プラスワン
「......確かここら辺.....おっ! 武器庫見つけた!」
なぜが人が少なくて助かった.....マジで少ないな~何なんだ?
「まぁいっか」
恐る恐る扉を開けると見るだけでも鋭さの分かる剣....斧....槍....盾....レプリカではなく、本物を見るのは初めてだった
「これか…? ハンマーはこれしかないからこれだよな」
腕一本分ぐらいの長さの黒塗りハンマー.....ハンマーにグリップがある珍しいハンマー
「よっしゃ後はこれを牢屋まで.....重!?」
20分後....
「マジで持って来たのか!?」
「ああ......重かった...はい、コレ」
表情は驚きを隠せないまま、牢屋の隙間からハンマーを手渡される
「まさか....またコイツを握れるとは......おい、退いてろ」
ハンマーを握った瞬間、手錠を軽く引きちぎりハンマーを構えだした
「はぁ!!」
ジンバッド・ギルの一撃は分厚い檻の出入り口を吹き飛ばした。 飛ばされた扉は形を変え、鉄の強度を疑ってしまう
「人間業じゃないな…」
「お前が言うか?」
「これで…クランに入ってくれるんだろ?」
「まぁ…約束だからな。 でもまさか…本当に出れるとは…」
よっしゃ!
「だが! 俺にも条件がある」
「条件?」
「クランには入るが、お前の命令を聞く訳じゃない。 基本的には好き勝手やらせてもらうぜ」
「…じゃあ、それで」
そんなやりとりの中、視界の端に巨体が見える.....怒りに燃えるカリアン大佐だ
「終わったか? その下らないやりとりは?」
「何だ....待っててくれたのか? まぁいい....好都合だ、殴りたい奴が自分から来てくれるんだからよ!.....下がってろコウスケ」
カリアン大佐の血管が浮き上がり、目を見開きこちらを睨む
「いいだろう! どの道コイツらは死刑囚、今ここで殺してくれる! やれ! 串刺しにしろ!」
「「「え!?」」」
驚くのも分かる.....お前はやらんのかい!って思う....
「どうした? 俺の命令が聞けないのか?....行け!!」
「.........ですがカリアン大佐、相手はあのジンバット....我々では太刀打ち出来ません....」
カリアン大佐は声のした方を向く
「今....発言したのはお前か?」
「え......?」
戸惑う兵士に裏拳を放ち、兵士は檻に叩きつけられる
「グハァ!!」
「「「中佐!」」」
「敵に立ち向かう勇気もない腰抜けは、政党軍で生きる価値もない! 死を覚悟で立ち向かえ! それが嫌な奴は俺が殺してやる!」
命の価値が中世以下だなこの軍隊....
「......っ! ジンバッドっがこっちに」
ジンバッド・ギル迷いなく駆け抜けると跳躍しハンマーを振りかざす.....狙いはもちろん
グチャッ!
「「「カリアン大佐!!」」」
ハンマーの一撃を食らってもまだ立っている.....大佐の名前は伊達じゃない
「......っぐ! 俺はこの強さで街を守ってきた! 俺より弱い奴は俺の命令を聞いて当然! それは守ってやってる市民も同じ事だ!」
「だったらテメェが来いよ....またお前の顔面にぶち込んでやるからよ」
「舐めるな罪人がぁ! 俺を誰だと思ってる! 俺はこの街の権化、巨兵のカリアンだ!」
カリアン大佐は武器を出し、振り回す......棒に鎖とその先端に大きな刺付き鉄球
「出た、カリアン大佐の巨大星球式槌矛」
「うぉりゃ!!」
カリアン大佐の一撃は避けられるも巨大星球式槌矛は地面を大きく砕いた
......っ! あんなの受けたらひとたまりもないな.....
「他の者は弓を持てっ! ジンバッドを近付かせるな、撃ちまくれ!」
刺付きの巨大な鉄球だが、それを振り回しているカリアンの巨体は鉄球を自由自在に操る…まるで鉄球から重さが消えたかのような動き…
だが鉄球が壁や地面に当たる度に鉄球の持つ『重さ』と『破壊力』を再確認される
「逃げるだけか、ジンバッド・ギル!」
「クッ…!」
攻め倦ねているジンバッド・ギルに追い打ちのように鉄球が襲い、立ち止まれば矢が降り注ぐ…そしてついにジンバッド・ギルの左足に矢が命中した
「───っ!」
「そこだ!」
突然訪れた好機にカリアンは笑みをこぼす。 それと同時に天高く投げられた星球式槌矛は光を遮ると影となってジンバッド・ギルを包み込んだ
ジンバッド・ギルの頭上に上がった星球式槌矛の鎖をカリアンは全力で引き下ろし、鉄球を真下へと叩きつけた
「『星落とし』!」
カリアンの叫びと共に落とされた一撃は今までの攻撃とは非にならない威力、その衝撃は地面を通してその場の全員が理解する。 コウスケはその次元の違う戦いを、ただ震えて見ているしかなかった
「ジ…ン…?」
星球式槌星によって生み出されたクレーター、それに誰もが注目する中、カリアンは違った…自ら生み出したクレーターよりも、目の前に居るジンバッド・ギルに視線が奪われていた
「あ…足を射貫かれてこの速さ…」
「待ってたぜ、その油断を!」
ジンバッド・ギルは檻を壊したときのようにハンマーを構え、カリアンの持つ鎖に足をかけた
「な......!」
「終わりだ、『殴打』!」
グチャッ!
「ぶっ!!」
鈍い音をさせながらハンマーは顔にめり込む......渾身の一撃が顔面に入り、カリアン大佐は後頭部から勢い良く地面に倒れ込んだ...
「.....................。」
顔中から血を流し大佐は動くことは無く、カリアンが倒された事実に一同が驚愕する
「カリアン大佐が.....やられた....」
「何て奴らだ!」
「大佐は倒した.....それでもまだ俺らに立ち向かう奴はいるか?」
「「「..........................。」」」
政党軍は互いに顔を見合わせ、次々と武器を捨てる..........そして心なしか安堵の表情だ
左足の矢を引き抜きながらコウスケの元へ戻り、震えるコウスケに終わったと告げる
「なぁ...何だよ今の一撃! なんか...こう....凄かったぞ!」
「ん? スキルだよ...お前も壁を通り抜ける時に使ってたろ?」
あ......『霊体化』とかってスキルだったんだ....へぇ~
「俺はまだ基本スキルしか使えないが、いつかはオリジナルスキルを手に入れて.....俺の腕を証明する!」
オリジナルスキル......そんなのもあるのか
「そういやお前は戦わなかったな」
「俺が戦力になるとでも?」
「ハッ…それもそうだな.........しっかりしろよ、クランマスター」
「分かってるって、ジンバッド・ギル」
「フルネームはやめろ.....」
「じゃあ....ジンで....」
「それならいいぞ」