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15話 色々売ってみよう

 というわけで、感激しつつもキラードッグを出した。

 時間が停まっているから倒したてホヤホヤです。


「こりゃ綺麗だな。

 毛皮に傷がない」


レイが殴って倒したからね、毛皮は無傷だ。

 これは解体費用を差し引いて買い取りしてもらえた。

 それでも傷がないことで高くなったらしい。

 こうなったらついでだ。


「あと、実は森の大木も持っているんですが」


道をふさいでいた木を鞄に入れてきたと説明すると、店主さんに呆れられた。


「そりゃあ、木工の工房に直接持っていった方がいいな。

 あそこの親方がそろそろ新しい木材を欲しがっていたはずだ」


なるほど、確かに。

 でもこのまま工房へはしごしていいものか。

 レイを休ませた方がいいのかも?


「レイ、もうちょっと歩けるか?

 無理なら先に宿屋に行って待っておく?」


レイがフルフル、と首を横に振った。

 一緒に行くようだ。


「なら、もうちょっと頑張ろうな」


というわけで、木工工房へ行こう!



雑貨屋の店主さんに教えてもらった工房は、村の外れの方にあった。

 こんな場所なのは、騒音でご近所さんに迷惑をかけないためかもしれない。

 僕が工房の看板がかかっている建物の前に立つと、中から作業音が聞こえてくる。

 少なくとも工房の誰かは中にいるようだ。


「あの~」


「なんでぇ!?

 注文の品はまだ出来てねぇぞ!」


工房のドアをちょとだけ開けて声をかけると、奥からダミ声が跳んできた。


「いえ、受け取りに来たんじゃなくてですね。

 ちょっとした相談を……」


「なんでぃ、新しい注文だったら、ちいっとばかし長く待ってもらわなきゃなんねぇぞ」


「いえ、そうでもなくて」


僕はレイをコートにくっつけたまま中に入って、ズバリと話をすることにした。

 工房の中でダミ声を飛ばしていたのは、小柄でずんぐりむっくりな体型のおじさんだった。

 どうやらこのおじさんが、雑貨屋の店主さんから聞いていたこの工房の親方さんのようだ。


「森の大木が通行の邪魔だったから、持ってきちゃったんですが。

 買い取ってもらえますかね?」


すると親方さんが、雑貨屋の店主と同じような呆れ顔をした。

 いや、非常識なのは重々承知なんですよ、こっちも。


「……大木って、具体的にどのくらいだ?」


「え、木を丸ごとですけど?」


親方の質問に答えただけなのに、意味が分からないという顔をされた。

 なので論より証拠ということで、僕は通された工房の裏に、鞄から森の大木を一本だけ出す。


 ズドォン!


 地響きと共に地面に落ちた大木に、きっとご近所さんは何事かと思ったことだろう。

 レイもちょっとびっくりしたのか、僕の後ろに隠れている。

 この一メートル上から落ちる仕様、どうにかならないものかなぁ?

 しかしそんな地響きもなんのその。

 親方さんはマジックバックから出された大木を、早速観察し始める。


「こりゃあまた、立派な木だなぁ」


うっとりとした口調の親方だが、これ一本で満足してもらっては困る。


「実は、まだ持っているんですけど。

 森で大木がバタバタ倒れてましたから。

 今その話をガイルさんが村長さんにしに行っているはずですが。

 危ないことはないだろうって言っていました」


「なに!?

  そりゃ早く拾いに行かんと、若い衆に呼び掛けにゃならんな!」


そのまま放置して腐らせるのはもったいない、と親方さんが言う。


「そして兄ちゃんは出せ、持っている分をありったけ出せ!」


親方さんに催促されたものの、僕もここで馬鹿正直に全部出すのはさすがにマズいとわかっているので、五本を積んでおいだ。


「ようし、買おう!

 ここまで運んだ手間賃も付けてやるぞ。

 なにせコレを人力で運べば大変だからな」


確かに、日本でも木を伐り出すのに傾斜を利用して滑らせたり、現地で小さく加工したりして軽くして運んだりと、色々工夫をされていた気がする。

 それが重機なんてものがない異世界なら、なおさら重労働だろう。

 そして結果、結構な買い取り金額になった。

 雑貨屋での買い取り額と合わせると、ちょっとした金持ちだ。

 こうしてお金が入ったので、早速買い物だ!

 工房でも販売をしているようで、品物が置いてある所を見に行く。

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