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14話 お金を得よう

「森はどうだったかい!?」


彼は勢い込んでガイルさんに尋ねる。


「ああ、村長に詳しく報告するが、簡単に言えばなんともなかったよ。

 ちょっと獣や魔獣は騒がしかったがな。

 ありゃあ妖精の悪戯だな」


「なんだ、妖精の悪戯かぁ」


ガイルさんの説明に、彼も納得したように頷いた。

 え、本当に妖精の悪戯の一言で済ませちゃうんだ?

 僕としては助かるけど、大丈夫それで?


「そっちは? 旅人かい?」


「どうも」


男から話を向けられ、僕はニコリと笑う。

 元社畜の必殺技「初対面の人にはとりあえず笑っておく」である。

 無用なトラブルを避ける処世術だ。

 そんな僕の傍らに無表情無口のレイがくっついていたら、効果は半減かもしれないが。


「おう、森の中で行き会ってな。

 この村を目指しているから一緒に来たんだ」


「へぇ、いらっしゃい。

 なにもないところだけど、ゆっくりしていきなよ」


「ありがとうございます」


フレンドリーな彼の様子だと、どうやら排他的な村ではないようだ。

 街道沿いなだけあり、余所者に慣れているんだろう。

 異世界での初滞在先としては、田舎過ぎず都会過ぎず、ちょうどいい環境なのではなかろうか。

 こうして、僕らは無事にリンク村に入れたわけだが。


「俺はまず村長に話をしに行かなきゃならんからな。

 宿屋はあっちの方にあるぞ」


さっきの青年と別れたら、ガイルさんにそう言われた。


「場所を教えてもらえれば十分です、ありがとうございます。

 ……あのですね、ついでに聞きたいんですけど」


宿屋よりも先に、僕にはやるべきことがある。

 そう、現金を手に入れねばならないのだ。

 こういうことをごまかしても仕方ないので、ガイルさんに正直にお金を作りたいと話す。


「なんだ、路銀が心もとないのか」


「そうなんです、長旅で使っちゃいまして……」


本当は元から現金の持ち合わせがないんだけどね。

 コンピューターめ、現金も入れておいてくれよ!

 ……いや、千年前の現金を持たされても、逆に処理に困ったかもしれない。

 どちらにしろ、どこかで素材を手に入れて売る必要があったということか。


「まあ、お前さんみたいな旅人はよくいるもんだしな。

 そんなヤツのために、雑貨屋のおっさんが買い取りをしてくれるぜ」


ともあれ、ガイルさんが買取してくれる店を教えてくれたので、早速行ってみることにする。

 言われた看板の店のドアを、僕は恐る恐る潜る。


「あのー」


「いらっしゃい」


すると奥のカウンターから、店主らしきおじさんの声がした。

 よかった、あんまり怖そうな人じゃない。


「すみません、こちらで買い取りをしてもらえると聞いてきたんですけど?」


「ああやってるよ、どんなものを持って来たんだ?」


僕の質問に、店主さんがカウンターから手招きする。

 どうやらあそこで買取査定をするようだ。


「レイ、店の中を見ていていいよ。

 ただし、壊さないようにね」


大人の話は退屈だろうと思ってそう言うと、しかしレイは僕のコートの裾をギュッと握り絞める。

 どうやら知らない相手を前に緊張しているようだ。

 ここは無理に引きはがす必要もないし、このままでいいか。


「えっと、まずは……」


カウンターの前でどれを売ろうかと考えて、取り出したのは薬草だ。

 薬草の売買ってRPGの基本って気がするしね。

 僕が鞄からドサッとカウンターの上に置いたものを、店主さんが一つ手に取ってまじまじと観察する。


「お、ちゃんと根っこから採ってるな。

 状態がいいから高く買い取るぞ」


やった、店主さんに褒められた。

 鑑定で根っこの方も薬効があるって出たからね、レイにも千切らないようにお願いしておいたんだよ。

 薬草以外にも、アレを出してみようか。

 持っていても仕方ないし。


「ついでに、森でキラードッグを退治したんですけど。

 解体とかできないんで、そのまま持ってきちゃったのがあるんです」


「そりゃあ豪気なこった。どこにあるんだ?」


どうやら買い取ってくれそうな雰囲気だ。

 あ、でも鞄から直接出していいのかな?

 ガイルさんから気を付けろって言われたんだっけ。

 でも、手ぶらでここまで来たのは村の人に見られているもんなぁ。


「実はマジックバックを持ってまして、内緒にしてくださいね?」


仕方なく、店主さんにヒソヒソ声で告げる。


「客の情報をペラペラ喋ったりしねぇよ。

 道理で薬草をたんまり出せたと思ったぜ」


すると店主さんがしかめっ面でそう言った。

 どうやら僕が心配したことで、プライドに障ったらしい。

 マジックバックは売れば一財産みたいだから、こっそりと盗っちゃおうとか考える人もいるだろうに。

 うーん、この店主さんって良い人だ。

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