●一章-9.異世界宛
ちょっと泊りでTRPGとボドゲしてきたので体力とか時間とか超ヤバイです
※前回のあらすじ
ヴェルメさん、マジ姐さん!
お昼休みに喫茶店へ
ちょっと異世界まで手紙届けてくれない?
-fate アキヒト-
『この世界だけが別の世界に繋がっているわけではなく、別の世界から更に別の世界へと繋がるルートがあることが判明しています。
エンジェルウィングスはそれらの道を調査し、この世界で開かなくなった扉の先へ到るルートを作成することを目的の一つとして活動しています』
つまり、この世界からAという世界への扉が開かなくなったので、Bという世界を経由して、あるいはもっと経由してAという世界への道を探す、ってことか?
『そうなります』
どうして郵便屋がそんなことをするんだ? 世界から世界へ渡れるってのは分かるけど、必ず目当ての世界に辿り着くってわけでもないだろうに。
『それがエンジェルウィングス発足の理由だからです』
思わぬ返答に首を傾げる。
『エンジェルウィングスの社長、マルグスロスは永遠信教世界の出身者ですが、かの世界への扉は大襲撃の際に破壊されました。
氏は自分の世界へ到る道を探すとともに、同じく故郷への道を閉ざされた者の道を見つけ、言葉を、遺志を伝えるためにエンジェルウィングスを発足しました』
永遠信教世界……って確か……
『ヴェールゴンド、ガイアス、永遠信教。
この三世界の争いが大襲撃前に起きた征服戦争で、現在では「ヴェールゴンドの大征」と称されています』
ああ、そうだ。そしておそらくマッチョメンの故郷でもあるのだろう。
それにしても……壊された? 扉って壊れるのか?
『現在扉を破壊する方法は1つしか判明しておらず、それ以外に扉の塔、並びに扉を傷つける事に成功した例はありません』
1つ?
『怪物、です』
この世界の災害。そのワードに思わず眉根が寄る。
『大襲撃の際、防衛戦を突破した怪物がいくつかの扉を破壊しました。その一つが永遠信教世界に通じる扉です。
そのため、いかなる理由があってもクロスロード内へ生きた怪物を持ち込むことは禁止されています』
今日の配達の最中、町を囲む壁を見た。高さ10メートルは軽く超えており、テレビで見た万里の長城を連想させる重厚さを誇っていた。ここまでの壁が本当に必要なのかと感じたものだが、そういう理由があるのなら神経質にもなるだろう。
それにしても『生きた』と注釈をつけるということは、怪物の死体だと壊せないのか。
『切り離された体の一部、あるいは死体では傷付けられないことが確認されています』
実験済みらしい。というか、実験していいのかと突っ込みを入れれば「破壊された扉の残骸で確認しました」との事。
鬼の人が『防衛任務でもやっていろ』と賞金稼ぎに吐き捨てていたが、探索者の多くはその『防衛任務』に携わっているらしい。これは何人かでチームを組み、規定のルートを巡回警備する仕事だそうだ。
壁の件と含めてクロスロードが怪物に対し神経質に対応している事が伺える。
また、大襲撃が起こらないとも限らないし……
また盛大に話題が逸れた。
思考を「異世界への郵便」に戻そうとしたところである事に気付く。
「……ってあれ? 俺も家に手紙を送れるんじゃ?」
俺の世界への扉はマスターのような複雑な事情にはなっていない。エンジェルウィングスのサービスを使えば安否だけでも伝える事ができるはずだ。
行方不明になって3日。トラックの運転手が事故をちゃんと報告していたら、当然扉があるだろう場所も探しているだろうけど……それでも見つからないような妙な場所にあるのだろうか?
もしかしてひき逃げされた?
俺が居なくなっている事が知られていない可能性もあるのだろうか?
向こうの状況がわからないと、下手な手紙出せないよな……こっちの事を書いても十中八九いたずらか頭がおかしくなったと思われるだろうし。
でも、このまま放置していればやっぱり警察沙汰だ。
……とりあえず次の診察で考えるか。いつ帰れるかもわからない状況じゃ書くと決めても内容が決められそうにない。
「お待たせしました」
丁度食事が終わった頃合いでマスターが便箋を一枚差し出してくる。
俺はそれを受けとり、業務用PBで支払いを受け付けた。
「お預かりします」
「ええ、よろしくお願いします」
苦み走った笑み。手紙の内容が気になるが、開けて読むなんて言語道断だ。自分がされて嫌なことは他人にするな。基本です。
届くかどうかもわからない手紙、か。
この街には様々な『終わり』を迎えた者が到る率が高いと言う。
そんな彼らの出す手紙というのはどんな思いが刻まれているのだろうか。
重いな。
腰のポシェットに大事にしまい込みながら内心でつぶやく。
物語の「めでたしめでたし」の後の話。「いつまでも幸せに暮らしました」というのは日本に入った後に改変されたものが多いと聞いたことがある。それは確かに『一件』落着なのだろう。でも人生は一件で済まないあれこれが待ち構えているし、その果てにこの世界に到ったのなら、元々居るべきだった場所へ思う事が色々あるのだろう。って、社会にも出たことない奴が何を偉そうにって言われそうだな。
「じゃあ、ごちそうさまでした」
「はい、またのご利用を」
俺が立ち上がると、シノも急いで立ち上がる。
じゃ、残りの配達に向かいますかね。
俺は一度ポシェットに触れると、店を後にするのだった。




