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17話 リンク村での朝

異世界三日目の朝です。

 やっぱりちゃんとした布団で寝ると、寝起きの気分がいいよね。

 そして今朝も、目を開けたらレイのどアップ顔があった。

 僕の寝顔って、なんか面白いかな?


「おはようレイ、起きたら顔を洗おうか」


とりあえずレイにそう声をかける。

 昨日は野宿だったからクリーンの魔術で済ませちゃったけど、ちゃんとやれる時はやらないとね。

 普通なら井戸まで水を貰いに行くんだろうけど、僕は部屋にある桶に魔術で水を溜める。

 うーん、便利だな魔術。

 でも多分本来の魔術はこういう使い方じゃないんだろうなとは、なんとなく分かっているとも。

 所謂RPGの魔法使い職のように、大規模戦闘でこそ活躍するのが魔術なんだろう。

 でも、生活が便利になるなら、それに越したことは無いよね。

 そんなジレンマは置いておいて、レイにも顔を洗わせたところで、朝食を食べに一階の食堂へ向かう。

 この「森のそよ風亭」は村の食堂も兼ねているらしく、泊り客は少なくても食堂はそこそこ繁盛している。

 料理を作っているのは、女将さんの旦那さんらしい。

 昨日の夕食もここで食べたんだけど、森の恵みをふんだんに使っている料理は美味しかった。

 旦那さんの料理の腕は評判のようで、それ目当てで街道を通る際にリンク村に滞在していく旅人もいるのだとか。

 これは異世界生活初っ端から、アタリを引いたかな。

 やっとレイにまともな食事というものを味合わせてあげられて、ホッとしたりもしている。

 しかし、僕には不満な点が一つある。

 それは、やっぱりこのあたりでの主食が黒パンだったことだ。

 黒パンだって食べ方によっては味わいあるパンなんだけど。

 でも白パンに慣れた日本人の口には、どうしても堅いんだよねぇ。

 黒パンの材料はライ麦。

 このあたりは寒冷地なため小麦が育ちにくく、輸入品のために高価らしい。

 だからパンと言えば黒パンなのだそうだ。

 お土地柄じゃあしょうがないよね。

 そんなことをつらつらと考えつつ食堂へ行くと、そこにはガイルさんもいた。

 村に宿屋はここしかないんだから、ガイルさんだって必然的に宿泊先はここになる。

 そして旦那さんの料理目当ての旅人の一人だった。


「おうアキヒサにチビちゃん、おはようさん」


「おはようございます、ガイルさん」


食堂のカウンターに座るガイルさんの、隣に僕とレイも並んで座る。

 けどレイにはちょっと椅子が合わなくて、クッションを足してもらう。

 そうなると僕と目線が近くなったことが気になるらしく、チラチラ見てくるのがちょっと可愛い。


「聞いたぜ、森の木材運びを引き受けたって?」


座った僕らに、ガイルさんが早速その話を振ってくる。

 さすがに小さな村だから、話が広まるのも早いよね。


「ええ、僕なら楽に運べますし。稼ぎにもなりますから」


「ハハッ、確かに!

 アレにゃあそうした使い道があるんだなぁ」


ガイルさんがマジックバックとは言わずに話す。

 このやり取りを、ちょうど配膳で近くにいた女将さんが聞きつけたらしく。


「おや、アンタが仕事で出るなら、その子はどうするんだい?

 なんならウチで見ていようか?」


そんな提案をしてくれる。

 普通なら、ありがたい提案なんだろうけど。


「いえ、レイも一緒に連れて行きます。

 こう見えてしっかりした子ですから」


僕はニコリと笑顔でありつつもきっぱりと断る。

 それにレイは大事な戦力だし。

 だから置いて行かないから、そんな無表情でじぃーっと見ないの。


「でも、大丈夫かい?

 そんな小さな子に森を歩かせて」


しかしなおも心配する女将さんに、意外にも隣から援護が出た。


「女将さんよ、コイツらは元々森で拾ってきたんだから。

 それに一緒にこの村まで来る時も、特に愚図りはしなかったぜ?

 それどころか一丁前に薬草摘みなんざやっているんだから」


確かに、レイはスキルのおかげもあって普通の三歳児よりも体力があるし、途中でへばったりもしなかった。

 むしろ休憩を要したのは僕の方だったりしたのだ。

 ……もっと体力をつけようかな。


「そうなのかい?

 ガイルさんが言うなら、心配ないのかねぇ」


そう言って引き下がった女将さんは、旦那さんに呼ばれて厨房へと入っていく。

 その頃にはもう食べ終えていたガイルさんが、席を立つ。


「俺は今日はもうここを立つが、大抵ニケロの街で仕事をしている。

 来ることがあったら会えるかもな」


なるほど、ガイルさんはそのニケロの街ってところが本拠地なんだな。

 行く当てのない身だし、次に向かう先にしてもいいかな。

 でも、その前に。


「あの、そのニケロの街は、誰でも普通に入れるんですか?」


入国審査的なものがあったりするのだろうか?

 となると、パスポートみたいなものが必要だったりしたらどうしようか?

 そんな疑問をガイルにぶつけてみると。


「あん?

 お前さんだって旅人なら、どこかのギルドで登録くらいしているんじゃないのか?」


ガイルさんに不思議そうにそう言われてしまった。


「いえ、登録していないどころか、初耳でして」


「どっから来たんだよ、お前らは……」


正直に語る僕に、ガイルさんが呆れつつも教えてくれた話によると。

 大きな街には冒険者ギルド、商人ギルド、職人ギルドの三つはたいていあるらしく。

 そこで登録しておけば身分証を作ってもらえて、街から街への移動でのそうした審査がパスされるのだそうだ。

 それは登録しない手はないな。

 それにギルドって、まさにRPGみたいでテンションが上がるし。

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