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11話 異世界人と遭遇

革鎧にマント姿、腰に下げた剣。

 なんというか、これぞファンタジーの住人! と言いたくなる格好の男だった。

 ……これは、初の異世界人じゃないか!?

 いや、初めて会った「人」はレイだろうけど、レイは生体兵器ってカテゴリだし。

 なにより初期化されていて現地情報は持っていないから、あんまり異世界人との初遭遇感がない。


「お前さん方、昨日の夜ここにあったテント知らないか?」


テントって、僕らが寝ていたヤツのことだろうな。


「それなら、起きたら片付けちゃいましたけど」


別に嘘をつく理由はないが、相手が悪者である場合もあるのので、この男に鑑定をかけてみる。


名 前 ガイル・ウォルド(人族)

性 別 人族 男性

年 齢 28歳

職 業 冒険者

レベル 42

スキル 剣術レベル35 気配察知レベル17 釣りレベル3


おお、冒険者って職業があるのか。

 RPGっぽくてワクワクするな。

 そして悪人要素は見当たらない。

 レイの鑑定であんなに詳しく出て来たんだから、犯罪歴とか表示されそうなものだ。


「レイ、悪い人じゃなさそうだし、座りなよ。

 パンケーキを食べ終えてないだろう?」


僕がそう声をかけると、レイはこの人に興味を失くしたかのように睨むのを止めて、自分の皿のパンケーキ攻略に戻る。

 切り替えが早い三歳児だな。


「飯時だったみたいだな、騒がせてスマン。

 俺はガイルっていう名の冒険者だ」


「あ、はい。

 僕は戸次明久、アキヒサって言います。

 こっちはレイ」


相手が自己紹介をしてくれたので、こちらも自己紹介を返す。

 レイはちらりとガイルさんを見ただけで、絶賛モグモグ中だが。


「それで、なにか御用でしたか?」


「ちょいと聞きたいことがあってな。

 昨日のテントはお前らのだったのか?」


僕が話を促すと、ガイルさんがそう尋ねてきた。


「そうですけど。なにか問題が?」


質問に答えてからハッと気付く。

 もしかしてこのあたりは自然保護地区とかで、ここでキャンプとかしてはいけません的な決まりがあったのだろうか?

 だったら罰則もの?

 うわ、どうしよう! 知らなかったで済まされるのかな!?

 悪い方に思考が転がっていき、一人アワアワしだした僕に、ガイルさんが苦笑した。


「別にこの辺りでの寝泊りを咎めようってんじゃねぇんだ。

 旅人がどこで寝ようと自由だしな」


「あ、そうなんですか。

 僕はこの辺りのことに疎いので、一瞬心配になっちゃいまして」


僕の心配が杞憂だとガイルさんに言われて、ホッと胸を撫でおろす。

 そんな僕を見て、ガイルさんが眉を上げる。


「そうか、お前らは他所の土地からの旅人か。確かにこの辺りじゃあ見ない顔立ちだな」


「そうなんです」


余所どころか、世界を跨いだ旅人ですけど。

 そして僕の顔は川の水面に映った姿で確認したところ、コンピューターが「魂の記憶に基づいて造った」と言った通り、まんま生前の日本人顔だ。

 そうか、ここいらじゃあ日本人顔は珍しいのか。


「あ、そうだ。

 そんな所に立っていないでこっちで座りませんか?

 良ければパンケーキ食べます?」


このミールブロックパンケーキは、昼食やおやつのために余計に焼いておいたのだ。

 ここでガイルさんにあげても、後でまた焼けばいいんだし。


「そりゃ嬉しい誘いだが。

 実はここから先にって、あ? 通れるぞ?」


ガイルさんが一人コントのようなことをしながら、しきりに首を捻りながらこちらへ歩いてくる。


「昨日の夜はどうしてもここへ入れなくて、仕方ないからあきらめて離れた場所で野宿したんだがなぁ」


なるほど、昨夜のうちにガイルさんは僕らのテントを見つけて、近付こうとしたが結界に阻まれたと。

 どうやら結界はちゃんと仕事をしてくれたようだ。

 ガイルさんが寝ている僕らに無断で近付く行為を、悪意と判定したのかもしれない。

 でもガイルさんの様子だと、こういう結界ってひょっとして一般的な魔術じゃないのかな?

 だったら安易に情報を喋らない方がいいかも。


「あの、どうぞここへ」


僕はガイルさんの意識をごまかそうと、場所を詰めてスペースを開け、切り株の上に鞄から出した新しい皿を置いてパンケーキを盛る。

 鞄から出して見せた僕に、ガイルさんが「ほう」と呟く。


「お前、マジックバックを持っているのか。

 道理で旅人にしては荷物が少ないと思った」


「そうなんです、人に譲ってもらっちゃって」


譲ってもらったのは嘘ではない。

 人ではなくてコンピューターというだけだ。


「そりゃいい御仁と巡り合ったもんだ。

 けれどあんまりそういうのを、他人にホイホイ見せるもんじゃねぇぞ?

 悪い奴に目を付けられたくないだろう」


あれ? あのコンピューターが言っていたのと違うな。

 「よく使われている便利な品」ってことだったんだけど。


「僕はこういうのにも疎いんですけど、もしかして珍しいものなんですか?」


「ああ、マジックバックは遺跡やダンジョンで稀に見つかる物で、オークションに流れればバカ高い値が付く。

 話に聞くと、家一軒分程度の収納力があるみたいだな。

 便利だが、庶民には高嶺の花ってところだ」


マジですか!?

 やっぱり千年経てば世界のアレコレも変わっちゃうかぁ。

 だとすると、荷物に入っている気にならないような物も、案外超骨董品だったりするのか。

 色々気を付けよう。

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