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●一章-15.妖怪種の特区

 1章はどこで区切ろうかしらと思案中。

 章の区切りが付いたらまた一気に手直しをしようかなと。

 だいたい投稿の間が空いた時には同じところ何度も何度も書き直しています。

 文章難しい。


※前回のあらすじ

 何事も無かったので二日目のお仕事カット。

 終わったらもう一軒お使い頼まれた。

 ケイオスタウンに初潜入!

-fate アキヒト-




「……普通?」


 扉の園を迂回する道を抜け、東側からの道と合流して北の門まで一直線の道に入るまで、周囲を伺っていた俺だが、ついにその言葉が口から洩れた。


「そりゃどっちも管理組合が作ったんだもの。

 特にニュートラルロード周辺は大差ないよ」


 どこか苦笑するようなニュアンスでヴェルメが返す。

 おどろおどろしい色も、絶え間なく挙がる悲鳴も無く、ニュートラルロードに沿って商店が並び、その向こうには同じ造りの家々が連なっている。目隠しして連れて来られたら、どちら側か判別付かないだろう。歩いている住民にしても、大きな差は見られない。この点についてはロウタウン側も大概だなと。


「もっと瘴気だかなんだかが漂っているかと思ったよ」

「もう少し奥。大図書館の正反対位のところまで行けば、そういう場所があるはずだよ。霊体系不死種の特区があったはずだ」


 あるのかよ……。

 ちなみに耐性のない者が入り込むと一瞬で衰弱死する可能性もあるため、近づけばPBから警告が流れるそうだ。あと聖に属する物品の持ち込みや聖職者の進入禁止などが定められているらしい。


「元々特区法はこちら側の住民のための特別ルールだし、特区の数は多いよ」

「なるほどねぇ」


 それをなんとか一つの町に押し込めているこの街が無茶なのか。なんとなく共存できているのが凄いのか。

 そんな話をしていると、不意にヴェルメが右折し、ニュートラルロードから小道へ入る。

 その瞬間────何かが横に並んできた。今までバイクの速度で走る者は幾らでも見たが、わざわざ横にピタリとくっついてくるなんて────


「うわっ!?」


 思わず横にのけぞるが、謎の力で押さえつけられ落ちるのを免れる。


 婆さんだ。婆さんが走っている。

 ヴェルメの速度もなんのその、綺麗すぎる陸上フォームでぴたりと横に並んでいる。

 白い髪を結い上げ、渋い色の和服を纏った婆さんがしわくちゃの顔をこちらに向けている。俺が驚いた事に大いに満足したらしくニタリと粘着質な笑みを浮かべた。


「……ま、マッハババア?」

「そういう名前なのかい?」


 ヴェルメは特に気にした様子はないが、ターボばあさんやら、マッハバアアとか呼ばれた都市伝説だよな、コレ。

 婆さんはバイクの方を一瞥するとぐんと速度をあげ、いずこかへと走り去ってしまった。なにあれ滅茶苦茶速い。


「あの婆さん。この辺り走ってると、大体出てくるのさね」

「顔見知りかよ!

 知っているならあらかじめ教えて欲しかったんだけど」

「あんたが驚いたから機嫌良さそうだったね」

「……俺が運転してなくてホント良かったよ」


 のけぞったくらいだから俺が運転していたなら間違いなく事故っていた。というか、もう特区に入っているのだろうか?

 そう訝しがったタイミングでPBから妖怪種の特区に入ったとのアナウンス。完全にフライングじゃないですか。

 ……別に特区内のルールがあるだけで、特区の外は無法都市。こちらが反撃しても言いっこなしという状況なだけか。できないけど。


「あたしへの挨拶のつもりだったんだろ。大目に見てやんな」

「……まぁ、実害はなかったからいいけど」

「まぁ、ちょっかい掛けてくるのは早々居ないさね。

 それより前の建物が目的地だよ」


 ヴェルメの言葉に顔を上げると、道の先にでんと構える大きな木製の門が見えてきた。時代劇の奉行所などにある観音開きのヤツだ。その横には瓦付きの白い壁が続いており、和風建築の屋敷をぐるりと囲っているようだ。


「あれ? あの建物も管理組合の管轄外なのか?」

「いや特区の集会所さね。場所の特徴を付けるためにも特区長の意向を反映しているらしいね。左前のずーっと向こうを見てみな」


 言われて視線を上げると、はるか向こうに……闇? まるで暗雲が綿あめのように纏わりついている場所が見えた。


「あそこが吸血種の特区。

 あの雲の中には城があるって話さね。行ったことは無いけど」


 吸血鬼だし日差しが当たらないようにしているのだろうか。あれこそ俺が予想していたケイオスタウンのイメージっぽい。

 目を凝らしているうちに停車する。いつの間にか門の前に到着したようだ。

 それにしても、ほんとこの門、でかいな。高さ……4、5メートルはありそうで、俺が十人居ても開けられるか自信が無い。ご丁寧にその両脇には仁王像らしきものまで建っていて、威圧感を水増ししている。


「ほら、開けてもらいな」

「え? あ、あのー。すみません!」


 脇に通用口はあるがヴェルメが通るのは難しそうだ。

 インターフォンの類は見当たらない。というか、母屋まで100メートルはゆうにありそうなので、設置しても無意味ということだろうか。近くに誰かが居る事を期待して奥へと声を掛けてみる。


「聞こえておる」

「聞こえておるぞ」

「へ?」


 返答は両側から。顔を上げれば2つの像がそれぞれこちらを見ていた。像じゃなかったのかこれ?


「エンジェルウィングスの者だな」

「エンジェルウィングスの者だ」

「呼んだと聞いていたな」

「呼んだと聞いている。門を開こう」


 ひどく緩慢な動きで3メートルはありそうな像が動き、扉にしっかりと両手を付けると、大門をゆっくりと開いていく。

 そうしてヴェルメが余裕で通れるだけ開き、シンクロした動きで振り返った仁王像は、俺たちを見下ろし、うむ、と頷く。


「通りなさい」

「通るがよい」

「あ、ありがとうございます」


 満足げに頷いて定位置に戻る仁王像。

 さて、いよいよ妖怪種の本拠地か。鬼が出るが蛇が出るか。

 ……両方出てきそうだなぁ……

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