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狐な少女


僕は今どこにいるのだろうか。あれからどのくらい日が経ったのだろうか。今はただ、何も分からないまま背丈程の草が生い茂る獣道を進んでいる。

あの場から逃げ出した僕は何も考えず方向もわからないままただひたすらに逃げた。そして気づけば周りは緑に囲まれていた。それからは無心で歩き続けている。

あの情景を思い出しても不快感に襲われるだけであった。思い出したくて思い出すのではない。ふと気が抜ける瞬間、すなわち夢の中であの情景が繰り返される。(受けた事はないが)拷問の様だ。いったい僕が何をしたというのだろうか...


歩く。寝る。そしてまた歩く。何故か腹は減らない。そしてまだ村どころか人っ子一人見つからない。それは愚か動物さえも。木々は青々と茂り、風が吹くとざわざわと揺れ僕を威嚇しているかのようだ。


「...いったいここはどこなんだ」




方角も分からぬまま歩き続けようやく少し開けたところに出た。するとそこには1本の大樹が堂々と生えておりその根本にはひどい怪我を負った少女が仰向けに横たわっていた。



少女の元にすかさず駆け寄り、スキル【看破】を使用して鑑定を試みる。


~~~~~~~~~~~~


ソラ Lv.120

状態:瀕死(1分事に体力-1)


体力 4/1890

魔力 0/2900(+500)

筋力 2450

防御 1475

魔攻 3300(+500)

魔防 2800(+500)


【魔導強化】【振り回されし者】

【幸運】


~~~~~~~~~~~~


「つ、つよ... じゃなくて!た、助けなきゃ!って、後4分しかない!どうすればいいんだ。どうすれば...」


自分と比べて彼女のステータスの高さに驚かされるも少女の状態を見て慌ててしまう。


「またか、また僕には選択肢がないのか... なんで。なんでなんだよ!凡人にだって選ぶ権利があっていいじゃないか!」


ミサの事もあり僕は自分にひどく嫌気がさした。無力な自分に。目の前の少女も助けられない自分に。


『スキルを解放します。・・・成功。

スキル【強欲】が解放されました。』


突然耳に入る無機質な声。普通だったら驚くだろうが僕には関係無かった。


「...意味がわからない」


感じた事はそれだけだ。何も考えられない。ただ力が欲しいと思う一心だった。


『...小僧。力が欲しいか。ならば我を使え。欲望の(おもむ)くままに全てを欲し、全てを手に入れろ。それが我でありお前だ。さぁ、何が欲しい!今お前が欲するものはなんだ!』


今度は無機質な声では無く女性らしき声が聞こえてくる。

その声はどこか暖かく根拠もないのに信頼出来る。そう思えた。


「欲望の欲するまま、に... ぼく、は... 僕は力が欲しい。この子を助ける力が、裏切られない力が、運命を変えられる力が欲しい!」


僕は藁にもすがる思いで欲望を吐き捨てた。


『よかろう。その願い聞き届けた!この【強欲】の名において力を授ける!』


『新たなスキルが発足。・・・認証

スキル【全能】【誓約】が追加されました。』


女性の声に続き無機質な声が聞こえた。今の話が本当なら僕にも何かできるのだろうがどうすればいいかわからない。


『今のお前には力がある。そこの小娘を救いたくば回復魔法を発動させよ。手をかざし、〈セイクリッドヒール〉を発動させるのだ!』


声に従い、少女に手をかざす。


「せ、セイクリッドヒール!」


僕がそう言うと少女の身体は光で包まれ、みるみると怪我が無くなっていった。


「す、すごい...」


それしか言葉が出てこない。


『言ったであろう。今のお前には力がある。自己紹介が遅れたな我はスキル【強欲】。お前のスキルだ。今からお前に力を授けた代償を払ってもらう。払い終わるまでの間眠ってもらおう。お前が選んだ事だ。後悔しても既に遅いぞ。クックックッ』


代償。その言葉は全く気にならなかった。むしろこれほどの事が起きて無い方がおかしいと思うぐらいだ。別に代償が命だろうが構わない。少女を救える選択肢を得たのだから後悔はない。できれば、できればだが冒険者をして普通に、幸せに暮らしてみたかった。


『クックック。その謙虚さの中にある欲望。良い、実に良い!安心しろ、命までは取らぬよ。さあ、安心して眠れ。我も久しく力を使った。しばらくは起きないであろう。これからよろしく頼もう。我が主よ。』


その言葉を最後に声は聞こえなくなった。そして僕もプツリと意識を失った。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「リュー、早く起きなさい。畑仕事はどうしたの?行かないの?」


目を開けるとそこは実家だった。母親の声が聞こえる。


「...なんで?」


とりあえず布団をたたみ端に寄せる。この間までの習慣だ。リビングへ行くとそこには両親がいた。


「お、おはよう」


戸惑いつつも挨拶をする。


「全く、お前はミサちゃんがいないとろくに早起きもできんのか。」


「あなた、そんなこと言わないの。ミサちゃんが出ていったのに堪えないはずないでしょ?」


両親の言葉に余計戸惑ってしまった。ミサは確か帰ってきたはずだ。そして勇者と...


「クソッ!」


僕の言葉にビクリと体を震わせる両親。


「あ、ごめ、ち、違うんだ。っていうか、この前帰ってきただろミサは。勇者...様と一緒に。」


両親は顔を見合わせ哀れみの目で見てくる。


「なるほど。これは重症だな、リュー、畑は私がするからもう少し休んで気を落ち着かせなさい。」


「は?え?い、いや、だってミサは勇者と! ...なんだ、これは夢なのか?

どういうことだ...!」


父の言葉に僕は動揺を隠せず、家を飛び出しミサと結婚の約束をした河原へ走った。そこに行けば何かが分かる。そう直感が言っているのだ。



ようやくついた川原には二人の人がいた。1人は赤く長い髪の少女、もう1人はショートカットの金髪男子。ミサと勇者様だった。


僕はひたすらに混乱する。だが一つ確信できた。これは夢なのだと。


しかし、夢だと確信したからと言って2人を見るだけで不快感が押し寄せる。仲睦まじく身を寄せ合っている姿をみて自分の無力さを呪いたくなる。


「やめろ... やめてくれ... これ以上僕に嫌な思いをさせるな!」


頭を抱えそこに疼くまる。


「ふぅ~ん。なかなかな**だねぇ。」


聴こえてくる声の方を見るとそこには僕が立っていた。


「...お前は誰だ。今すぐこんな夢やめろ。」


「はあぁん!その目つきゾクゾクしちゃうわぁ~。そうねぇ~、あなたにはまだ聞こえないと思うけど一応自己紹介するわねぇ。私はスキル【**】。あなたのスキルよぉ~。

それと、これは私がみせてる夢じゃないのよぉ。あなた自身がこの夢を思い描いてるのよぉ~。」


僕の身体でグネグネと体を捻りながら言ってくる。やめて欲しい。顔を赤らめるのもやめて欲しい。気持ち悪い。


「やだぁ~。そんな目でみないでってばぁ。そ、れ、よ、り、早く目を覚ましなさぁい。あなたが助けた狐ちゃんがすごく心配そうに見てたわよぉ~。」


「狐、ですか?」


「そうよぉ。あなたが助けたのは狐の獣人よぉ~。あなたが見た時は耳も尻尾もなかったのは誰かに切られたからねぇ。」


僕は僕の姿をした何者かと話していると周りはいつの間にか白い世界となり抱いていた不快感も無くなっていた。


(この人いったいなんなんだろう。)


会話の途中、常々疑問に思う一方だった。


「さぁ、はやく目をさましなさぁ~い。あなたが私を見つけてくれるまで、待ってますからねぇ~。ご馳走様でしたぁ~。それじゃ~ねぇ~。」


(ご馳走様?いったい何が?)


そう思いながらも襲ってくる睡魔には勝てず夢の世界で眠ってしまった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



目が覚めるとそこには大樹があった。今度こそちゃんと目が覚めたのだろう。起き上がり周りを見渡すと大樹に寄りかかりすやすやと眠る美少女がいた。


(本当に獣人だったんだなぁ。なんか、すごい可愛いな。)


3本ある尻尾をガッチリと抱きかかえて眠っている。きっと尻尾が治って嬉しいのだろう。


微笑ましい光景を見終わり、とりあえず【看破】で自分のステータスを鑑定することにした。



~~~~~~~~~~~~


リュー Lv.1


体力 100,020/100,020(+100,000)

魔力 100,013/100,013(+100,000)

筋力 100,020(+100,000)

防御 100,014(+100,000)

魔攻 100,008(+100,000)

魔防 100,007(+100,000)



【看破】【隠蔽】【誓約】

【全能】【強欲】【**】


~~~~~~~~~~~~


「・・・・・・」


何も言えなかった。とりあえず【看破】を使って【全能】を見てみる。


【全能】・・・頂点に立ちし者に贈られるスキル。全ステータスに+100,000(偽装可能)。全9種類の魔法を神級まで操る。詠唱破棄。体力自然回復(超)。魔力自然回復(超)。全武器適正(超)



「・・・・・・」



強くなりたいとは願った。だが、神妙な気持ちになる。3年前初めて【看破】を使った時神父はLv.25で村人や当時の自分と比べてステータスが高いと思っていた。それに先程助けたソラというLv.120の狐の獣人は化物並だとも思った。

だがそれよりも自分の方がステータスが高い。

強くなれば心が満たされると思っていた。でも満たされない。


(僕はこれからどうすればいいのだろうか…)


やることがないからといって村に帰れば勇者とミサの生活を見て不快感を得てしまう。それどころか勇者を手にかけてしまうかもしれない。勇者は魔王を倒した英雄。返り討ちにされる可能性もある。それに英雄を手にかけた犯罪者として扱われることになる。


「クソッ...」


頭を掻きながらため息混じりに呟く。


「あ、あの... 」


横から聴こえてきた声はか弱く怯えているようだった。尻尾を抱えて少し震えているのが分かる。


「ああ、起こしちゃったかな?ごめんね。それより身体は大丈夫かな?」


少女は僕の言葉に対してコクコクと頷づく。


「...貴方様が私を助けてくれたのですか?」


「ああ、そうだよ。僕のスキルを駆使したんだ。無事で良かったよ...」


僕の目からはポロポロと涙が溢れてくる。少女は急に泣き出した僕を見て一瞬ビクつきオロオロとしてしまう。


「あわわわ、ど、どうして貴方様が泣くのですか?」


「初めて運命に抗えた気がするんだ。ただそれだけなんだ。本当に君が生きていてくれてよかった...!」


涙を指で拭き取り、自分の力で救えた少女をじっと見る。


「…っは!そ、そんな!お礼を言いたいのは私の方でございます!私はもう死ぬのかと思っていました… 助けてくれて本当にありがとうございます。私の名前はソラと言います。見た目の通り白狐の獣人です。救っていただいたこの命、死にゆくまで貴方様に仕える所存です!なんなりとお申し付け下さい!」


顔を見つめられた頬を赤らめている少女、ソラは自我を取り戻し両手を顔の前に出しブンブンとふる。全力否定だ。それが落ち着くとソラは自己紹介をした。


「そんなに重たい思いで無くてもいいよ。僕が助けたかっただけなんだから。僕の名前はリュー。よろしくね、ソラ。」


「は、はい!」


ソラは狐耳をピン!と立たせ尻尾を振って返事をした。

お互いにどこかよそよそしい。それが僕とソラの出会いだった。






*補足*

魔法は火、水、土、光、闇、雷、氷、時空、回復の9種類あります。

階級は低い順から初級、中級、上級、超級、絶級、神級です。詠唱は(強キャラ以外)必要です。



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