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多難領主と椿の精  作者: 春紫苑
第十四章
396/515

かつての姿

 事業報告は、無事終えることができた。

 原稿があったし、発表自体は然程の手間もなかったのだけど、思いもよらぬ質問などが挟まれたりして、少々戸惑う場面もあった。

 まだ土嚢が何かという部分から、飲み込めていない方も多く、周知に至っていない現状をどうするか……。その辺りが今後の課題だろう。

 とはいえ、水害等が無く、その対策に頭を悩ませていない領地であれば、土を入れた袋の存在意義になど、興味が向かないのは当然なのかもしれない。

 ここはやはり、国軍や領地の騎士ら、兵の教育を進めていくしかないのかなと考えつつ顔を上げたら、クロードと目が合った。


「お疲れ様でした」


 にこりと微笑みそう言ってもらえると、ホッとする。


「クロードもお疲れ様。雨季の堤についての報告、挟んでくれてありがとう。予定してなかったのに……」

「いえ。今年は私がこの目で見たのですから。私が伝えるべきことだったのです」


 言葉を交わす俺たちに、そこら中から視線が向かってきているのを感じる。

 分かるけどね。

 クロードと俺のやりとりが気になって仕方がないんだってことは。

 会合の間も、クロードは常に俺を立ててくれていたし、極力口を挟まず、己が発言する際も、主導権は俺に委ねてくれていた。

 あくまでも俺が責任者であると、周りにそう振る舞ってくれていたのだ。


 公爵二家の血を引くクロード。しかも俺の配下となる前は、この王宮内で文官を務めていた身だ。当然知人も多く、優秀だと知られている。

 それゆえに、他の方々の反応が、建前の責任者を俺、本来の事業責任はクロードが担っているという考えになるのは、当然の流れだ。

 長や将の皆様は、任命式の後の会議でも、俺の振る舞いを見ているはずなんだけどな……。

 なかなか納得してもらえない……認めてもらえない現状が、分かってはいても、少々もどかしい。


「レイシール」


 そんな中、女性の声が俺を呼んだ。


「はい」


 場がしんと静まる。

 この場にいる唯一の女性。陛下が、俺を名指ししたからだ。


「細かい報告を聞こう。後で執務室へ来い」

「畏まりました」


 俺の直属の上司は、陛下であるから。これはごく普通のこと。

 そして、クロードは呼ばず、俺の名のみを呼んだことに、周りがまたざわめく。

 当たり前のこと。

 そう見えるよう、なんでもないことのように振る舞う。

 現状を受け入れてもらうには、そうするしかないから、そうする。

 とにかくこうしてひとつずつ、実績を積み重ねていくしかないのだ。


「では、手が空いたら知らせをやる。王宮内で待機しておれ」

「はい」


 退室する陛下を見送り、会議室の皆が頭を下げる。

 陛下がお姿を扉の向こう側へと消して、扉が閉ざされてから、我々も改めて動き出した。

 さて、オゼロ公爵様とはどの辺りで接触すべきか……。だけどダウィート殿は、ここにはいらっしゃっていない様子だし、まずは執務室に連絡を入れ、日時の調整かな……。

 そうする中、スッと横に影がさした。

 なんとはなしに視線をやって、アギー公爵様だったものだから、慌てて一礼したのだが、いや良いからと即座に頭を上げることを許される。


「レイシール殿、先日の書簡の件で、私も時間を頂きたいのだがね」


 書簡……会合への出立前に届くかどうかギリギリだと思っていたが、間に合ったか。


「はい」

「プローホルの下町を捜索させてほしいとな」

「はい。セイバーンの村を荒らした野盗の潜伏先が、アギーのプローホル周辺にあります、下町だとの情報を得たのです」


 先日の襲撃事件。捕まえた連中と、子供たちからも話を聞き、彼らがプローホルの外壁に張り付く下町区域の中に、根城を持っていたことを知った。

 まぁ……あれから何日も経つし、残っていた部下らも逃げてしまうなり、証拠を消すなりしていると思うが、少しでも何か手がかりが得られればと思っている。

 それと合わせて、マルが言っていたのだ。


「普段からあそこに野盗として潜り込んでいたというなら、本来はアギーに巣食う虫であったのでしょうね」


 と。

 それが、何者かの指示により、こちらに出張してきたと考えられるという。

 そういった連中がアギーに潜むことを、公爵様はご存知なのか。それも探りたかったのだ。


 けれど、これ以上はここで言えない。ここには、ジェスルに関わる者らも含まれているだろうから。


「詳しくお伝えしたいのですが、陛下の思し召しがございましたので……日を改めさせていただいてもよろしいでしょうか?」

「陛下の御用、その連絡が入るまでで構わんよ。私も早めに情報が欲しいのでね、我が執務室へ招待しようじゃないか」


 そう仰いつつ……アギー公爵様の瞳は俺を見ておらず、クロードに向いている。

 そのことに違和感を覚えたものの、公爵家の方が俺に遜ってるのだから、そりゃ疑いの目で見るよなと、深く取らなかった。


「そうそう、その下町の件でもうひとつあった。

 流民の保護と更生を担っていただけたこと、誠に有難い。セイバーンの取り組みが今後に繋がれば良いのだが……どうだね? そっちの方は」

「皆よくやっておりますよ。仕事があるならば働きたかったという、意欲のある者が多いですから。

 いくつか新たな事業と内職も立ち上げましたし、これの使用方を模索しつつ、今は販路を拡張していっているのですが、当たりは良いですね。

 雨季も明けましたし、また交易路計画の方も進めていくことになりますので、男手も新たに雇い入れたいと思っているのですが……」


 アギー公爵様と言葉を交わしつつ会議室を出た。

 本来ならば、大臣である公爵様らの退室を待ってから、俺たち長の立場の者……となる方が自然なのだけど、招待すると手招きされたら断れない。

 陛下の次は大貴族、アギー公爵様。最上位の方々と、最下位の俺が言葉を交わす。

 それに唖然と視線をやっている周りの方々を極力気にしないようにしつつ、俺はクロードを従え、公爵様の後に続いた。



 ◆



「いやいや実に面白い! まさか公爵家の血を配下に加えていようとはな!」

「……まぁ、色々ありまして……」


 アギーの執務室。

 入った途端公爵様は大笑いをはじめ、会議の最中ずっとを堪えていたのだとおっしゃった……。

 何がそんなに楽しかったのだろうな……。俺を立ててくれるクロードにたいして周りがいちいち慄いていたことだろうか……。

 そう思っていたのだけど、アギー公爵様の目を見て、この方が本来の意味で笑っていないことに気付いてしまった。


「クロード殿、如何かなセイバーンは。うちのクオンもいたく気に入っておったし、私も是非訪問したいと常々思っているのだがね」

「良い所です。民は情に厚く、仕事熱心な者ばかりで、私も仕事に張り合いがあります。

 面白いものにも、美味なものにも恵まれておりますし」


 ピリッと、空気が……どこか、引きつれたように感じるのは、きっと気のせいじゃない……。

 和やかに言葉を交わしているはずの二人の緊張が、伝わってくる……。


「色々聞いておったがなぁ。目にするとやはり衝撃が違う。

 公爵家の者が男爵家の者に傅くとは前代未聞。周りの狼狽えっぷりが可笑しくてたまらぬ。

 ヴァーリンがレイシール殿を取り込もうと画策しておるようだとか、オゼロも何かしら牽制しておるようだとか。噂で聞いて眉唾と笑っておった者らも、笑えぬ様子であるのが更に笑えた!

 ベイエルは今のところ静観しておるが、クロード殿はどちらの血も引くのだし、ある意味ベイエルも既に絡んでおると周りは見るよな」


 冗談じゃないですよ……。


「…………セイバーンのような田舎領地で公爵様方が陣地取りをするなど、有り得ませんよ。そこは本気で笑っておいてほしいのですが……」


 うんざりとそう答えた。

 成る程。皆さんがどうにも俺から一線を引いていると思っていたら……。公爵様方の影響もあったようだ。


 どうやら俺は、公爵様方の政治的な支配権争いに、いつの間にやら巻き込まれていたよう……。

 陛下の直属という立ち位置と、大量に抱え込んでいる秘匿権の旨味。確かに獲物としては比較的上等。ただ、脆すぎるくらいに立場に力が無い。

 だから、その後ろ盾となることで、俺を陣営に引き込もうとしている……ということか。


 とはいえ、公爵四家が取り合うほどの価値は、さすがに持ち合わせていないと思いますよ……。


 俺はそう考えたのだけど、アギー公爵様は違うようだ。瞳はクロードを捉えて離さない。


「せっかく先んじてアギーに抱え込んだというのに、よもやクロード殿を懐に送り込むか、ヴァーリンよ」


 どこか怒りすら滲ませて、クロードを問い詰める。


「いえ、そういう意図ではございません。

 私が個人的に、レイシール様に心酔し、お側に置いてくださいと懇願したのです。

 ですから、血の立場を持ち込むつもりはございません」

「よく言う。貴殿の血、そこいらに立っておるだけで充分ではないか。

 レイ殿、やはりうちの娘をひとり貰っておくか? アギーの血筋に連なってもらうくらいせねば、均衡を保ちづらくてしょうがない」


 敢えてレイ殿と、親しげに呼びだしたアギー公爵様が、舌舐めずりしているみたいに見えた……。これは、やばい……。

 冗談っぽく言ってるけど絶対冗談じゃないですよねそれ⁉︎


「ご冗談はおやめください。私はサヤ一筋だとお伝えしたではないですか」

「では配下はどうか?」


 勘弁してください!


 本心ではそう叫んでしましたかったけれど、そうしたところで納得してもらえないだろう……。

 洒落にもならない。

 クロードだけでも周りがこれなのに、アギーの方まで配下って……なんの地獄絵図だ!


 嫁も配下も、抱える傘下の家々からじゃなく、アギーの血をって考えているのが透けて見えるものだから、何考えてるんだこの人⁉︎ と、半ば混乱する頭で悲鳴を噛み殺す。


 勘弁してくれ……そう思ったけれど、それだけアギー公爵様が、今の状態を由々しきことと捉えているのだということを、ようやっと理解した。

 俺がクロードを受け入れた……。それがアギー公爵様にとって、相当大きな懸念事項だったようだ。

 しまったな……流石にそこまでとは考えてなかった……。

 これは早急に、俺がヴァーリンに組する気がないことを示さなければヤバい。


「そちらは人手不足と聞くぞ? 使い勝手の良い、血の地位の高い部下は有用であるのだろう?」


 ヴァーリンを受け入れたんだから、うちのも入れろよ、分かってるな? といった感じでアギー公爵様はおっしゃった。

 いや、だからですね……俺は別に、アギー傘下を抜けてヴァーリンに付くとか、そういうことを考えているわけじゃ、ないですから!

 けれど、ヴァーリンの事情や、クロードの立場。無かったことになっているあの事件……どこまでを言葉にして良いものか……っ。

 いや、これには触れずに話を逸らす方向でなにか、適当な言い訳は……。


「アギー様」


 しかし、俺が口を開く前に、クロードは自ら一歩、身を引いた。


「我らヴァーリンは、レイシール様の不利益となることは断じて致しません、血にかけて」


 クロードは、風の凪いだ水面を思わせる静かな口調で、アギー公爵様に語りかけた。


「私は、白く生まれた娘を持つ身です。

 王家と同じ呪いを背負う、儚き命であった我が娘は、生き存える可能性をレイシール様に頂いた。私がこの方にお仕えするのは、それが理由でございます。

 私の願いは、少しでも長く、娘と共にあること。

 娘と歩むため、少しでもあの子が、生きやすくなるよう、生まれて良かったと思えるよう、あの病に関わっていくために、それ以外の欲は捨てると誓い、ヴァーリンもそれを承知しました。

 ヴァーリンの名を捨てていないのは、この名がレイシール様の盾となる。この方を支え、ご恩に報いることができると、考えたからでございます。

 決して、アギーに対する他意はございませんし、四家の血の均衡を崩すつもりもございません。身内に手出しも、させません」

「ほう……」


 一気に喋ってから、沈痛な表情で、クロードはアギー公爵様に頭を下げた。


「ヴァーリンは、白く生まれた我が娘の存在を、ずっと隠して参りました。

 これは王家に対する裏切り……。アギー様がそうお考えになり、我々を警戒するのは至極当然。ご懸念はごもっともと、理解しております。

 ですが私にとって、この娘は白き娘ではないのです。私の娘。ただそれだけなのです。

 しかし、申し訳ないのですが、事情を説明しようにも、それをお伝えする権限が、私にはございません。

 どうしても納得できぬとおっしゃるならば、我が兄、ヴァーリン領主となりましたハロルドに、アギー様へ事情をお伝えする許可を得ます。

 ですからどうか、レイシール様をお責めになられますな。

 この方は、私たちの事情を汲み取り、慈悲を与えてくださっただけなのです」

「……クロード殿。まぁ随分と、都合の良いことをおっしゃるうえに……面変わりされましたな」


 アギー公爵様のそんな揶揄に、クロードは苦笑した。そうしてから、もう一度深く一礼し、視線を俺に寄越した。

 眉の下がった笑顔。俺に己を偽った……そのせいで迷惑をかけてしまったと考えているのだろう。


「現状で、私の伝えられることはこれで全てです。

 派閥外の私がここにいては色々と差し障りがございましょう。

 アギー様の元でなら、我が主も安全でしょうから、私は暫く外しております。どうかごゆるりとお話しください。

 ……近くにはおりますから、何かあればお呼びください」

「クロード……」

「大丈夫、何も心配はございませんよ。我が兄らも承知していることですから」


 それだけ言い置いて、クロードは失礼致しましたと、アギー公爵様の執務室を後にした。

 それを見送ると、部屋の隅に控えていた配下の方がひとり、クロードの後を追う。

 慌ててそれを止めようとしたのだけど、アギー公爵様に「あの血をどうこうできる者は、王家くらいのものと知っておろう?」と、阻まれた。

 知っていても……、あくまで俺の立場を慮って、席を外してくれたクロードを、酷く扱ってほしくないと、思ったのだ……。


「レイシール殿、ヴァーリンのクロード殿がどういった人物であるか、其方、まさか知らぬとは言うまいな?」


 よくあれを配下にしたなと、アギー公爵様は言外に言う。


「無論です」


 クロードは初めから、とても優しく温和で、涼風を纏ったような方だった。

 けれどこの王宮という魔窟で、ただ優しいだけの人がやっていけるはずがないことは、初めから、理解している。

 マルだって、断れなかったからとただクロード様を受け入れたりはしない。ちゃんと調べ、その上で受け入れると決めたのだ。


「……ですがクロードは、私に仕えたいと言ってきたその時からずっと……ずっと一貫して、私を立ててくれておりますよ。

 アギー公爵様。私は、己の目で見て、彼を手元に置くと判断したのです。断ることもできました。けれど、受け入れる方を選んだのです。それがお互いの利になると思った。私が己の意思で、そう判断したのです。

 ですから、もし万が一ということがあったとしても、それは私の目が見誤った。己が至らなかったというだけです」


 クロードには色々な事情があった。血族の中の災を退けるため、我が子を救い出すため、フェルドナレンの中で立場を強化していかなければならない理由があったのだ。

 クロードだけじゃなく、リカルド様だって、十年という時間をかけて戦っていた。そしてきっとハロルド様も……。


 ヴァーリンの中での力関係が絡むことだから、俺がこれを口にしてはいけない。

 なによりあの事件は、無かったことになっていて、陛下もそのように処理されたのだろう。

 だから、陛下がことの顛末をアギー公爵様に伝えていれば、アギー公爵様はこんな風にクロードを牽制しようとはしなかったはず。

 つまり陛下は、ヴァーリンを守る意思がおありなのだ……。


 陛下の、ヴァーリンへのお気持ちを、無にするわけにはいかない……。


「アギー公爵様。私はアギーの傘下を抜けるつもりは毛頭ありません。

 オゼロだろうが、ベイエルだろうが、どんな条件を出されようが、です。

 けれど役職として、公爵家の方々に関わることは必ず出てくる。私が秘匿権を持ち出す限り、それは必然のこと。

 ですからどうか……私を、信じていただけませんか……。

 任命式で、私が言葉としたことは、絶対に違えないと誓います。私の捧げられるものは全て、フェルドナレンに捧げると誓いますから」


 気高き血を持つ方々は、その傘下に集う者たちを守る義務がある。

 だからどうしても、お互いに牽制し合う。

 勢力を保つためには、均衡を崩さないこと。

 だがそうしつつも、お互いが抜きん出る隙を窺っている。

 そこに公爵様ら個人の意思は関係なく、公爵家の長となった方々は役割として、それを成さねばならないのだ。

 分かってる。それが血であり、(しがらみ)だ。

 けれど俺は、末端の男爵家の、成人前。この国の力関係から、もっとも遠い場所にいる身。

 俺の血は、公爵家の気高き血をどうこうできるようなものにはなり得ない。

 本来なら、クロードのことだって、目くじら立てるようなことじゃないはずだ。

 だって彼は、俺の元に来た。血の力から、最も遠い場所へ。


「彼の手綱は私が握っております。

 クロードが、フェルドナレンの均衡を崩すようなことには、致しません。

 アギー公爵様を煩わせるようなことには、致しませんから……」


 男爵家の小倅だからこそ取れる手段。というのが、きっとある。

 俺の下でなら、どんな血だって、意味をなさない。そうできるはず。


「どうか私を、信じてください」


 アギー公爵様の瞳を真っ直ぐ見据えて、そう言った。

 アギー公爵様も、俺を見返してきた。

 考えを読み取りにくい、複雑な思考の動き……。

 あまりに沢山のことを一度に考え、次から次へと処理していく、立場が上の方……責任を持つ方特有であり、その中でもかなり稀有な、早駆けのような情報処理。

 あぁ、この方はなるべくして公爵様となった人だと、理解できた。

 クジ引きだろうが、兵棋盤だろうが、運を天に任せて決めるのは、それも重要な要素だと考えられているから。

 きっとただクジを引くのじゃないのだろう。それまでに色々、準備はされている。

 アギーで領主候補となる方々は、争う必要など無いほどに、お互いの能力を見ておられるのだと思った。

 そうして、しばらくお互いを見定めた後……。


「…………レイシール殿が、我欲に走るなどという風には、私だって考えてはいないがね」


 溜息を吐き、アギー公爵様は矛を収めてくださった。


「だが其方は情に厚い分、脆い面がある。それにヴァーリンが付け込んでおるのだから、不安にもなろうというもの」

「私の未熟がアギー公爵様を煩わせたことは、大変申し訳なく思っております」

「いや……分かっておるならまぁ、よしとしよう……」


 だが……と、言葉が続き。


「アギーの血を置けとは言わんでおこう。

 しかし、目は置かせてもらって良いかな? セイバーンの激務、その手助けにもなろうし。

 其奴をたぶらかしてもらっても構わんよ。たぶらかせるならばな」


 あのクロード殿がああなるのだから、な。と、茶目っ気を出して片目を瞑る公爵様。


 …………いや、クロードははじめからああでしたよ……。

 だってもう、無理をする必要は、なくなったのだもの。


「畏まりました。人選は、アギー公爵様にお任せ致します」

「武官と文官、両方良いかな?」

「はい」


 監視の目が入る。それは仕方がないことだろう。


 後でマルに怒られるかもしれないな……。


 そう思いつつ、アギー公爵様の申し出を、俺は受け入れた。

今週もご覧いただきありがとうございます!

今週は、ほぼ本日分しか書けておらんのだよ……。い、色々が難しくてだね……込み入っちゃってるからね……。

というわけで、三話更新を目指しますが、もしかしたら進み具合的に二話で終わってしまうやも……。

極力頑張ります!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 緊張する場面が続きますね。 実に面白いです。 レイは自分の感情以外に周りを見られるようにならないと行けませんしね。 あと女心ももうちょっとですね?w [気になる点]  俺の直属の上司は、…
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