強欲と専属
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今、僕とソラはメアさんの家にいる。彼女を助けて家に送ったのだがソラのお腹に音が鳴り響いてしまい晩御飯をごちそうしてくれる事になったのだ。
ソラが顔を真っ赤にしていたのは言うまでもないだろう。
「お待たせしました!遠慮なさらず食べてくださいね!」
メアさんの持ってきたお皿の上には肉、野菜、魚がたんまりと盛られていた。
「メアさん、これはちょっと多すぎない?」
「つい作りすぎちゃいました!後、『メア』って呼び捨てでいいです!」
テヘッと舌を出してにこやかに笑う彼女はとても可愛かった。ボブカットにした金髪がかすかに揺れているのが魅力的だ。
ソラのためにも好きにはなってはならないそう心に言い聞かせる。
「それじゃあ頑張って食べようか。な、ソラ?」
「はい!私がいれば百人力ですよ!ってことでもう頂いていいですか?」
「はい!冷めないうちに食べてください!」
ソラが出てきた料理目の前にして我慢の限界らしくメアに尋ねるとメアは口に手をあてふふっと笑いながらそれを許可した。
「そういえばメアは仕事は何をやっているの?」
粗方の料理を食べ終えた僕は質問する。
「私、冒険者ギルドの受付嬢をしてるんです。何回か専属も迫られた事があって... 今回の件もあの人に専属を迫られて断ったら逆恨みされたって感じです。」
ちなみにメアを襲った男は気絶していたしどうしたらいいか分からないのでその場に放置したままである。
「メアはあの長蛇の列の受付嬢だったんだね。僕らも今日登録しに行ってあの列を見た時はびっくりしたよ。ところで専属って何なの?」
「え!リューさんとソラさんも冒険者だんですか!それも今日なったばっかりって... それなら専属受付嬢を知りませんね。わかりました。説明させてもらいます!」
先程までのゆるい表情から一変して仕事顔になるメア。仕事熱心ないい子なんだろう。
「専属受付嬢と言うのはその名の通り一人の冒険者の専属の受付嬢になるということです。言ってみればけっこ... いえ、何でもありません。
専属受付嬢を持つことによって冒険者にはいくつかの利点があります。例えば、用事がある時に列に並んでいただかなくても受付嬢の方から駆けつけるので時間の短縮にもなります。とりあえず優遇されると思っていただければ構いません。細かい事はこちらの資料に記載されていますのでお読みください。」
そう言って1冊の冊子を渡してくる。ソラをちらっと横目で見るがご飯を食べ終えてすうすうと寝息を立てて寝ていた。
専属受付嬢を持つことは悪くないかもしれない。冊子を読む限りでは僕らに不利益な点が無い。少しでも早くDランクに上がりたい僕らにはありかもしれない。
そして読み終えると「ありがとう」と言って冊子をメアに返す。
「ところで専属受付嬢はどうすればできるのかな?」
「専属受付嬢を持つには相互の同意が必要です。どちらかが提案してもう一方が承諾する形ですね。リューさんは専属受付嬢を持ちたいのですか?」
「うん。できれば持ちたいかな。エストワールまでの護衛依頼があるんだけどランクが足りないんだ。それに依頼までの期間も短い。だから確実性を考えると出来るだけ時間を無駄にしたくない。安全面を考えると護衛依頼でエストワールに向かうのが得策なんだ。数が多い方がアクシデントの対応も迅速にできるしね。」
そう言ってソラをそっと撫でる。するとソラは頬を緩ませ「りゅーさまぁ」と寝言で呟いた。
「なるほど... ソラさんの事が大事なんですね。少し、羨ましいです...」
少し寂しそうな顔をしてメアはつぶやく。
「そうですね、もしよかったら私がリューさんの専属になりますよ?あなた達は恩人ですから。それに私、リューさんの事、好きになっちゃったみたいなんです。もしよかったらでいいんです。本当に...」
僕は薄々と気づいていた。好意を向けられるのは素直に嬉しい。正直にいうと僕はメアも自分の物にしたいと思ってしまっている。メアが僕以外の男に抱かれている姿を思い浮かべても不快感しか生まれてこない。
僕はメアの言葉に返事もせずに俯いて頭を抱え込んでしまう。こんな感情を持ってしまってはソラに申し訳がたたない。全てを手に入れようとしてしまう。まさに強欲だ。
「リュー様」
一筋の声が聞こえた。さらに右手には温もりを感じていた。
「...ソラ、起きたんだ。」
目を合わせられない。こんな強欲になってしまった僕を見限ってまた愛する者が離れて行きそうで怖い。
僕は震えはじめる。
「リュー様、私は絶対にリュー様から離れませんと言ったはずですよ?
例え貴方様の性奴隷になってもついていきます。鬱陶しがられてもついていきます。私に何かしらの攻撃をおこなっても絶対についていきます。私には頼れる方はもうリュー様しかいないんです!リュー様が何を欲しようと私は気にしません!
だからリュー様にたくさんの妻が出来て私が寵愛を受けられなくなっても構いんです!ただずっとリュー様のそばにいられるのであれば!
リュー様、ご自分に素直になってください!リュー様の過去を私は教えてもらいました!リュー様が強欲でも私は絶対についていきますから心配しないでください!」
泣きながらソラは訴える。こんな優しくて可愛くて愛おしい子を蔑ろにすることなんて絶対にない。強欲な僕だがそれは断言出来る。僕の目にも涙が溢れてくる。
「ソラ、ありがとう。君が僕の恋人で本当に嬉しいよ。今ここで誓うよ。生涯ずっとソラに寂しい思いをさせない。絶対にね。」
泣いているソラをぎゅっと抱き寄せる。
「うわぁぁぁん!りゅーざばぁぁ!」
ソラはだいぶ溜め込んでいたようだ。滝のように涙を流していた。
数分後、ソラがようやく落ち着きを取り戻す。
「すみません... お見苦しい姿を晒してしまい申し訳ありません...」
「いや、いいんだ。僕も恥ずかしいとこを見られちゃったしね。2人ともこんな強欲な人間だけど付いてきてくれるかな?」
ソラは嬉しそうにコクンと頷く。そして再び僕の胸に顔を埋めた。
「わ、私もいいんですか!?」
メアはというととても驚いていた。
「ダメかな?」
「いえ!すっっっごく嬉しいです!でも、2人の邪魔だと思いますよ?」
「それはないよ。ソラも好きだけど僕はメアの事も好きなんだ。2人ともを平等に愛するよ。」
そう言うとメアは瞳を潤わせて喜んでくれた。
「それじゃあ今日はとりあえずお開きにしようか。」
そう言ったのは僕である。既に夜が深くなってきている。このままだと宿のエレナさんに心配されるかもしれない。
「そうですね。あの、この町にいる間は私の家に泊まってもらっていいですよ?」
「う~ん、そうだね。宿代も馬鹿にならないしそうさせてもらってもいいかな?ただ今日は宿を押さえてしまっているからそっちで寝るよ。ソラはこっちでメアと一緒にいてあげてくれるな?もしかしたらメアが襲われるかもしれないからね。これから長い付き合いになるんだし親睦も深めるべきだからね。」
その言葉にソラは少し寂しそうにしたが「わかりました!リュー様も気をつけてねくださいね!」と元気に返事するとメアの手を握った。
種族は違うが姉妹のようだ。仲良くできそうで何よりである。
「それじゃあまた明日朝迎えに来るからね。」
そう言って僕は宿に戻って二人部屋を一人で堪能した。
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翌日の朝、僕は宿のチェックアウトを済ませ、メアの出勤時間を考えて早めにメアの家に来ていた。
コンコンとドアをノックする。
「あ、リューさん!おはようございます!」
出迎えてくれたのはメアであった。服装を見るに既に準備を終えているようだ。そういえば、僕とソラは服を1着しか持っていない。水魔法でしっかり洗って火と風の混合魔法で乾かしているので清潔だ。だが流石に毎日同じ服を着るとなると周りの目を気にしてしまう。ダンさんとの依頼が終わったら服を買いに行こうと思う。
「もう出勤なの?だいぶ早く来たつもりだったのに。」
「はい、新しい依頼の確認をしなければなりませんので。」
受付嬢はなかなか大変な仕事なようだ。
「そっかぁ、大変だね。僕も一緒に行くよ。1人だと危険だしね。」
「あ、ありがとうございます。でもソラちゃんはどうするんですか?」
ソラと一夜過ごし、仲良くなったのかメアはソラの事を『ソラちゃん』と呼んでいた。ちなみにソラは遅くまで起きていたので熟睡中らしい。
「ん~。ソラは強いし大丈夫だと思うよ。でも念のために魔法をかけておくよ。もちろんメアにもね。」
僕はスキル【全能】のおかげで魔法においては全て把握している。つまり、防御専用の魔法が複数の魔法によって作れるのだ。
ちなみに防御専用の魔法は時空魔法と他の一つの魔法が使われる。
時空魔法により対象者に触れようとすると空間把握が発動され自動でもう一つの魔法が発動される。例えば、土魔法ならば対象者に触れようとすると何も無いところから急に強固な土壁が形成される。
僕はメアに雷魔法の防御を。幸せそうに寝ているソラには土魔法の防御を施した。
「よし、これで大丈夫だ!行こうか!」
「はい!あ、あの、手を繋いでも、いいですか?」
上目遣いで聞いてくるメアには逆らえない。そう思えた。
「んー、その他人行儀な話し方を辞めたらいいかな。メアって僕と同い年だしね。」
イジワルを言ってメアを少し困らせる。ちなみにメアのステータスは一般人のそれだった。スキルも【裁縫】だったし戦闘には向かないだろう。
年齢を知ったのも【看破】のおかげである。【看破】はあらゆる物(者)を見破る事が出来るスキル。とても優秀なスキルだ。
「うっ、そういえばソラちゃんも言ってましたね。リューさんは何でもできるって…」
「そんなことはない。僕は裁縫もできないしメアみたいに美味しいご飯も作れない。メアには僕に足りない物を補ってもらうからね。」
にこやかにそう言うとメアは顔を赤くして諦めたように呟く。
「わ、わかった。これからは私がリューを支えるわ。これからよろしくね!それと... ソラちゃんからリューの事全部聞いたわ。何があっても私も生涯ずっと貴方について行くから心配しないでね。」
その返事に僕は満足しメアの手を握って冒険者ギルドに向かった。
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「おはようございます!」
ギルドの扉を開けるとハキハキと大きな声で挨拶をしたメア。中には受付嬢がたくさんいた。その中の一人の女性に声をかけられた。おばちゃん受付嬢のネネさんだ。
「おはよう。あら、確かリュー君だったかしら。どうして君がメアと?」
「それはですね、」
そう言うと続けてメアは昨日の事情を嬉しそうに話した。
「まさかメアが専属にあんるとはねぇ。まぁ襲われた所を救われたら惚れるのも仕方ないわね。それにしてもメアの方からプロポーズするとは誰も考えないね。」
ネネさんはあまり襲われた事を気にしていなかった。結構あることなのだろうか。それともネネさんがただ天然なだけなのだろうか。
それともう一つ疑問があった。
「プロポーズってどういうことですか?」
「ん?この娘から聞いてないのかい?専属になるって事はその冒険者に生涯ずっとついて行くってことだからね。延長線上でそのまま結婚しちまうのさ。」
なるほど。確かにずっと行動を共にするのだからそうなるのは当然かもしれない。
ちらっとメアを見ると顔を真っ赤にしていた。
「まぁ僕はそれで構いませんよ。メアの事好きですし。」
「良かったねメア!あんた気に入られてるみたいだね!リュー君もこれから大変だねぇ。メアとソラちゃんみたいな美少女2人を侍らせるなんて男共から恨まれちまうよ。はっはっは!」
笑いながら肩をバシバシと叩くネネさん。割と痛い。
メアの方を見るとメアもクスクスと笑っていた。
「それじゃあリュー、専属の手続きは私がしておくから家に戻って後でソラちゃんとまた来てね!送ってくれてありがとう!」
そう言ってメアは僕の頬に軽くキスをして受付の奥へと走っていった。
少しすると受付の奥からは「キャー!」「羨ましー!」などの女性の声が聞こえて来た。
そんな時数人の男達がギルドに入って来ていた。その中にはダンさんもいた。
「おう、はえーじゃねえか。まぁちょうど良かった。この町から少し離れた所にちとやべえ魔物が目撃されたらしい。俺は討伐隊に派遣されることになっちまった。すまねえがしばらく帰ることができねぇ。俺が帰って来るまでは昨日の依頼を3日に1回、それ以外はどんな依頼でもいいから受けてくれ。すまんな、昨日はあれだけサポートしてやると言ったのに…」
ダンさんは本当に申し訳なさそうに頭を下げていた。既に防具と武器を身につけており準備万端だった。
「いえ、大丈夫です。ダンさんも気をつけて行ってきてくださいね。帰って来てからまた手伝ってくれればいいですので。」
そう言ってこっそりと土魔法の防御をダンさんにかけておく。ダンさんは強く頷くと討伐隊の中に戻って行った。
その討伐隊の中には「メアちゃん!帰ってきたら俺の専属になってくれ!」「いや、こんな奴よりも俺の!」などと雄叫びをあげている男達もいた。
今メアは僕の専属の手続きで受付の奥に入っていたので男達は奥に向かって叫んでいた。だがメアは出てこなかった。
今ここで僕が彼らに事実を教えても彼らのやる気を削ぐだけだろうし恨まれる可能性もあるので放置しておいた。
僕はギルドを出てメアの家に戻ると今起きたのであろう目を擦って眠そうにしているソラに事情を話しメアの用意してくれていた朝食を食べギルドに行った。
「リュー、ソラちゃん、いらっしゃい!依頼の件ダンって人から聞いたわ。手続きはもう済ませているからすぐにでも行けるわ!」
ギルドに入ると僕を見つけたメアが小走りで向かって来る。周りの目線が痛い。殺気や困惑の目線が寄せられている。
「あ、ありがとう。すぐに行くよ。こんな状態でギルドにいるわけにもいけないしね。」
「わかった!リューとソラちゃんなら大丈夫だと思うけど、最近魔物が活発化しているようだから気をつけてね。」
「わかりました!メアちゃんも昨日みたいな奴には気をつけてね!」
そう言って仲良く抱き締め合うメアとソラ。
そして僕とソラは逃げるようにギルドを出て薬草を摘みに森に向かった。
この日の空は灰色の雲に覆われていて今にも雨が降り出しそうだった。
次回予告
ついに俺TUEEEEが始まる...!?
*メアちゃんステータス*
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メア Lv.18
体力 40/40
魔力 50/50
筋力 20
防御 50
魔攻 20
魔防 20
【裁縫】
~~~~~~~~~~~~
メアちゃんはリューと同じ18歳です。




