異話 懺悔 後編
茱萸…グミ
木通…あけび
「よぅ、久しぶり」
あの人が居た。
ざんばらでボサボサな砂色の髪が、今日も目を隠していた。
四日ぶりで、何だか妙に胸が詰まって、僕は返事が出来なかった。
胸がぎゅっとする感じ。父上に会う時に、似ている感じ。
「やっぱお前かぁ。
薪集めしててくれたんだろ? ここに置いてあったから、多分そうだよなって。
礼を言わなきゃと思って、待ってた。ありがとうな」
「……いえ……暇潰しだし……。勝手にやってることだし……。
傷の具合は、どうですか」
「ん? そんなもんまで心配してくれてたりした?」
「い、いえ……なんとなく……」
近寄りがたくて、一歩引いたら、その人は黙った。
そして、もう一度「ありがとうな」と、口にした。
「痛みは随分引いた。お前のおかげ。ここ何日かきちんと休めたから。
もうそろそろ、一日歩けるくらいになるかなぁ。
ちょっと鈍っちまったから、あと数日は薪集めがてら、歩いて身体を慣らすけどな」
そう言われて、違う意味で胸がぎゅっとなった。
そうか……あと少しだけか……この人が、ここに居るのは。
「良かった……。
あ……でも……なんで、この時間に……ここに……?」
夕方手前の、中途半端な時間帯。
軽食の時間の後、集めて、隠しておいた薪を、ここに運んできたのだ。
「そりゃあ、貴族の生活なんて、どこも似たり寄ったりだろ。
朝食とって、勉強して、昼食とって、剣の鍛錬して、軽食とって、自由時間。そんな感じだろ? お前まだガキだし、剣の鍛錬は無いか」
「…………なんで……」
「そりゃ、傭兵だし。貴族に雇われたりもする」
ニヒヒと笑って、そう言った。そして、懐から木通を取り出す。
一つを僕に、差し出してくれた。
近寄れずにいると、立ち上がって、こっちにきて、僕の左手を握って、引っ張った。
ズキリとしたけれど、奥歯を食いしばって耐える。
きっと、右手を選ばなかったのだと思ったから。僕が痛いだろうと思って、気にしてくれたんだと思うから。
パッと手が離された。そして、そっと……背中に手が添えられる。
「見られねぇ方が良いんだよな。じゃあ、少し奥に行こう」
「?……??」
何故か強引に、僕の意見を聞かずにぐいぐいと背中を押された。
そのまま少し進んで、街道からは見えない、茂みの影に移動する。
すると、肩をつかんで、向きを変えられた。痛みに、つい息を飲む。
「……悪いな。
聞かないって言ったのにな……けど……我慢ならねぇわ。
どうした。お前、腕だけじゃないよな……肩もか……さっき足も、引きずってたよな……」
そう言われて、でも……何も、答えられなかった……。
どうもしなかったことになっているから。
四日前に父上に会ったから……次はもっと先。だから、それまでにはもう少し、おかしくない風に、なると思う。
「なんでもない……階段から、落ちてしまっただけだから……」
「顔や手だけ綺麗に怪我しないなんて、器用な落ち方だな……って。
そんなわけねぇだろ⁉︎
こっちは命のやり取り仕事にしてんだよ。どんな傷がどんな時につくかくらい、お見通し。
お前、誰にやられてる……使用人か。親の部下か。……違うんだな。じゃあ、腹違いの兄貴か」
泣きそうになってしまった。慌てて顔を伏せる。
「……兄貴だけじゃないな……お前がそんな風なのを、誰も何も言わねぇんなら……正妻も絡んでんだな。親父や、お前のお袋は知らねぇんだろ? ずっと、一人で黙ってんだよな」
違うと、首を振る。そうじゃない。僕がいけないことをするから、躾をされているだけだ。
僕は、貴族じゃなかったから。貴族らしいことが、できないから。間違ったことをするからそうされているだけだ。
「お前、自分は危ないって言ったよな……それ、こうしてたら、俺も巻き込まれるって、そういう意味だよな?」
声の調子が、どんどん怖くなっていく……低く、重たい声音に、僕は怯えた。
この人、なんで知ってるの? 僕が妾腹だって……兄上がいるって……なんで知ってるの?
どうしてこんなこと聞いてくるの? 僕は、どうすれば………っ。
混乱して、逃げようとした。
けれど逃げられなかった。押し退けようとしたけれど、びくともしなかった。
そのまま羽交い締めにされて、胸に押し付けられて、動けなくなって……!
「何されても、悲鳴、上げないんだな……そういう風に、躾けられてるんだよな……」
少しすえた、汗の匂いがした。
声が頭の上の方からした。気がついたら、頬があの人の服に押し付けられていて、僕はどうやら、抱きしめられていた。
膝立ちになったその人が、僕を全身で包み込んでいた。
これは……どうすれば良いのか、分からない……。両腕が頭や背中に回されていて、逃げられる箇所が無かった。細い人なのに、胸は筋肉でゴツゴツしてて、温かい。苦しくなるくらい、優しさに満ちていた。
「ああ……そうだったよな……。
あそこは、こんなことが日常だった……。
なんだ……俺、やっぱ結構、忘れてるわ……。いい場所じゃなかった。今の方が、ずっと自由だ……少なくとも、俺は俺のこと、自分で決められる……」
僕を抱きしめたまま、そんな風につぶやいた。
そして、そっと胸から離す。
「……逃げたいか?」
聞かれたことの意味が、分からなかった。
「方法はある。俺も、元々は……そっち側だったんだ。
まあ、辞めたくて辞めたんじゃなかったけど……食うのに困ったりもしてるけど……でも、自由だ。ただ黙って殴られとく必要は無い。お前が苦しいだけなら、俺が連れてってやる」
咄嗟に、首を振った。嫌だ。それはできない。
そんなことをしたら、この人がどんな目に合うか、分からない。それに……!
「ち、父上が、悲しまれる……。僕が居なくなったらきっと……父上は、仮面を取れない」
いつも忙しくて、ずっと張りつめた顔をしてて、疲れた様子の父上。
僕が居なくなったら、ずっとあのままだ。それはきっと、とても疲れる。
「お前……。お前が辛いの、気付いてもくれないような、親だぞ」
「お忙しい。自分のことも出来ないくらいお忙しいんだから、仕方ない。
僕は、大丈夫。まだ大丈夫」
「………………っ」
もう一度、胸に押し付けられた。
肩や腕が痛かったけれど、心地良かった。
暫くそうされていたけれど、ギュッと、力を入れたあと、離された。
「そっか……。もうちょっと、頑張れるか……」
その人は、そう言って笑ってくれた。
だから、僕も笑う。
大丈夫。痛いのはすぐに治る。
僕の所為で誰かが壊されるのは嫌だけど、僕が痛いだけなら、大丈夫。
「じゃあさ……俺がここにいる間は、こうやって、息抜きしようぜ。
自由時間くらい、自由にしていいだろ? ちゃんと見付からねぇ様、気を付ける。
こう見えて、もう七年傭兵やってるんだ。気配くらいは察知できるから、任せとけ」
それから、放り投げてた木通を拾って、二人で食べた。
その人は、傭兵仲間の面白い話をしてくれて、自分が貴族だった頃の出来事も話してくれた。
「もうちょっとしたら……八歳になったらさ、お前、学舎に行けよ。
お前、頭良さそうだから、絶対に入れる。あそこは楽しい。沢山のことが学べる。貴族以外の友人だってできる。絶対に、気に入る。長い休みには、またここに戻ってこれる」
「……貴方も、行ってたんですか……?」
「途中辞めになったけどな。
でも、今傭兵やってられんのは、あそこで学べたことが大きい。
身の回りのこと、一通り出来るようになってたから、身一つでも、なんとかなった」
そう言って、ニッと笑った。
この人が、そう言うのだから、きっと良いところなのだと思う。
だけど、ちょっと、想像できない。貴族以外の友人もできるなんて……どういうことだろう。
「お前はきっと、たくさん友人を作れる。出来ることも沢山増える。そうしたら、考えればいい。どうしたいか。
卒業する頃には、お前は、お前の兄貴より強くなれてる」
僕の頭に手を置いて、優しく撫でてくれた。
首に指が当たってくすぐったくて、心地よくて、自然と笑えた。
暗くなる前に、そろそろ帰りなと、その人は言ってくれた。
「じゃあな、また」
「はい……また」
最後じゃない約束は、くすぐったかった。そして、酷くドキドキした。
こんな約束をして大丈夫かな……この人を、危険な目に合わせないかな……そう思うと怖かったけれど、またと言ってくれたのが、とても嬉しくて、怖いのを飲み込んで我慢した。
またなんて、言わなければよかったのに……。
僕は、そんな約束をしてはいけなかったのに……。
その時の僕は、ただふわふわしたこの心地を手放し難くて、我儘を通した。
◇
翌日と、その次の日、その人は現れなかった。
薪も取りに来てなかった。
僕は不安で、勉強にも集中できず、ご飯も喉を通らなかった。
どうしよう…何か、あったのかもしれない……誰かに見られてたのかもしれない……あの人を、巻き込んでしまったのかもしれない……!
異母様や、兄上に確認しようか迷った。
けれど、万が一の場合もある。たまたま、風邪でも引いて、来れないだけかもしれない。
それに、異母様も、兄上も、いつもと変わった様子には見えなかった。だから不安で泣きそうだったけれど、我慢した。
自由時間が来て、急いでいつもの場所に向かった。今日も居なかったら、流石に何もなかったとは思えない。だって、あの人は「また」って、言った。そのままメバックに行くとは思えなかった。いつだって、些細なことだって、ありがとうって、わざわざ言うために、待ってたような律儀な人だから。
「よぅ。元気だったか」
その人は居た。初めて会った時の灰色の外套を纏って、ぺたんこの頭陀袋を肩に掛けて。
まるで、今帰ってきたというような格好で。
「……ど、どこに……」
「いやぁ、もうちょっと、近いと思ってたらさ、思いの外遠くて……。
身体を慣らすために、少し遠出して来たんだ。で、今やっと着いたとこ。
やばかったぁ、今日帰りつけなかったらどうしようかと思った」
なんでもない事みたいに、笑ってそう言った。
僕は、ホッとしたのと、怖かったのと、ぐちゃぐちゃの気分になってしまった。
勝手に涙が出て来て、しゃがみ込んでしまう。
いけない……泣いたらびっくりさせてしまう。僕が勝手に、心配してただけなのに……。
そんな僕の頭に、大きな手が乗せられた。そして、引っ張られる。
「心配させたのか……。悪かったな。
でもほら、足も無事。もう大丈夫そうだ」
地面に座り込んだその人が、僕をぎゅっと、抱きしめてくれた。
今日は、砂のような匂いがした。だけど、この前と同じように、温かい。
「長いこと、世話になったな……。俺、明日ここを発つことにした。
実はさ、仲間が待ってる筈なんだ。メバックの先、アギー領の街まで行く。
本当は、もうちょっとお前と、話してたいんだけどな……次の仕事があるんだ」
「……はい。無事だったなら、良いんです。
僕の方こそ……沢山、優しくしてくれて、ありがとう……。僕のこと、心配してくれて……。折角、誘ってくれたのに……ごめんなさい」
「いや……。あれは俺もちょっと……唐突すぎたなって。
けど、お前がその気になったなら、いつでも来いよ。歓迎する。
……憶えとけよ。『明けの明星』っていう、傭兵団だから」
そう言って、笑った。
名前も何も知らなかったのに、あえて名乗らないでいるのだと思っていたのに、教えてくれた……。びっくりしていると、優しい顔で微笑んでから、スッと立ち上がった。
そのまま何故か、僕を背中に庇う。
「……で、あんたが、フェルナン様か」
耳を疑った。
顔を上げると、にんまりと、とても楽しそうな笑顔の、兄上がいた。
何故か騎士や、衛兵を連れている……。全部で六人。
つけられてたんだ……。僕は、馬鹿だ。気付きもしないで、この人を、危険に晒してしまった!
「持ってはいけないと、望んではいけないと、あれほど言って聞かせてるのに……。なあ、レイシール……お前、また間違ったな?」
楽しそうに、歪んだ笑顔で兄上が言う。
怖くて、膝が崩れそうになった。だけど駄目だ。この人を巻き込んでしまったら、駄目だ。
目の前にあった手を引っ張った。
兄上を睨んでいたその人が、弾かれたように僕を見る。
「行って! 急いで‼︎
さようなら、旅の人。なんでもないから!」
兄上が動いた。
慌てて、体の位置を入れ替える。左側から頭に、火花が散ったような衝撃があったのは、その直後だった。
「てめぇ‼︎」
誰かに抱きとめられた。だけど、頭がぐらぐらして、チカチカして、よく分からない…。
なにかざわざわして、ぶつかるような音がして、急にふわりと、体が浮く感じがした。
「貴様……!俺に刃を向けて、ただで済むと思っているのか⁉︎」
「はっ、鞘に入れてやってんだろ。こいつの兄貴じゃなかったら、斬ってんだけどな」
うまく働かない頭で、身体に触れているのはなんだろうと、考えた。
僕は多分、何かにもたれ掛かっていると思う……。太ももの裏を抱えられていると思う……。
「余裕無いからな。これ以上やるってんなら、抜く。
こいつ抱えてたって、お前ら程度、相手にもならねぇよ。死にたいなら来い。
こちとら、戦場で斬ったり斬られたりしてんでね、場数が違うぜ」
いつもの優しい声じゃなく、ビリビリと腹の底に響くような、雄々しい声。
ぐっと、力がこもったと思ったら、金属音がした。
ヒイィ!と、誰かの声がする。
「馬鹿か? 後ろなら見えてねぇと思ってんの?
御愁傷様。でも殺る気あるってことだな。上等だ」
声に殺気が乗るって、こんな感じなのかなと、そんな風に思った。
「っぅるあああぁぁ‼︎」
怒声。衝撃。悲鳴。そのあと急に揺れだした。
走ってる……きっと僕を抱えたあの人がそうしてる。
頭に響いて、僕は呻いた。
「悪い。ちょっと待ってろ。距離あけねぇと、下ろすに、下ろせねぇし」
すぐ耳元で、声がする。
「馬鹿だなお前……なんで、庇うかな……。
こっちは、百戦錬磨の、傭兵だっ、つうのに……。ガキの、くせに、おかしいだろ」
賊を追え! と、悲鳴のような兄上の声がした。
ビクリと、体が強張る。
すると、「大丈夫だ」と、あやすみたいに、その人が言った。
「聞いてるか? 話、つけてきたぞ。
もうちょっとしたら、親父さんは、戻る。
お前のこと、もう、全部知ってる。よく、我慢したな」
息が切れてきてた。
僕を抱えて、足の矢傷だってある。なのに、走ってるからだ。
喋ったら、もっと苦しくなる。なのに……。
「こんだけ、騒げば、誤魔化せねぇ。お前の、頭も、きっと大痣になる、しな。
だから、直ぐに、手配、出来る筈」
ぐらりと揺れた。何かがぶつかるような衝撃。その後、金属音。
ぐっと、あの人が、呻いた気がした。
「しつけぇな! 寝てろ‼︎」
耳元で怒鳴られて、耳がキンとなる。
そしてまた、動き出す。
「学舎に、行け。友達を、つくれ。笑って、泣いて、怒鳴り合って、殴り合って、一生もんの、親友をつくれ。
人生ってのは、もっと、楽しいもんだ。
これから先は、もっと、ずっと、楽しいぞ」
ヒューヒューと、あの人の、喉の奥が鳴っている。すごく、苦しそう。
そして、どこかに横たえられたのが分かった。
温もりが離れて、頬が冷たい……。
「聞こえてねぇか……。いいよ。大丈夫。親父さんが、ちゃんとしてくれる。
俺は、ずらかるわ。きっと、親父さんが着く前に、口封じ、しようと、すんだろうし」
頬に何かが触れ、鉄の様な匂いが鼻についた。
「じゃあな、元気でな。
俺は大丈夫。戦場を渡り歩いてるってのは、伊達じゃない」
頭を撫でられた。
ぐらつく頭と、霞む視界に、目深に被った灰色の外套と、皮肉げな笑みを浮かべた口元が見えた。
「レイシール、忘れるな。『明けの明星』だ。いつか、会いに来い」
◇
目が覚めたら、部屋の寝台の上だった。
ずきん、ずきんと、頭が痛い。首も痛い。だけど、そんなことより、あの人が気になった。
やって来た使用人に、あの人はと訊ねた。
その使用人は、不機嫌を隠しもせず「賊は手打ちになりました」と告げた。
「うそ⁉︎」
「貴方は、拐かされた自覚がおありなのですか? 怪しい風体の者に、のこのこついて行くだなんて……」
「違うよ!あの人は、そんなのじゃない!」
「まだ気付いてらっしゃらないのですか? 兄上様が助けて下さらなかったら、どうなっていたとお思いですか」
そこで気付いた。
そういうことに、なっているのだと。
あの人を悪者にして、話がもう、決まってしまっているのだと。
「気が付かれたのでしたら、遺品の確認をと仰せつかっております。
ここにお持ちしますから、賊の持ち物に間違いないか、確認をお願い致します」
こちらの言葉など、聞く耳持たないとでも言う様に、その使用人は言い捨てて、部屋を出て行った。
遺品……遺品って、どういうこと?
あの人は、じゃあなって、言った。会いに来いって、言ったのに、どういうこと?
どくどくと、心臓が鳴って、痛かった。
寝台の上で、水の中にいる時みたいに息苦しいまま待っていたら、大きめの盆を持った使用人と、兄上が…………。楽しそうな、満面の笑顔の兄上が、居た。
「ご確認ください」
差し出された、盆の上に置いてあったのは、あの人の、小剣だった……。
「間違い無い様ですね。では、私どもは失礼致します」
もう、何も分からなかった。
じゃあなって、会いに来いって、言ったのに……。
「罰だよ」
部屋に残った、兄上が言う。
「持ってはいけないって、望んではいけないって、あれほど教えたのになぁ。
お前の所為で、そんな羽目になった。
傭兵風情が、一人で、何ができると言うんだ?
呆気なかったぞ。散々斬られて、血みどろになって、果てた。
お前の所為で死んだんだよ。ざまあみろ」
僕の所為だ……。
「そうだ。お前の所為だ」
僕が、甘えたからだ……。
「何度間違えば、憶えるんだ? あと何人、必要だ?
本当に、性悪だな。悪魔そのものだよ。これでいくつ、お前のためになくなったんだ?」
鉄の様な匂いがした……あれは血の匂い……殴られたような衝撃、呻き声……怪我をしたんだ。それで、それでそのあと、あのひとは、どうなってしまったの⁉︎
ぼくのせいだ、ぼくをかかえていたからだ。ぼくがおもくて、はやくはしれなかった。ぼくがじゃまで、かたてがつかえなかった。ぼくがあまえたせいで、あのひとは、ぼくをほうっておけなくなった!
かわいそうかわいそう、あなたがわからないばっかりに、りかいしないばっかりに、こんなことになるなんて。
ほんとうしょうわるねぇ。あくまそのものね。これでいくつ、あなたのためになくなったのかしら?
ごめんなさい……もう、まちがえません。
ごめんなさい、ぼくのせいでごめんなさい。
こうしなきゃいけなかった。はじめから、わかっていたのに。
ぼくはもう、なにもいりません。なにものぞみません。
あやつられるまで、うごかない。それが、ぼくがだれもきずつけない、たったひとつのせいかい。
ちゃんとやります。だから、どうか、もうまきこまないで。
ぼくはなにものぞまないから、もうだれも、こわさないで。
やっぱりセイバーン行けなかったですね…。
次の更新も日曜日を予定してます。
次こそ進みたい…。
あ、もう一話は余分かなと思いつつ…おまけ的なやつです。