溺れた夢
「其方は人が良いのだろうな。
今までは、請われるままをこなしてきたのかもしれぬ。しかし、これより其方は模範とならねばならぬ立場となった。
下々の声に耳を傾けることはこれからも必要だが、それだけでは駄目だ。我々貴族は、彼らの先導者として、無軌道な船の舵を握らねばならない」
そう言ったエルピディオ様は、しかしその前に……と、深く息を吐く。
「其方の場合は、まずこの王都における庇護者が必要であろうな……」
「……? 庇護者であれば、父がおります」
そう返すと、そうじゃないのだと首を振る。
「セイバーン殿は地方領主。王都の、この独特の貴族社会に関しては、畑違いであろうよ。
基本的に、王都は上位貴族がひしめく場であるしな……。男爵家の者は極端なまでに少ない。それゆえ、他の男爵家出身者も自らのことで手一杯。其方に気を回す余裕は無かろう。
こういった場合は、本来縁のある上位貴族が庇護者たるべきなのだが……セイバーンはジェスルとの縁が切れたと聞く。そして今はアギーとの繋がりを得た様子だね」
確認してくるその言葉にこくりと頷く。
するとエルピディオ様は、それが問題なのだとおっしゃった。
「アギー殿はああいった方だ……人を育てるということには、あまり関心をお持ちでない」
自ら立てぬ者に興味が無いからなと、肩を竦める。
うんまぁ……と、いうより……人の裾に縋って進もうとする輩を篩にかけているというのが、俺の印象ではあったけど。
アギー公爵様は、人を育てることに興味が無いのではなく、育つ気の無い者を育てる気が無いだけだ。
だから、例えば俺が教えを請うなら、請う内容に関しては手助けしてくださると思う。
「アギー殿は野心家だ……。まだ自身の進む先を自ら目指しておられる。
まだ若いうちはそんなものだがね。自ら進むことを一番としているうちは、下々の成長は後回しになりがちなんだよ」
エルピディオ様からしたら、アギー公爵様も若者分類らしい。
じゃあ父上も若者分類かな……同じくらいの年齢だし。なんてどうでも良いことを考えていたら「やはり、分かっていない様子だね」と、声音を鋭くしたエルピディオ様。
そうして……。
「成人前の、まだ何も知らぬ身に役職を与え、こうして無理やり矢面に立たせたのは、陛下への反感を少しでも逸らす隠れ蓑として、其方を衆目に晒しているからだよ」
お前は生贄なのだ。と、そう言われた気がした。
その指摘に少々困惑してしまったのが、顔に出たのだと思う。エルピディオ様は不憫そうに眉を寄せる。
「確かに其方の業績は素晴らしい。
しかし、成人前の其方に、補佐も、盾も無しだ。その上で急造した役職に就けたのは、いざとなれば其方を切り捨てられる位置に置いたということだ。
そして、今のままでは遠からずそうなる。下位の男爵家、しかも成人前の身でしかない其方は、この王都で最も立場が弱い。
まだ貴族社会を正しく経験すらしておらぬ身にこの役職は、重すぎる」
それは、そうだろう。
………………俺が、何も知らずにいたのならば。
だが、俺に補佐が無いのは、俺を自由にさせるため。
いくら陛下の指示とはいえ、成人前の男爵家後継に仕えよと言われた者が、心からそれに従えるとは限らない。
だから、無駄な摩擦や足枷を与えるよりは、自ら使うものを探し出すよう、取り計らってくださっただけだ。
そもそも風除けとしても期待しているのだと、陛下は包み隠さず、俺におっしゃった。そしてそれを、俺は承知したのだ。
成る程。エルピディオ様は、王家の闇……王家の病発表に、俺が関わっていることを、耳にされていないのだな。
だから、俺がアギーの捨て駒として利用されようとしていると指摘し、警戒しろと言ってきているわけか。
それがなんとなく察せられたため、俺は当たり障りない言葉で場を逃れる算段を始めることにした。
俺は自分で選んでここにいる。別段エルピディオ様の心配するようなことはないのだけど、色々秘する必要がある事柄が絡むから、今は誤魔化しておくしかない。
「陛下をお支えするのは、我々貴族にとって当然のことです」
「無論だ。
陛下は女性の身で、これからのフェルドナレンを背負い立たねばならない。
けれど、それをお支えするのに、其方のような成人前を生け贄の如く扱う必要が、あるだろうか?」
「それも……私は承知して、お受けしたことですから」
「王家に請われ、男爵家の其方に否やなど言えようか?
それすら計算の内だと、何故思わぬ?」
しつこい……。
しかも、言ってることはまともだから、たちが悪い。周りに歩く者らだって、耳にするかもしれないというのに……。
「私はもう、お役目をいただきました」
「そうだ。もう逃れられぬ。だからせめて、ここで生きていく術を身につけるべきだと言っているのだよ」
「私は、王都にはおりません。後継ぎとしての務めもありますから……」
「生き馬の目を抜く政界において、距離と時間は最も重要だ。
なのに其方は此処を離れ、地方から任務を遂行するという。
そこが既に間違いだと思わないか? 其方から知るべきことを退けているという、この現状が」
何を言っても切り返されて困る……。
内心では、少々焦り始めていた。
今俺が演じている人物ならば、そこまで押されれば是と答えてしまう……。エルピディオ様は、それを狙っていると思えてならない。
断られることなど、元から想定していないとでもいうように攻めてくる。
「其方はもう少し、色々知るべきだ。貴族社会には、表も裏もある。其方が目にしてきたことが全てではないのだ。
アギーは確かに大きい。しかし、当然それだけではない。だから私は懸念しておるのだよ」
焦るが、焦りを表に出すわけにはいかない。どう返そうかと考えを巡らせていた俺に、エルピディオ様が手を伸ばした。
「私が、それを教えよう」
膝に触れる……直前。不意に「失礼」と、割り込む声。
「オゼロ殿、私にも彼とのお時間を頂けますか」
いつの間にか、目の前にヴァーリン公爵、ハロルド様と、リカルド様がいらっしゃっていた。
二人並ばれているのを見たのは初めてだ。もう仲違いしている演技は必要無くなったとは思うのだが、ちょっとドキドキしてしまう。
並ぶと本当に良く似ていると、改めて思った。
スッと引かれたエルピディオ様の手が、自身の膝に戻る。
「本日私は遅れてしまいましたから、この者とまだ挨拶一つ交わしていないのです」
「おお、そうであったな」
その言葉で慌てて席を立つ。そうだ、ヴァーリン公爵様にはまだ挨拶を済ませていない。
「大変失礼いたしました。セイバーン後継、レイシール・ハツェン・セイバーンと申します。この度、地方行政官長を賜りました。以後、よろしくお願い致します」
「ありがとう。昨年よりヴァーリン領主となったハロルド・ラーべ・ヴァーリンと申す。其方のことは弟よりよく耳にしていた」
「えっ⁉︎」
「とても面白い男だと。だから、本日を楽しみにしていた」
リカルド様がムスッとした表情で「何故またこのような所にいる。其方は建物の端に寄り付く習性でも持っておるのか」などと言う。
いえ、そういうわけじゃ……。
「なんでも良い。お前があの場に来ぬから探し回ってしまった。お陰で時間が取られたのだから、とにかく疾く、来い」
「は、はい。それはもう……ですがその……」
「オゼロ殿、もうこやつとの時間は充分取られたであろう?」
「若者はせっかちでいかんな。だが、ここはヴァーリン殿にお譲り致そう」
「ありがとうございます。実は下の弟を待たせていてね、リカルドはそれで急いているのだよ」
「……おふたりの、弟君ですか……?」
面識無いよな?
だけどとにかく急げと言われ、俺は慌ててエルピディオ様に離席を請うた。そしてそれは快く受け入れられる。
「また、折を見て話そう……」
「はい。ありがとうございました」
いえ、もう結構です。なんて言えないので、当たり障りなく答えておく。
持たされていた硝子の器も卓に戻し、一礼してから踵を返した。
ふぅ、助かった。色々な意味で。そんな風に思っていたら……。
「其方は阿呆か。クリスからの忠告は聞いたのであろうが」
「えっ⁉︎」
「まんまとオゼロに捕まり長話をしておったろう? クリスがヤキモキしておったわ」
あー……陛下も見てたんですね?
視線を上げると、薄絹越しに薄ぼんやりとした陛下のお姿。
つまり、陛下に助けて来いと言われ、このおふたりは俺の元に足を運んでくれたということなのだろう。
「ありがとう、ございます。ほんと色々、警戒が足りませんでした。申し訳ない……」
「あれは弁が立つ。中途半端に関わるな。
そもそも其方はあれを敵にするも同然なのだぞ? それは分かっておろう」
そうですね……。
秘匿権の価値を下げようとしている俺にとって、オゼロ公爵様は相容れない存在。必ず立ち向かわなければならない相手だ。
「易々と隙を見せるな。それと気軽に一人で出歩くな」
「そうはおっしゃいますが……俺、男爵家なんですよ。貴族出の部下、いないんですから、仕方ないじゃないですか」
一人で出歩くなと言われても、俺には連れ歩ける者がいない。
オブシズはもう名を捨てているから平民だし、父上は車椅子だから介添えが必要だ。そうなるとこうなるのだから仕方がない。
それに、アーシュがいるだけ奇跡的なことなんだよな。だって上位貴族の子爵家出みたいなのに、男爵家に仕えるだなんて……。
「まったく、何故其方は男爵家の者なのか……それが一番ややこしい事態を招いておるのだ」
「…………俺だって選んで男爵家に生まれたわけじゃないんですけどね……」
俺とリカルド様のそんなやりとりを聞いていたハロルド様。
「ふむ……やはり、そこが一番の問題か」
似て非なるお顔が優しく笑う。
「ならばやはり、あの者だな」
そうして「其方との縁を、ヴァーリンも望みたいしな」と、意味深な言葉……。
え、ちょっと待ってください。俺はサヤ一筋だって言いましたよ。リカルド様だってご存知のはずでしょう⁉︎
慌ててそう口を挟もうとしたのだけど、今は人目があるから黙っておくようにと、手振りで指示された。
公爵家の方に逆らえるわけがない……。が、妻だけは断固、断りますよ⁉︎
「大丈夫。そんな顔をしないでおくれ。
其方に新たな妻候補をヴァーリンから……と、いうことではないから」
そう言ったハロルド様は、とにかく行こうと、前を向いた。
◆
リカルド様、ハロルド様に連れられて歩くというのは、とても目立つ……。悪目立ちも甚だしい。
特にハロルド様が、親しげに俺に話し掛けてくるものだから、あいつなんなんだ? という視線が痛いほどだ。
それはそうだろう。だって男爵家の成人前が公爵家の領主と親しくする状況って、なんなの。俺だってそう思う。
任命式に出たとはいえ、まだ皆に周知が広がっているわけではないのだろうし、祝賀会には成人前も多く出席している。本来なら俺もその中で埋没するはずなのに、この状況じゃあ埋没しきれない……。
俺の特徴的な三つ編みを覚えていた者は、役職を賜っているのだから、そんなこともあるだろう……くらいに思えるだろうけれど……。いや、だからって無いよな、これは……。
俺が視線に居心地悪くしていると思ったのだろう。人が少ない時を見計らって、ハロルド様が自ら説明をしてくださった。
「王都は上下関係がはっきりとしている。
其方は成人前の身だし、ただでさえ立場が弱い。だから、我らと直に言葉を交わすことができるというだけで、それなりの保障になる。
戴冠式、任命式に出席していない者もここには沢山いるから、しっかりと見せておこうと思うんだ。居心地悪いだろうが、付き合っておくれ」
うわ、俺のためにこうしてくださっていたらしい。それは流石に恐れ多い……!
「いえ……私などにそこまでして頂いては申し訳が……」
「見返りを求められるのではと心配している?」
「い、いえっ、そんな……⁉︎」
さっきオゼロ公爵様にもあんな風にされた後だ。
あの時は駆け引きもあり、探りを入れるのに必死であまり意識していなかったのだけど、あの状況も周りに見られていたろう。
と、なると、たかだか男爵家の俺が、公爵家三家と懇意だって誤解される……それは流石に、不味いんじゃなかろうか。
それが心配になってしまったのだ。
けれど、俺のそんな心境など知らぬわとばかりにリカルド様が。
「アギーとオゼロだけと思われるなど、癪だ。ヴァーリンの痕跡もきっちり刻め」
容赦ない……。
しかし、そんなリカルド様にハロルド様は「それじゃ説明が不充分だろうに」と苦笑。
「オゼロの印象を薄めるためにも、我らと触れ合っておく方が良い。
後でベイエル殿にも紹介しよう。そうすれば、四家とも等しく其方に接したこととなるし、其方の立場を強化することにもなろう。どの家かが突出するという状況よりは、その方が幾分かマシだ。
陛下は、元よりそうするつもりでいらっしゃったと思うがね」
とのこと。
色々考えてくださっているのだな……。俺の賜った役職など、公爵家の方にそこまでしてもらうようなものでもないと思うのだが……。
「心配せずとも、この程度のことに対価など求めはしない。
其方は、ヴァーリンを救ってくれた。こんなことくらいでは、返しきれないと我らは思っている。
だから、そんな風に申し訳なくせずとも……其方はもっと、踏ん反り返っていて良いくらいだぞ」
「滅相もございません!」
「ふふ。そういう気質なのだと伺っている。だから、こちらで勝手に押し付けているのだ。其方は受け取っていれば良い。このくらいのことはさせてほしいと、私もリカも、思っているのだ」
そんな風に話すうちに、入場口まで戻って来ていた。
そのまま前を素通りして、隣の階段に向かう。上階に上がってすぐ、入り口前に護衛の立つ歓談室へと案内された。
流石の公爵家、武官も当然貴族なのだなと、どうでも良いことに感心したのだけど……。
部屋の中にいたのは、ただ一人。任命式で、ハロルド様かと勘違いした青年だった。
「兄上、時間が掛かりましたね」
「此奴が無駄に彷徨いておったので捕まえるのに難儀した。しかもオゼロに食われかけていたわ」
身内前だとリカルド様も茶目っ気が出るらしい……。
まぁ、洒落にならない程度に食われかけていた自覚があるので、俺は神妙に「申し訳ありませんでした」と言っておく。
それにしても……この方がお二人の弟君か……。三十歳くらい? もう少し下かな…………。
確かに柔和そうな雰囲気はハロルド様に似ている気がするけれど、色合いはどことなくリカルド様に近い。そんな風に考えていたら、視線が合った。なので、慌てて名乗ろうと、したのだけど……。
「クロードと申します。我が一族の救い手であられます、レイシール様にお会いできましたこと、光栄に思います」
俺に先んじて、胸に手を当て、礼を取るクロード様に、慄いた。
男爵家の成人前に、何をしてる⁉︎ しかも何それ、なんか変なこと言ってるよ⁉︎
「此奴はこれが性分だ。誰に対してもこの口調だから気にするな」
リカルド様にそう言われ、ハロルド様にも笑われた。いや、そこじゃないでしょ⁉︎
「口調以前に、言ってることとやってることがそもそもおかしいでしょう⁉︎」
「言ったろう? 其方は我々にとって恩人なのだよ。特にクロードは、娘を救ってもらった身だ」
「面識すら無いのにそんなわけないですよ⁉︎」
「いえ、貴方はその面識すら無い我が娘を見つけ出し、あまつさえ救ってくださったのですよ。
娘だけではなく、我が妻も……血の鎖から、解き放ってくださったのです」
そう言ったクロード様が、俺の前に進み出て更に深く頭を下げる。
「ちょっ、勘違いです、人違いです!」
「適当な逃げ口上を吐くな。勘違いでも人違いでもないわ。
事の発端はセイバーンで、私を脅しつけ、脅迫まがいの交渉で真実を暴き出したのは其方だ」
リカルド様にそう言われ……可能性に思い至る。まさか⁉︎ だけど、それ以外に考えつかない……。
「…………白い、方、の?」
「はい。私の娘です。先月無事、七歳を迎えました。
私は、クロード・ベイエル・ヴァーリン。妻は子爵家の者ですが……血の、近しい者です。
私の一人目の息子は、やはり白く、生まれ落ちたその日のうちに、来世に旅立ちました……。二人目は、性別も分からぬうちに、流れてしまった……。
やっと授かった三人目の娘でしたが……父と、叔父の妄執により、取り上げられたも同然だったのです。
それを我が手に取り戻すことができました。あの色が、病だということや、その対処法すら授けてくださった。
恩人と言わずしてなんと言えば良いのでしょう……。私も妻も、貴方様には本当に、感謝しているのです」
それで合点がいった。ヴァーリンの前領主が、長老の妄言に乗った理由。
自らの孫が、王家と同じく高貴な血を持って生まれたと……そう思った。だから……だから、夢に溺れたのか……。
七歳になったと言った。そんな幼い子を、家族から引き離していただなんて……。
「……お加減は? 恙なく、健やかにお過ごしなのでしょうか」
陛下と同じ病であるなら、やはり陽の光に弱いはずだ。健康状態が心配だったから、そう問わずにはおれなかった。
するとクロード様は、とても幸せそうに、ふわりと笑い……。
「はい。今まで触れるどころか、会うことすら叶わなかった母の腕に、抱かれることができるようになったのです。
近頃は、笑顔も増えました」
そう言ったクロード様は、何故か俺の手を取った。
そのまま片膝をつき、自らの額を手に押し付ける。まるで主君に傅くように。
…………いや、いやいやいや、おかしい! 何この状況⁉︎
頭の中は、混乱など通り越し、恐怖が渦巻いていた。
俺は一体どこに迷い込んでしまったのだろうかと、泣きたい気分だ。
とはいえ、公爵家の方に手を握られ、無理やりもぎ離すわけにもいかない。リカルド様に弟君をなんとかしてください! と、視線で訴えるも腕を組み、真顔の無言で見返された。
ちょっと⁉︎ この状況ちゃんと目に写ってますか⁉︎
「クロード、其方は本当にそれで良いのだな」
「はい。構いません。と、いうか……お会いしてますます、この方しかないと、決意が固まりました」
「そうか…………前代未聞だが……まぁ、今更だな。此奴は元々前代未聞だらけだ」
「なんの話です⁉︎ それよりもクロード様、後生ですからおやめ下さい⁉︎」
「本当は魂を捧げたいくらいの気持ちなのです。ですが、それは妻に捧げてしまいましたので……」
「勿論要りませんよ、魂なんて!」
それは正しく奥様に捧げて下さい!
ていうか、魂も要りませんが、こんな風に敬われるのも苦痛ですよ⁉︎
俺は何もしてない、だいたい白の病についてだって、俺はただ、サヤに聞いたことを伝えただけなのだから。
「私は別に、何もしていません! このようにされることなど、何も……っ、そう! 何もなかったことになってるんですから!」
そうだ、何もなかったことになっているのだ。なのにこんなの、おかしいでしょうが⁉︎
必死で宥めすかして手を取り戻した。膝なんてつかないで下さい、立って下さいと訴えるが、クロード様はそちらはやめてくれない。それどころか、胸に手を当て、熱のこもった瞳で俺を見上げ、言うのだ。
「レイシール様、お願いがございます。どうか、我が主となっていただきたい」
本日もなんとか間に合いまして、ホッとしてます。
だけど明日からの分はまだだよ!でも今から頑張る!
と言うわけで、今週も三日連続遅刻無しを目指してまいります。
今週もお楽しみいただけるよう、頑張ります。




