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19話 本日は休日なり

13話を飛ばしていたことに今更ながら気付いて、割り込み投稿させていただきました。

なんか変だな、と思っていた皆様、これで話がつながるはずです!

リンク村に滞在して、本日四日目の朝。

 宿屋の滞在延長しました。

 僕たちが朝食を食べに食堂へ降りた際、最近必ず聞く声がある。


「レーイーちゃーん! おはよう!」


この声の主は、女将さんの十歳になる娘さんのベルちゃんだ。

 赤茶色のくせ毛をツインテールにした元気な子で、彼女がしきりにレイを構ってくるのである。

 たぶんレイのことを弟みたいに思えるんだろう。

 今朝も、はじける笑顔でレイに駆け寄ってくるんだけど。


「……」


レイは無口無表情でガン無視。

 今のところベルちゃんは全敗中だ。

 レイにとって、知らない人はとりあえず「敵」というカテゴリーになるみたいなんだよね。

 生体兵器としての性質なのか、はたまたレイ自身の性格なのかは分からないが。

 けど、だったらどうして僕には最初からそれなりに懐いたのかと疑問が湧くけど。

 そこはあのコンピューターがちゃんと保護者情報をインプットしていたんだろう。

 あれは、最初からレイを押し付ける気満々だったとしか思えないし。

 でもレイ、ちょっとはベルちゃんに返事を返してあげよう?

 女の子には優しくした方がいいんだから。


「ごめんねベルちゃん、無口な子で」


僕がレイの代わりに謝ると、ベルちゃんは片手を上げ首を横に振る。


「いいのよ、オトコはクールな方が格好いいから!」


なんともめげないおませなベルちゃんであった。


 こんな風に朝を過ごしているのだが、今日はいつもよりも比較的まったりと過ごしている。

 何故なら、昨日で森の大木を運搬し終えたからだ。

 いやぁ、いい小遣い稼ぎになったなぁ。

 おかげでテーブルとイスが買えちゃったよ。

 でもこれは元はと言えば、僕の魔術の失敗が原因なんだよね。

 それでお金を貰う行為がいささか後ろめたいきがしたけれど、これは運搬料だと割り切った。

 ついでに森で狩った魔物も雑貨屋で買い取ってくれた。

 狩人に頼んで皮を剥いでもらったら、食肉分は村人に売るんだそうだ。

 イビルボアが高級食肉だって鑑定に出てたから、一頭分だけ取り置いてもらった。

 すると貰った肉は見た目イノシシ肉というよりも、高級黒豚肉っぽい。

 これは美味しそうだ。

 ポークステーキもトンカツも好きなんだよね。

 もうちょっと狩っておいて、鞄に入れておいてもいいかも。

 うーん、となると解体スキルが欲しくなる。

 どこかで教わろうかな?

 それはともかくとして。

 今日明日はのんびりと過ごしてから、そろそろ旅立とうかと思っている。

 この村は居心地がいいんだけど、だからこそズルズルと滞在したら旅立てない気がして。

 次の目的地として、とりあえずニケロの街を考えていた。

 というわけで、朝食の後はレイと部屋でのんびりタイムだ。

 ちょうど木工工房で、積み木セットをもらったんだよね。

 レイが暇な時に遊ぶのにどうかって。

 でもこれがまた、レイの性格にストライクしたみたいで。

 黙々と積み木を組み立てては崩してを繰り返し、だんだんと大作にチャレンジしていっている。

 レイが集中している間、僕は読書だ。

 雑貨屋には本も置いてあって、その中でも埃をかぶっていた本の題目が気になったんだよね。

 その名も「スキルとは」だ。

 でも雑貨屋の店主さんから「そんな役に立たねぇ本を買ってどうする」って言われたりして。

 え、でもスキルってこんなに便利だし、実際役に立ってるんだけど。

 そんな風に不思議に思いつつも買って帰ったんだけど。

 あのコンピューターに言語の調整をしてもらったおかげで、ちゃんと読み書きもできるみたいでホッとしている。

 でもこの本は古い言い回しが使われているようで、読みにくくてまだ数ページしか進んでいなかったりする。

 こうしてまったりと午前中を過ごしていたのだが。


「……あ、そろそろ時間か」


僕は時計を見て本を手放す。

 昼食にはちょっと早いが、やりたい事があるので早めに降りよう。


「レイ、ちょっと早めに食堂に行こうか」


そう声をかけつつレイの方を見たら、なんかすごいタワーを作っていた。

 レイの座高を軽く超えていて、こちらを見る顔が無表情ながらもちょっと自慢気だったりする。

 しかし作業を中断するとなると、豪快にガッシャーンと崩す。

 ……おう、自分の作品に未練はないんだね。

 レイと一緒に積み木を全部木箱に仕舞ってから食堂に向かうと、まだ時間が早いため客はいなかった。

 厨房を覗くと、旦那さんが大きな鍋をかき混ぜている。


「あの、すみません」


「……なんだ?」


僕がカウンターから声をかけると、旦那さんが鍋から顔をあげてこちらを見る。


「この子の分のパンを、ちょっと工夫させてもらいたいんですけど」


「そりゃ構わんが。

 言ってくれりゃあこっちでやるぞ?

 パン粥でいいのか?」


僕の申し出に旦那さんがそう告げてくるのに、僕は笑みを浮かべつつ返す。


「いえ、ちょっと別のを自分で作りたいと思いまして」


これに旦那さんが気を悪くするかと心配したが、案外サラッとオーケーしてくれた。


「いいぞ、その子の好みを知っているのは兄ちゃんだろうしな。

 見たところこの辺りのヤツじゃなさそうだし、俺もよその土地の料理に興味がある」


僕もまだそんなにレイの好みを知っているわけじゃないんだけど。

 ともあれ、旦那さんからのゴーサインが出た。

 というわけで作ってみよう!

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