばかり眺めていないで、僕の食べよう。
「うん、やっぱりフワフワは正義だな」
黒パンに慣れると、余計にフワフワの幸せ感が増すなぁ。
これは特別な日のメニューにしたら、食事にメリハリがつくかも。
それにこのレイの気に入りようだから、他のフワフワメニューも思い出しておこうかな。
誕生日にケーキを用意してあげたいし。
こうして大満足の夕食を終えたら、すぐにテントに入り、二人と一匹でギュッとくっついて寝た。
僕の腕の中で、レイがシロを小さな手で抱きしめて寝ている。
いい夢を見れるといいね、レイ。





