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●二章-4.不思議パワー

この世界の多くの法則は未だ不明な点が多く、調査中です。


という逃げ台詞を用意しています。


※前回のあらすじ

・大図書館でっかい。

・本いっぱい

・危険もいっぱいらしい。

-fate アキヒト-




 クロスロード、特にニュートラルロードは不夜城である。


 時刻は21時頃。ようやくニュートラルロードまで出た俺たちは賑やかな笑い声に包まれていた。

 至る所にテーブルが広がり、酒や料理が行き交っている。この街にこれだけの人が居たのか、という程の喧騒がいくつも見受けられる。


「賑やかだなぁ……」

「はい」


 街頭の十分すぎる明かりに照らされたシノはいつにも増して血色が良いように思える。ただ、それが本を読んだためか、それとも館長が出してくれたクリームあんみつのためかは定かではない。本を読むときより幸せそうでしたよね、シノさん?


「何か?」

「なんでもありません」


 シノがジト目でこちらを見てくるが、知らないふりをして周囲へと視線を逃がす。そういえば俺とシノって繋がっているから離れると命に係るという説明だったけど、リアルタイムに思考読み取りとかされていませんよね? ちょいちょいこっちを見ているタイミングが気になる事があるのだけど。

 ……ヤバイ。確認したいけど確認したくない。


 思考を切り替える。

 どんちゃん騒ぎは良いのだが喧嘩をおっぱじめている連中も居る。ジョッキ片手に取り囲み、即席のリングとなった路上での殴り合いを……普通に武器使っているけど、大丈夫なのかアレ? 当たり前の風景になっているらしく、回復魔法が使えそうな人が控えたりしているのはシュールと言うかなんというか。

 とりあえず巻き込まれないように喧騒からは距離を取りつつ町を往く。俺の世界でも飲み屋街なんかはこんな雰囲気なのだろうか。未成年かつ酒に滅法弱い貧乏学生には縁の無かった世界だ。


「シノはお酒飲んだことあるか?」

「あります。でも嫌いです。

 あれは感覚をおかしくして記憶を曖昧にします。記録者とし……」

 

 不自然に言葉を区切る。神話食いとしての仕事への忌避感……というより、申し訳なさが眉根を歪ませていた。


「ジュースは好きだよな?」

「……ええ。甘いものは好きです。ですが、この街には多すぎる気もします」


 フォローに気付いてくれたのか、話題の転換に付いてきてくれる。


「多すぎるって、何か悪い事でもあるのか?」

「あると食べたくなります。でも慣れると幸福感が薄れる気がします」

「中々に哲学的な意見だな」

「率直な意見のつもりです」


 甘いもの一つに幸福感を語り始めるのは哲学の括りで良いんじゃなかろうか。哲学の何たるかなんてさっぱり知らないけど。

 難しい事=哲学。哲学者に分厚い本で殴られそうだな。


「甘いものを取り過ぎると太るし、適度に抑えるって事は悪くないんじゃないかな」

「そうなのですか?」


 不思議そうに問うてくる。当たり前の事だと思うけど……あれ? 違うのか?

 そういえば炭水化物の方がよっぽど太るとかいう話を聞いたよな。あと脂肪の元である脂分?


「甘いものを大量に食べたという話は聞いたことがありませんので」

「俺も曖昧な記憶で言ったからな。

 今度大図書館に行ったときに栄養学の本でも読んでみるか」


 次に行ったときに覚えているとは思えないけど。

 そんなこんなで駅に着く。そういえばさっきの路上格闘、線路の上でやらかしてなかったか?

 と、電車が来たので見やると、屋根の上で戦っている人が居る。あ、蹴り落された。

 路面電車は我関せずで速度を維持しつつ俺たちの前で停まった。


「屋根の上で戦ってた人が居たけど、アレ、良いのか?」

『運航の邪魔をしたり、車両を狙って攻撃しなければ特に問題はありません』

「……さいですか」


 乗り込みついでにセンタ君に問いかけると、ロボットらしい淡々とした回答。

 大らかとかいうレベルじゃないなぁ、ホント。

 席に着き、横にシノも座る。車窓から見える明かりと喧騒。この街には五万人を超える人が住んでいるはずだ。その多くは探索者として活動している。その多くがこのストリートに集まっているとすれば毎夜の騒ぎも当然なのだろうか。


「この調子で『お祭り』になったらどうなるんだろうな」

「確かに既にお祭りの空気ですね」

「シノの世界のお祭りっていうと……収穫祭とか?」

「はい。あとは王都などで行われる建国祭や奉納祭、王族の冠婚葬祭ですね」

「これくらい賑やかなの?」

「いえ。これと比べられる国力のある国などありません。この時間にどこもかしこも昼のように明るいなんて神の奇跡でも不可能です」


 比較対象が神の奇跡とは大仰だと感じるが、現代技術でも昼を夜にすることはできない。それすら電気の発明という近代史に入ってからの成果だし、衛星から見た地球の夜はごく一部の地域だけが光り輝いているに過ぎない。

 ……って、これって電気なのか? 家にはコンセントらしき物があり。オーディオの電源コードも刺せたので気にしなかったけど。


『……』


 珍しくPBさんが暫く沈黙する。言い様も無い気持ち悪さがぞわりと背中を這ったところでPBさんの脳内音声が響いた。


『小型リアクター運用者への回答となります』


 妙な前置きが入った。


『まず、電気ではありません。100メートルの壁の影響で周波数を一定に流すことができないため、電気の使用は見送られています』


 50Hz、60Hzとかいうアレか。


『詳細は開示できませんが、小型リアクター実験機の前身、大型リアクターが町の数か所にあり、そこからエネルギーを送付しています。このエネルギーはコンバートが容易なため、各家庭にコンバーターを設置し、使用しています』


 意味が分からない。

 いや、確か……そうだ。不思議パワー。この世界の魔法は全部同じ不思議パワーを使っているってトミナカさんが言ってたっけ。


『はい。魔法、魔術、奇跡、超能力、その他物理法則を超越する能力の媒体はこの世界では1つに集約されています。それがどこから発生し、消費された後どうなるかは不明です』


 『いつか石油は無くなる問題』的な不気味さのあるコメントが最後についてきた。

 調査をしようにも来訪者の活動範囲はまだまだ狭い。その上100メートルの壁が調査を邪魔するって所か。

 で、そのエネルギーって名前付けないの?


『「マナ」と「エーテル」が候補に挙がっていますが、調査中かつ公表が難しい内容のため、公的な名称の布告は為されていません』


 下手に話題に挙げると発電所的な何かにも言及せざるを得なくなるから、か。


「……あれ?」


 ふとシノを見ると、俺の声に気付いてこちらを見る目と合う。


「シノって、空気中に漂っているエネルギーを食べられたりしないのか?」

「……どういう意味ですか?」


 どうと言われても思いついただけなので説明が難しい。でも物語を介して何かしらのエネルギーを得ているのなら、この不思議パワーを直接吸収できるんじゃないかなと思っただけだし。


「あー、ほら。先生の治癒術とか魔法とか全部同じ不思議パワーから発生しているらしいから、シノのそれも同じじゃないかなと」

「……やはり、良く分かりません」


『一部能力についてはコンバートが上手く行かない事が報告されています。その場合でも何かしらの媒体を介すことで力の運用が可能となる例を確認しています』


 先に言ってほしかった。シノの場合は『物語』を媒介にしないとダメってことか。

 今PBに確認したことをシノに説明しているうちに見覚えのある看板が車窓の向こうに見えた。

 さて、今日も終わり。あとは風呂に入って寝るだけかな。

TRPGシステムでは『カートリッジ』というアイテムで表現されています。

TRPGシステム。ここで開示するべきかしら。


結構分量あるのよね

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