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多難領主と椿の精  作者: 春紫苑
第五章
135/515

閑話 農法

事の発端は、サヤが大量の資料を抱え「ご相談があります」と、言ってきたことだった。

姫様方が帰還し、十日間ほどお休みを入れようと言ったその日の夕刻だ。

何故か隣にはマルと、ハインもいる。どうしたんだ?と、視線をやるとサヤに呼ばれたとのこと。

とりあえず、真剣な顔で、大量の資料……。

これは、何かとんでもないことを言われるんだろうなぁ……と、思いつつ、腹を括って「どうぞ」とサヤを促したのだが。


「氾濫を抑え込むことに成功した以上、今後必ず問題になる事があるので、そのことについてお話しさせて頂きたいんです」


と、言う。


「……それは、何か良くないこと? みたいな顔だよね……」

「そうですね。良くないことだと思います。でも、氾濫対策は必要なことでした」


……? サヤの言わんとすることが、よく分からない。

だから「うん、必要なことだった。そこは俺も同意するよ」と返す。


「ですから、これから起こることも、受け入れて頂くしかありません。

そして、それに対応していく必要があります」

「うん……。分かってる。だから、単刀直入に言ってくれて構わないよ」


俺の言葉に。サヤはホッと、小さく息を吐く。そして、いつか見た様な、悲壮感漂う表情をちらりと覗かせつつ、口を開いた。


「では、単刀直入に。

セイバーンの麦の生産量は、確実に落ちます。

川の氾濫による土の流入で、土地を潤わせていた形が、失われたからです。

ですが、対応策はあります。

そのことについて、お話しさせて頂きたく、伺いました」


……ああ、それで。

そんな真剣な……そして不安そうな顔をしていたのか。

サヤの葛藤が見て取れた俺は、彼女のその真摯な姿勢に自然と顔が綻ぶ。

彼女を不安にさせてはいけない。これは、俺が決めたこと。当然、その覚悟もしていたのだと、きちんと伝えなければ。


「うん。理解している。

麦の生産性は落ちるだろうな。セイバーンには、休耕地が無い。

氾濫が頻発する為に、八月から麦を蒔くまでの間、ずっと畑は使われてもいず、氾濫の為に、他の農地の様に、家畜を利用することもままならなかった。

その辺と引き換えであるかのように、この地は作物が豊かに育つ。

つまり、他に多くある麦の生産地とは、かなりかけ離れた方法で、麦が作られてきている。

この状況に……氾濫が、少なからず、関係していたってことだな?」


俺の言葉に、サヤは一瞬驚いた表情を見せた。

けれど、俺が言った言葉を咀嚼する様に俯き、暫く考えたかと思うと、その瞳に安堵の色が広がった。


「ええ……、そうなんです」

「他の地域の農法は、もう誰かから聞いた?」

「いえ、ハインさんに、セイバーンに休耕地がないことと、牛などの家畜を殆ど飼っていないこと、畑で麦以外を作っていないことは伺ったのですけど……」

「うん。ここは土が良いのか、生産量は他の地域と比べてかなり高かった。

家畜を飼っていないのは、氾濫の度に死なせてしまう可能性が高いから。

麦以外を作っていないのは、雨季の関係と、この時期は大抵、復旧作業に追われるからだ」


ハインが動き、持ってきていたお茶を湯呑みに注ぎだす。

マルは、眠そうに擦っていた目を爛々と輝かせてサヤを見ているから、知識を得られると乗り気になった様子だ。とりあえずマルは座ってと長椅子に促した。

俺も執務机を離れ、長椅子に移動する。


「じゃあ、情報のすり合わせをしようか。

まずはサヤに、この世界の一般的な農法を話す。それで問題がある様なら、そこを指摘してくれるか」


そう言うと、大量の資料を脇に置き「畏まりました」と優しく微笑んだ。

見惚れてしまいかけて、慌てて視線を外す。

いかん……真剣な話をするのに、気を散らせちゃ駄目だろ、俺。


この世界の農法。それはどの地域もだいたい似通っていると思う。

基本的には、一年目、麦を作る。二年目、他の作物を作る、三年目、休ませる。

という手順で回していた。

この二年目の他の作物というのは、我々が食べる野菜と、家畜の食べる飼料だ。

三年目は何も作らない。ただ雑草が生えるに任せることとなる。そのついでで、雑草を家畜の飼料としていた。

そしてまた、麦を作る。

だがセイバーンは、その方法を取っていない。


「私の世界のやり方と似てますけど、やはり色々違うんですね。……ああ、でも……こういった方法を取っていた時代もある。ということ……でしょうか」


そう言ったサヤが、顎に手を当てて、うーんと唸る。

まったく、この子の知識幅は尋常じゃないよなぁと、それを見て苦笑する俺。


俺は、学舎にいた頃、ギルによく、王都へと連れ出してもらっていた。

ギルの実家が王都に店を構える大店であったから、長期休暇等はそちらでお世話になっていたのだ。

大体はは王都で過ごしていたけれど、たまに別荘で過ごすこともあった。

その折に、セイバーンとこの地域の農法が随分と違うことに気付き、びっくりしたのを覚えている。

……そんな機会でもなければ、農地運営に興味を持たなかったかもしれない。


「大抵の地域は牛を利用して畑を耕すな。

牛は冬に潰して、食料にする」


ここは氾濫が頻発し、人も家畜もよく死ぬ。その代わりの様に、麦の生産量はとても多かった。

他の地域の様に、広大な畑を耕す必要もなかった為、家畜無しでなんとかやってこれていたわけだ。


「冬に牛を潰して食料にするのは何故ですか?

毎年潰していたのでは、その……費用とか、大変なのでは?」


首を傾げて問うサヤに、ああそれはね。と、マルが口を挟んだ。


「冬の家畜の飼料が確保出来ないからですよ。

冬場は作物もあまり育ちませんからね。なので繁殖用の最低限しか、残しません」

「……? でも、保存のきく作物はありますよね? 蕪や、馬鈴薯があるじゃないですか」

「え?」

「私の世界でも、確か家畜を潰していた時期はあったんです。

けれど、蕪や馬鈴薯を飼料にする様になり、家畜を残せるようになったはずです」


そう言ってからサヤは、脇に置いた資料の中から数枚の紙を取り出した。

むぎ。と書かれた下にりん・ちっそ・かりうむという謎の言葉。

そしてりんから線を伸ばし、こっぷん

ちっそから線を伸ばし、まめ・しろつめぐさ・れんげ

かりうむから線を伸ばし、かぶ


そうごう、けいふん、ぎゅうふん、など


そして欄外に


はい・あぶらかす


しりょう……じゃがいも・かぶ・しろつめぐさ



と、書かれている。


「すいません。うろ覚えなので、あまりあてに出来ないんですが、父から聞いた話ですから、信頼度は高いです」


そう言い置いてから、語り出した。


「麦を育てるのにとても重要な三大肥料として、りん、窒素、カリウムがあります。

他にもカルシウムとマグネシウムを入れて五大肥料なんて言う場合もあるんですけど、今回は省きます。

私の世界では、稲は土で取り、麦は肥料で取る。なんて言葉があるくらい、肥料によって生産量が変わる作物だと言われています。

それでえっと……りんが実や花、窒素が葉や茎、カリウムが根や茎を育てるのに重要らしいんですね」


そこまではスラスラとした説明がされた。

しかしそこから、サヤの眉間にシワが寄る。


「私、化学はあまり、得意じゃなくて……どれに何が含まれていたかが、あまり思い出せないんです。

窒素が豆類にとても豊富で、レンゲや白詰草も豆類に含まれたと思うんですけど……。

あと、りんが骨粉だったのは覚えてます。

カリウムが蕪なのも、間違ってないと思うんですけど……灰と、油粕。これが何だったかが、出てきません」


これは一旦保留にします。と、宣言してから、次の話へ移る。


「農法に家畜が利用される利点として、家畜の労働力と、もう一つは糞尿。これが肥料になることも挙げられますよね。

この糞尿が、上記の三つを効率良く含んでいるから、これに単一肥料……先程の豆や骨粉を加える形で土を作る……って、父が言っていたと思うんです」

「ふぅん……。よく分からないけど、家畜の糞尿が良い肥料なのは知ってる。

セイバーンの農家は、あまり使ってこなかったけど、他の地域では利用してる」


俺の返事に、サヤはこくりと頷いた。


「なら本当は、冬に殺して食料にするのではなく、飼って糞尿を確保する方が、経費がかからないのではないですか?」

「そうだな。だから本当は、冬場も家畜を確保しておきたい」

「ですよねぇ。糞尿を確保したいんですよ、本当は」


家畜の糞尿はそのままでは使えない。

時間をかけて肥料に作り変えなければならないのだ。

そのための手順や方法も、この地域には根付いていないということを今更気付き、これはちょっと大ごとだなと、頭の端の方で考える。


「はい。その為に蕪の栽培をお勧めしたいんです。蕪は牛の乳を甘くする作用もあるって聞きました。

馬鈴薯は、乾酪がパサつかなくなって、美味しくなると。

じゃあ、蕪を食べた家畜の糞尿が、カリウムを多く含む様になるのかどうか……その辺が、よく分かりません……」


そう言って悩むサヤ。

だが俺とマルは、顔を見合わせた。

よく分からないが、蕪を多く育て、牛に与えれば、肥料も確保でき、潰す牛の量も減らせるという。なら……、


「何が含まれるかって……そんなに重要?」

「必要なものは分かっているのですよね? なら、それを全部利用すれば済むのでは?」


そう言うと、サヤは駄目なんですと首を振る。


「分量が重要なんです。

例えば、窒素を多く与えすぎると、食物は茎や葉が肥えすぎて、軟弱になり、病気にかかりやすくなるんです」

「……それは、難しいな」

「しかもその地域の土壌によって混ぜる分量が異なります。

例えば……このセイバーンの土は、黒くてしっとりしてますよね。

粘土質を含んだ土……氾濫によってもたらされた、私の世界で沃土(よくど)と呼ばれる土だと思われます。

自然に、作物を育てる養分を多く含んだ土なんです。

けれど、養分は作物を作ることで、消費されます。だから……」


そう言って、また別の紙を取り出した。


「セイバーンでの麦の生産量と氾濫を起こした年を調べてみました。

氾濫のあった翌年の生産量、どこも多いですよね。

ここは、二年氾濫が起こりませんでした。すると、落ちているでしょう?

その翌年は豊作に戻ってます。氾濫によって肥沃な土が補充されたからです」

「ああ、これは良い。楽しそうな作業ですねぇ。

氾濫が起こる確率を計算した時は数字の曖昧さに憤死しそうでしたけど、これは美しい。

いやぁ、調べたかった!」


マルがうきうきとサヤの作った表を眺めている。

その表は確かに、氾濫の翌年に生産量が上がっていることを示していた。

成る程……。この村の農家がかろうじて生活を保てた理由はこれか。

氾濫の翌年は、どこも豊作で、収入が多くなる。だからギリギリの綱渡りを、こなしてこれていたわけだ。


「私の世界でも、川の氾濫を利用して作物を作っていた地域があります。

有名なのがエジプト……ナイル川周辺地域。けれどこの地方の氾濫は、川の水がじんわりと水かさを増し、地面を覆っていく……何もかもを押し流す様なものではありませんでした。だから、毎年の氾濫を受け入れてこれたんです」

「人死にが起きない氾濫だったわけですね。

ふぅむ……。肥沃な土というものは欲しいですけど、死人を出していたのでは困ります」

「はい。だから、この地方の氾濫は、やはり抑えるべきものです。

それに、この地方は用水路を作ってありますよね。

私の世界では、用水路を利用していない場所が多かった筈です。

川の水にも、養分は溶け込んでいますから、麦が多く収穫できた理由の一つに、川の水を利用していたことも関わっているかと」

「へぇ……あるから使ってたけど、確かに雨だけで麦を生産している地域もあるな」

「南の方など多かったですよね? ですが確かに、生産量が豊かとは言い難い。

セイバーンは水の利用が普通に行われていますから、それで総じて、生産量が高いのかもしれませんねぇ」


で。と、マルが虚空を見上げる。


「蕪や芋を育てて家畜の飼料を確保し、それによって糞尿の肥料を確保し、麦の生産量を上げるのですね? ふむ……ですがそれ、いたちごっこになりませんか?

家畜を飼う為の飼料確保と、糞尿の分量……どっちが割高かという話になってきます」

「……ああ、まあそうだよな。

他の土地の様に、休耕地を確保しつつとなると、麦の生産量も減る。

畑を増やすこともできるが、そうすると当然家畜の量も増やす必要が出てくるし……」


こういう計算は苦手だ……マルに投げよう。そう考えていたら、サヤが慌てて違うんですと言葉を挟む。


「そうではなく。

肥料をを上手く利用すると、休耕地を作らなくても畑を上手く回せる様になるんです。

土壌の性質を一定に保つことが大切で、その為に肥料を土に混ぜるわけで……」


サヤの一言に、俺たちは固まった。


「え⁉︎」

「そういう話だったんですか⁉︎」


有り得ないのだ、それは。

休耕地をなんとか少なくしようという模索は、昔からあった。

けれど、その悉くを失敗に終わらせている。

それをサヤは、いとも簡単に「出来る」と言った。


「出来るんです。私の世界では、現在休耕地を設ける農業は、もう主流ではありません。

作るものを入れ替え、肥料を使うことで、土の性質を一定に保つ技術を確立しています。

だから、連作は難しいと思うんですけど、休耕地を無くすこと自体は、出来ます」


驚愕するしかない。

だがやはりそこで、サヤは不安そうに……そして自身を不甲斐ないと嘆く様に、顔を歪めた。


「でも……土は土地によって性質が異なります。

だから、どこでも同じやり方をしたのでは駄目なんです。その土の性質を知らなければいけません。けれど……その方法を、この世界で確立出来るかどうか……。土の性質を測る方法を、探さなければいけないんです」


土の性質を測る?

サヤの言うことの意味がよく分からない。

するとマルが、


「サヤくん、土の性質というのを教えて頂けますか? 種類があるのですね?」

「はい、土は…というか、世の中の大体のものは、酸性、中性、アルカリ性のどれかです」


そう言って、紙の端っこに棒状のものを描く。

その左側の端にさんせい・一。右側の端にあるかりせい・十四。中心にちゅうせい・七と書き込まれた。


「酸性から中性、そしてアルカリ性。

例えば麦に適した土壌はpHが六から七くらい。つまり、若干酸性寄りの中性だった筈です」

「例を挙げてもらえます? 何がサンセイで、チュウセイで、アルカリセイなのか」

「そうですね……例えば塩酸は酸性です。水は中性、野菜類はアルカリ性が多かったと思います。けど……よく覚えてません……」

「うーん……流石にそれだけじゃ、僕も分からないですね」


首を傾げるマル。

マルでもお手上げだと俺にはさっぱりだ……途方にくれるしかない。

サヤも必死で何か考えている様子だ。


「えっと……酸性とアルカリ性……藍染……紫キャベツ……あっ、たしかリトマス紙は紫キャベツで作れたけど……キャベツってこの世界にあるんやろか? まだ見てへん……。

まずリトマス紙を作って……。……リトマス? あっ、紫陽花⁉︎」

「え? 紫陽花がどうしたって?」


急に声の大きさが跳ね上がったサヤが、興奮した様子で俺を見た。


「紫陽花! この世界にありますか⁉︎」

「あ? うん、あるけど……?」

「紫陽花です! リトマス紙の代わりになります!」


いや、そのリトマスシっていうのがまず何ですかって話だ。

興奮した様子のサヤにとりあえず落ち着いてとお茶を渡す。

すると、今まで黙って……というか、我関せずといった様子であったハインが、ふと思い立った様に、口を開いた。


「紫陽花ですか……うつろい花などと呼ぶ地域もありますね」

「うつろい……?」


お前、花の名前なんてよく知ってたな……。

内心そんな風に思ったのだが、今度はポン! と、マルが手を打つ。


「紫陽花!

ええ、そうです、うつろい花! そう呼ばれるのには謂れがありまして、紫陽花の赤い花を所望した恋人に、自宅の庭にあった株を譲ったある男がおりましてね、その恋人の家に植え替えたらあら不思議、花が何故か青色に変わるんですよ!

男の愛が冷めたと言って恋人が泣くものだから、新しい株をもう一つ譲るんですけど、やっぱり青くなり、結局その恋人は……」

「マル、マルちょっと、逸話は良いから。

何が言いたいのかだけ簡潔に、教えてくれるか」


怒涛の勢いで語りだしたマルを、今度は宥める。

するとマルは、もうちょっとでオチなんですけど……とか言いつつ、とりあえず指示には従ってくれた。


「あの花、土によって花の色が変わるんですよねぇ」

「正確には、土壌の性質によって変わります!

酸性土壌だと青、アルカリ性土壌だと赤に!」


はい! と、手を挙げたサヤが元気に答える。うん、それは分かった。だけどさ。


「紫陽花って、確か初夏に咲くのだよな?

土の性質を調べたい時に、好きに咲かせるのは無理だろう?」


そう聞いたら、ハッとサヤが動きを止めた。そしてしゅんと項垂れてしまう。


「そうでした……。これでは、調べられないですよね……じゃあやっぱり紫キャベツが必要です。紫キャベツってありますか?」

「……ムラサキキャベツ……ムラサキって紫だよな? キャベツってどんなもの?」

「茄子みたいな色をした、葉野菜です。こんな、大きく丸く、葉っぱが重なっている食べ物なんですけど」

「キャベツなんて名前は聞かないな……マル、知ってる?」

「僕も聞かないですね。どの地方の食品でしょう? 暖かい地方と、寒い地方では?」

「えっと……多分寒い……? 越冬キャベツとかがありましたし……でも、紫キャベツはどうなんでしょう……分かりません」

「そもそも紫の食品ってほぼありませんよ、毒々しい。茄子と…赤紫蘇以外に思い至りませんね」


最後の一言はハインだ。

そう言われ、しゅんとしてしまうサヤ。凄く気落ちした様子だ。

だけど、そんなサヤにマルは、


「いや、でも意味はありましたよ。

紫陽花、これにまつわる変人を、僕、一人知ってます。

もしかしてこの人、サヤの言う、土の性質を知っているかもしれません」


そんなことを言い出したのだ!


「どういうことだ?」

「まだ生きてると良いんですけどねぇ。

他領の話なんですけど、畑の脇に紫陽花を植えて、土に混ぜ物をする変人がいるんですよ。

色々変なことをするので、爪弾きにされるそうでね。

僕が話を聞いた時は、魚の死骸を軒に大量に吊るしているだとか、鳥の糞を板に貼り付けているだとか、たまごの殻の収集癖があるとか、なんかもう意味不明で面白くって」


それを聞いたサヤが、目を見張る。そして慌てた様子で立ち上がった。


「それっ、全部肥料かもしれません!

魚の干物も魚粕(ぎょかす)といって、私の国で使われていますし、鳥の糞は、藁など不純物が混ざらないようにしているのかも……卵の殻や、貝殻も、焼いて灰にして使うって、聞いたような気が……!」

「じゃあ一度、その人の情報集めてみましょうかねぇ。

まだ生きているようなら、出向いてもらうか、出向くかしてみる価値はありそうです」


そんなわけで、その話は一旦終了となった。

その男の情報次第で、今後の動き方が決まってくるだろう。

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