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多難領主と椿の精  作者: 春紫苑
第二章
32/515

夏服

「ハインさん……私、ここに残りたくありません。

 ギルさんの所が嫌なんじゃ、ないんですよ?

 私が、レイの為にできることがあるなら……側にいたい、それがしたいです」


 レイの呪いについて、一通り話し終わったのち、サヤは改めて、俺たちにそう言った。

 もう泣いてはいない。その代わりの様に、何か決意を胸に秘めている。そんな顔だ。

 サヤは見た目より余程、芯が強い。泣くことに意味はないと、悟ったのだと思う。

 泣いている暇があるなら、レイの為に何か一つでもしたいと、そう思ってくれたのだ。

 その顔は、普段のどこか、ふんわりした様子と違い、何か、凛々しく美しい。


「ならば、サヤをきちんと連れ帰る為に、対策を練らねばなりませんね。

 どちらにせよ、大店会議が終わるまではここに居るのですから、数日猶予があります。

 その間に考えを改めていただく様、努力しましょう」


 冷静な声音でハインがそう言い、やらなければいけないことを指折り、数えだす。


 ひとつ、マルと交渉し、河川敷の立案の代行させつつ、責任者を押し付ける。

 ひとつ、大店会議で資金を調達しつつ、土嚢の優良性を周知する。

 ひとつ、土嚢作成のための備品調達と、土留め作りのための人員手配。

 ひとつ、サヤの夏場における服装の対策。


「私?」


 こてんと、首をかしげるサヤ。先程の凛々しさが嘘の様に消え、やたら愛くるしい。

 なんだかなぁ……落差が激しくて妙に、目を惹く……。この可愛らしい顔と、先程の凛々しい顔。どちらがサヤらしいサヤなのか……と、考えてしまう。

 とはいえ、レイの邪魔をする気は無い。なので意識して、サヤから目を引き剥がした。


「まずは何をしたらいい」


 ハインにそう問う。と、何故かギッと、睨みつけられた。な、なんだよ……?


「寝る間を惜しんで働いてもらいます。容赦しません……。

 ギル、貴方はサヤが夏場でも快適に男装できる服を、早急に作ってください。

 それが無いと、レイシール様の気持ち以前に連れ帰れません」


 ハインの言葉に、俺は溜息を吐く。

 うん、まあ。それは重々分かっている。


「……分かってるけどな。これだけは理解しておいてくれ。

 サヤは肌の露出を増やすと性別がバレやすくなる。努力はするが、暑いもんは暑いぞ」


 せいぜい、長衣の袖を取ったり、細袴を短くしたりする程度のことしか出来ないはずだ。

 あとは生地に何を使うか……その辺の試行錯誤になると思うんだが……ハインは、俺の返答がお気に召さなかったらしい。俺を睨む目に、怒りが篭る。


「ほぉ、ことの発端は貴方だというのに、責任を取ることもしないのですか……。見上げた根性ですね。感服します」

「あのな……何で俺が発端なんだよ。努力はするって言っただろ。だが出来ることと出来ないことがある。肌の露出ができないサヤに、暑くない服なんて皆無だっつってんだよ」

「貴方はそれでも専門家ですか。貴方が考え無しに男装させるななどと、馬鹿なことを宣ったお陰で、レイシール様に引導が渡されたのですよ!」

「悪かったな! だがサヤに男装を続けさせて、それでぶっ倒れでもしてみろ、結局レイは責任感じて同じことになったろうよ!」


 あっという間に言い合いになってしまった。

 売り言葉に買い言葉で応酬してしまい歯止めが効かない。

 レイがいるときは、ヤツが何やかやと横槍を入れてくるのだが、今はそれを望むべくもない。

 そして、結局俺たちは、レイのことが心配で、多少イライラしている。

 そうであればどうなるかって、お互いに八つ当たりするのが常だ。こうなる。

 俺たちからすれば、これは一種の日常で、交流の一環でしかないのだが、サヤにはやはり、喧嘩に見えるのだと思う。

 オロオロと俺たちを見回し、ワドに視線をやり、ワドが微笑ましく見守るだけの姿勢であることに混乱をきたし、ガタリと長椅子から立ち上がった。

 止めに入ろうと一歩を踏み出すが、男が間合いの内に入ることが怖いサヤには、間に割って入って止めることもままならない。

 結果、声を振り絞り、こちらの興味を引くという作戦に出た様だ。


「あ、あ、あの、あのっ! わ、私も手伝いますから、落ち着いてください!

 えっと、その……あっ、あります、涼しくする方法! 一つ思いつきましたから!」


 なに⁉︎

 俺とハインの動きがピタリと止まった。


「……おや、言ってみるものですね。あるのですか」


 ほぉ。言ってみるものですね……だと?


「……お前、それ、いちゃもんつけてただけってことか? 殴るぞ?」

「かっ、描くものを、描くものを貸して貰えますかっ、言葉で説明しにくいので、描きますから!」


 また一触即発となった俺たちの会話に、サヤが大慌てで介入する。

 近づけないから遠巻きにして声を張り上げるのだから、なんだかおかしな感じだ。

 なんとなく毒気を抜かれてしまった。

 そんな俺たちのやり取りをよそに、ワドがいつの間にやら移動して、部屋の片隅にある衝立を片付けている。


「失礼致します。サヤ様、こちらの執務机をお使い下さい。

 紙と筆のみで宜しゅうございますか?」


 衝立は、作業用の執務机を隠しておくためのものだったので、出てきた机にサヤはそそくさと近付いていった。ワドにお礼を言って、席に着く。

 また俺たちが喧嘩を始めないうちにって考えてる顔だな……やたらとアワアワしながら木筆(もくひつ)を手に取ったのだが、力加減を間違ったのか、パキリと折った。ひいぃ⁉︎ と、血の気の下がった顔をするサヤに、俺は溜息を吐く。


「右の引き出し、替えはいくらでもあるから、落ち着け。

 しばらく休戦しといてやるから……」

「そうですね。先ずはサヤ、涼しくする方法というのを描いて下さい」


 俺とハインが一致した意見を述べたので、サヤは何度か深呼吸し、気持ちを落ち着けた。

 そして、木筆を墨壺に突っ込み、紙に視線を送る。


「えっと……私の世界にある服なんですけど……ホルターネックっていうデザインがあるんです。

 首に引っ掛けて、背中を大きく開ける服なんですけど……あっ、この前、ルーシーさんが着せて下さった、ドレスに近い形ですね」


 紙の上に、線を引き出す。

 描く……とは、文字通り何かを描くことだった様だ。

 それにしても……ホルターネック、デザイン、ドレス……という、謎の言葉が飛び出したな。

 何を言っているのかさっぱり分からない。


「サヤ、ドレスというのは、礼服のことですか? デザインというのは?」

「あっ、……す、すいません……はい、ドレスは女性用の礼服ですね。デザインは……草案? 意匠?」

「ああ、意匠のことなのか。じゃあ、ホルターなんとかというのは何だ?」

「えっと……それはこれから描きます。多分、見た方が早いので」


 サヤの右手が、墨壺と紙の上を行ったり来たりしながら、何かを描いていく。

 手馴れてるな……河川敷の図も相当だと思ったが……サヤはどうやら、手先が器用らしい。

 当たりをつけて、線を引いていく。それは簡略化された人の裸体図で、斜め前から見た図、斜め後ろから見た図を、描き表していた。そして裸体図を描き終えた後、更に線を加えていく。


「私の世界では、暑さを感じる一番の場所は背中の上半分と認識されてます。

 汗を掻くのもだいたいここが中心で、次は脇の下とかですよね。

 だから、背中や脇が大きく開けば涼しいと思うんです

 実際、腹掛けという、背中が大きく開く服があって、飛脚とか火消しとか……暑さと戦うような職種の方が、着てました」

「いや……それしたらお前、補整着丸見えだぞ」


 つい突っ込みを入れてしまった。

 サヤの描いた衣装は、肩や背中が大きく開いている。確かにルーシーが着せて、体調を崩した礼服に酷似しているな……大丈夫なのか? 違う部分は、首回り。 立ち襟の部分だ。

 襟はきちんと付いている……。…………ほぅ……初めて見る形だが、作れるな。

 成る程、これがホルターなんとかってやつか。


「はい、このままだと丸見えですから、これに上着を着るんですよ。

 布を重ねるから暑いのですし、この際見えない部分は犠牲にします。

 このホルターネックの短衣に上着を重ねれば、肩も背中も見えないでしょう?」


 そう言いつつ、サヤはホルターネックの短衣横に、上着を描く。

 襟無しの、礼服通りの首回りだ。だが、上着の丈としては少々長い。更に、肩の部分に何故か切れ込みというか、空間があった。


 従者や貴族という職業は、年がら年中上着を着用している。

 人目のある場所で袖をまくったり、上着を脱いだりということをしない。夏場でも、炎天下でも、上着を羽織っているのだ。

 当然暑い。更に従者は、主人より確実に動く。余計に暑い。結果、体調を崩す人間が続出するのだ。

 正直、従者という職種は、男装していなくても結構過酷なんだよな……。


「私の国……一千年ほど前の服に、水干とか、狩衣っていうのがあるんですが、袖はあるのに、縫い止めているのが背中の一部分だけなんです。面白いですよね。

 だから、肩の部分に風を通す構造を作れば、それなりに涼しいんじゃないかなって。

 背中を大きく開けて、上着を羽織り、上着の一部に風を通す仕掛けを付けるってことです。

 切れ込みは、あまり深いとだらんとしてしまいそうだから、上半分くらいですかね……。

 もしくは、袖や脇の一部にラインとして、メッシュの部分を作っても良いと思うんです」


 だんだん……サヤの言っていることの意味が分からなくなってきた……。ラインって何だ、メッシュって?

 サヤは集中してきたのか、顔を上げることなく、一心に描き込んでいる。

 言ってることの意味は分からないのだが、描いているものはとても分かり易かった。

 ふーん、つまり肩が一部出るのか……ある意味今年らしい意匠だな……。肩を出すのは女の流行りだが、男がしてはいけないなんて道理は無いわけだしな……。


「この線の部分がメッシュなのか? ラインってのは何だ」

「ラインとは線のことです。まっすぐここに、通っているでしょう?メッシュというのは、網目状の、隙間の多い布です。線状に、メッシュの部分を作るんです。

 問題は、肩に穴を開けたり、服の一部が透けたりする意匠が、受け入れてもらえるかどうか……ですけど……これ、許容範囲でしょうか……?」


 描き上がったようだ。

 出来上がったものを、おずおずと、サヤが差し出してくる。

 俺はそれを受け取って、じっくりと眺めた。

 無駄な線も多い、下図の状態だ。だが、言わんとすることは伝わっている。

 上手いな……。襟はそのまま、前身頃が襟から腰にかけて続いているのか。確かに女性の礼服に似ているから、応用すれば表現できるな。

 上着の丈が長めなのは、腕を動かしても背中が見えないようにということか。

 肩の切れ込みも、身頃に変化を付けず、袖の縫い付けのみ考えれば何とかなりそうだな。案外簡単に表現できる加工ばかりだ。肩の切れ込み部分は、下の短衣も袖が無い。だから素肌が見えてしまうわけだが、流行だと思えば別段、問題も感じない。このメッシュだかの方に至っては、透けているとはいえ素肌も出ないのだから更に問題無いだろう。


「うん! 良いんじゃないか?」


 結論として、それに至った。


「今年らしい。肩を出すこの意匠はありだな!

 上着の首元に留め金を付けておけば、上着がはだける心配も無い。

 サヤの場合、腰の細さを隠す必要もあるんだが……腰帯を上着で隠せばそれも解決するしな。

 上着の丈はもう少し長い方が見た目が整う気もするが……あー……だがそうすると、剣帯をしにくくなるか……」


 腕を上げた時のことを考えると、もう少し上着の長さが欲しいんだが……そうすると剣の柄に上着が掛かってしまって邪魔だ。かといって、上着の上に剣帯を巻くと動きにくくなりそうだしな……。

 俺がそう思案していてると、サヤがまた首をこてんと傾ける。そして暫く思案した後、別の紙にまた何かを描き出した。


「私、剣など持ちませんから、剣帯を巻いたりもしませんけど……必要なら、脇に、スリットを入れれば良いと思いますけど?スリットというのは、割れ目のことです。

 それに、上着の丈を色々変えても良いなら、剣帯を巻きやすい上着の形もありますよ」


 そう言いながら、サラサラと幾つもの上着を描き連ねていく。

 いとも簡単に、さっさと五つほど、描き上げてしまった……。

 どれもこれも、今までに見たことがない形状だ。


「剣帯を巻くなら、これや、これです。腰回りを隠す必要が無い場合は、こんな風にするのも可愛いですかね。あ、背中心にも割れ目を入れておけば、乗馬もしやすいと思います」


 上着を指差しつつ解説を始める。

 俺はだんだん、背中に冷や汗が伝う心地になってきていた。

 サヤは……素人だよな……? サヤの国の服を描き連ねているのだとしても……慣れ過ぎてやしないか?

 意匠を描けるものは限られる。服の構造自体を把握しておかねば、それを布や紙の上に起こすこともままならないからだ。描けるものと作れるものは違う。だがサヤの描くものは、どれもこれも再現できそうなものばかり。敢えて描いているとしか、思えねぇ……。


「上着はまあ、良いとしてだ。細袴はどうするんだ?

 丈を短くするとか、メッシュとやらを入れるとかするわけか?」


 とりあえず、話題を振ってみることにした。

 敢えて描いているなら、細袴に関しても、配慮された案を出すはずだ。

 サヤは、墨壺に木筆を戻し、あごに指を当ててしばし考え込む……。


「えっと、調節できるようにするのはどうでしょう」


 調節?細袴の何をどう調節するんだ……。


「少しゆったり目の細袴にして、裾の内側に、紐を通すための折り返しをつけるんです。

 普段は長靴の中ですから目立ちません。涼しくしたいときは、たくし上げて紐を括ります。

 水干の袴が同じ仕様なんですよね。

 あとは……ギルさんの言うように、長靴の中に裾をしまうのではなくて、外に出す仕様にするのはありですよね。

 私の世界では、キュロットとか、ガウチョとか……裾に向けて広がる袴があります。

 ああ、私の国の袴も合うかもしれません。ここのと少し形が違って、こんな風なんですけど……」


 またスラスラと描き出す。

 俺は頭を抱えたくなった。やっぱりこいつ、素人じゃない!

 袴の形状すら提案してきやがった! しかも形自体は単純なのだ。

 単純……言い換えれば、洗練されているとなる……。実用に即してるということだ。



「ワド、ちょっと来てくれ。これ、どう思う」


 俺はワドを呼んだ。俺だって生まれた瞬間からこの仕事に触れてきているわけだが、ワドは俺の倍以上の時間をそうして過ごしている。

 やってきたワドは、サヤの衣装をじっくりと見比べてから、やはりにこりと笑った。


「そうでございますね。正式な場ではともかく、日常や、外出時にはとても重宝しそうです。それにいたしましてもサヤ様は……服を作るということを、よくご存知でらっしゃいますね。

 再現できない部分はございません。素晴らしい出来映えです」


 ワドが認めた……。そうだよな……そんな感想になるよなこれは……なんせ、縫い合わせの場所すら書き記してある……サヤ……こいつは一体、なんなんだ……⁈


「サヤ……お前、元の世界では何してた?」

「何って……只の、学生です……」

「お前の世界の学舎は、服の作り方まで習うのか?」

「は、はい……それも多少習いますけど……これはその……クラブ活動で……」

「……クラブカツドウって、なんだ」


 少し、口調が厳しくなってしまった。

 サヤが描き上げた服の数々だが、正直、我が家の意匠師に引けをとらない……。

 下手をしたら、意匠師の描く図柄よりも分かり易く表現してあるのだ。なにせ図が立体に描かれている……。

 こいつは、何なんだ。クラブカツドウってのは、一体なんだ。

 少し思考に没頭したあと、サヤに視線を戻し、ギョッとした。

 サヤがまた真っ赤になっていた。

 なんなんだ……なんで赤くなる必要が……? 俺がまるで、羞恥を煽るようなことを聞いたみたいじゃないか……。

 ……いや、まさか……そんな質問してないよな…………?

 言葉の意味が分からないだけに、一瞬で背中が寒くなった。

 だってな、サヤの反応が何なのか、読めないのだ。意図せず危険な言葉を口にして体調を崩されたりしたら、レイに言い訳できねぇ……。


「えっと、クラブ活動というのは……やりたいことが同じ人たちで集まって、そのやりたいことをするという活動です。

 私の学校は、放課後、授業が一通り終わった後に、クラブに所属して活動するのが義務でしたから……必ずどこかに所属しなきゃいけなくて……。

 私はその…………ふ……服を作るクラブに入ってたんですっ!」


 そこまで言って、顔を両手で隠して机に突っ伏してしまった。……いや、ちょっと待てって、なんでそんな反応なんだ……。恥ずかしがるような内容なのか?


「だって恥ずかしいです!

 あのクラブ、服飾デザイン部とは名ばかりの、いわゆるおたくクラブで……ほとんどの活動は……こ、コスプレ衣装作りだったんです‼︎」


 …………謎の言葉が入り乱れ過ぎていて、一体何を言っているのかさっぱり分からない……。

 サヤは、机に突っ伏したままで、モゴモゴと説明を続ける。続けるが、やはり意味が分からなかった。


「祖母の影響で……大学は服飾系の学科をと思っていたんです。だから、勉強になるかなって、コスプレ衣装作りが活動内容だと知らずに入部してしまったんです!

 あっ、でも、すごく勉強にはなったんですよ? コスプレ衣装って、和や洋ごちゃ混ぜだし、再現不能なものなんかも多くて、これをどうやって作れば良いのかって、凄く考えるし、資料もたくさん調べるんです!

 あと、所属してる部員全員女の子でしたし、漫研と兼業の子も多くて、デザイン画の書き方がちょっと漫画寄りというか……でも分かり易いから良いと思ってっ。

 私はコスプレなんてしなかったので、もっぱら制作要員でした。

 だから、型紙から自分たちで作ってたし、服の構造はある程度知ることができました。でも……独学だし、結構色々誤魔化して作ってたりしていたし、本職のギルさんに見られるなんて……よく考えたら凄く、恥ずかしいですっ!」


 羞恥のあまり真っ赤になって身を捩り、恥じらうサヤを見ているこっちがなんか恥ずかしいんだが……。

 どうにも視線のやり場に困る反応だ……。


「まあ、あれだ。とりあえずお前が凄いんだということは、分かった」


 なんかもう、いちいち気にするのが馬鹿らしい気がしてきた……。

 土嚢やら河川敷やら、特殊なことを知ってるわ……武術の達人だわ、服飾の知識まで有してるわ……お前の世界って、一体なんなんだ。たかだか十六年の歳月で、いったいどれほどの知識と経験を詰め込んでるんだ……?


「サヤ、本当は、賢者か学者か何かなのでは?」


 とりあえず、ただ黙って状況を観察していたハインが、最後に一言だけそう聞いた。

 そうだよな……実はこいつ外見年齢以上の年齢をした賢者だって言われた方が納得できる。

 じっとりした目でサヤを見つめていると、サヤは半泣きになりつつ叫んだ。


「ごく一般的な、女子学生です!」

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