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●一章-5.賞金制度

 賞金の説明に苦慮し、文章表現の拙さに悶えてました。

 うまく言葉にする難しさよ。


※前回のあらすじ

 蜘蛛のお姉さんにシノが気に入られた。

 外に出たらなにか騒動が?



-fate アキヒト-




 賞金制度────

 それはこの町に適切な法律を制定できなかった代替策として特区法と共に作られたルールだそうだ。

 概要をまとめると


 PBを使い、特定の個人に賞金を懸ける事ができる。

 賞金を懸けられた人物に対し、管理組合は「クロスロードの管理・運営への支障具合」を確認し、賞金額の上乗せを行う。この合計が実際の賞金額となる

 賞金首として認定された者は2日以内に管理組合へ賞金額の2倍を罰金として支払うことで、賞金を解除できる。この後、賞金を懸けた者は一年間、同じ人物に対し賞金を懸ける事は出来ない。

 賞金の設定がされた2日後に正式に交付され、以降賞金首を無力化した者に賞金が支払われる。


 と言う感じか。

 最初に思ったのは「金持ちがやりたい放題できないか?」だった。そして俺が思いつく程度の事、他の誰かも思いつく。更にそれを実行した者がいたのだそうだ。

 ちなみにその者は『賞金システムへの重大な悪影響を及ぼした』として、多くの賞金を懸けられる羽目になったという。

 この一件から金にあかせて賞金指定することができないことははっきりしたが、「管理組合に不都合のある者を抹殺する手段ではないか」という懸念が噴出した。管理組合はそれを認めた上で、『管理組合の不都合』とは『クロスロードの適切な管理運営ができない問題』と定め、追加する賞金額は審判を司る神種三人に委ねる事を宣言した。なんでも単独の事象を司る神様はその力が強い分、その力を偽るような真似は自殺に等しいのだそうだ。

 それでも悪用しようとすれば幾らでも抜け道がありそうだが、そんなのどの世界の法律でも同じことだ。神様なんて大層な物まで持ち出して公平性を示す事が神経質すぎるのかもしれない。

 ともあれ、現時点で賞金制度はクロスロードの治安維持に一役買っている、というのが大よその共通認識らしい。


 それを踏まえて。

 赤い甲殻を纏った賞金首は盛大に道路を破壊中であり、賞金額は上乗せされている真っ最中ってことになるのだろうか。

 賞金稼ぎの青年へのけん制のためか次々に炎を放つため、青年も踏み込めずに防御に徹している。甲殻男の方が有利にも見えるがその動きには焦りと苛立ちが見て取れた。

 無理もない。賞金稼ぎはあの青年一人ではないし、横入りの禁止なんてルールはどこにもない。


 案の定と言うべきか、それは訪れる。


「オイオイ……

 粋がるのも良いが、迷惑を掛けたらただのカッコ付けだ」


 ずん、と腹に響く声がざわめきを殺し、場の空気をひりつかせた。


 大男が無造作にやじ馬で作られた舞台に足を踏み入れる。

 身の丈は2メートルをゆうに超えているだろう。全身を筋肉が鎧っており、着流しにも似た衣装を引っ掛けていた。


「介入させてもらうぜ」


 面倒そうな、それ以上に青年への呆れを伺わせる言葉が牙を有する口から放たれた。

 それは『鬼』だ。額から一本角を伸ばした赤銅色の肌を持つ鬼が気だるげに歩を進める。


「邪魔をするな!」

「……黙れガキ。周りを見て見ろ」


 賞金稼ぎの青年は大男を睨みつけて憤りを表すが、鬼の一言に返す言葉が無い。

 見るまでも無く周囲は『惨状』と表現すべき状態で、その直接の原因は甲殻男だが、ニュートラルロードまで追いかけまわした挙句、膠着状態にしてしまった青年に責が無いとは言い難い。


「チぃっ!」


 青年とは比べ物にならない乱入者にいよいよ追い詰められた甲殻男が鬼に向かって炎の弾を撃ち放つ。

 が────


「……もう少し気合入れろや」


 無造作に伸ばした左手がそれを掴み、握り潰す。

 どぉんと小さくない爆発が起きるが、鬼の手は小動もしなかった。


「なっ!?」

「テメエもテメエだ。反省しろ」

「黙れっ!」


 鬼に炎が効かないと見るや、複数の炎を生み出し、周囲にばらまく。

 煙幕替わりかよって、こっちにも来る?!


 俺は慌ててシノを後ろに隠そうとするが、それよりも早く、複数の動きがあった。

 やじ馬の中から飛び出す白の統一された服を纏う者たち。彼らは盾で、剣で、銃で、魔法で、その全ての炎を叩き落とし、無力化する。

 そして間髪入れずに距離を詰め、次の瞬間には男を包囲してしまった。


「な、なんだお前ら!」

「なんだっていいだろ」

「良くありません。名乗りをしてください」


 鬼の横にいつの間にか女性が一人。人間のように見えるが、鬼に怯むことなく、責めるようにジト目を向けている。


「雑魚相手には気が乗らねえ」

「総長に報告しますよ?」

「……へいへい。

 『律法の翼』三番隊隊長 ドイルフーラだ。

 お前を捕縛するぜ?」


 絶え間なく周囲に視線を走らせている甲殻男がその言葉を聞いていたかは分からない。だが武装した十数人に囲まれては強行突破も難しそうだ。


「こうなったら!」


 やぶれかぶれか、起死回生の一手か。先ほどの数倍もあろう火の玉が甲殻男の頭上に生まれる。ここからでもその熱を感じられそうだと思った瞬間、鬼の手が甲殻男の顔面をがちりと掴んでいた。数メートルの距離があったはずなのに一瞬でその距離はゼロになっている。

 霧散する炎。男が必死にもがくが小指の一本も動きはしない。


「あ……がぁっ……!!!」


 みしり、みしりと甲殻が悲鳴を上げ、砕けた一部が地面に落ちる。


「やっぱり雑魚じゃねえか。

 この程度で手こずるんなら、素直に防衛任務でもやってろ」


 手に持つ甲殻男など歯牙にもかけず、鬼は立ち尽くす青年に苦言を呈する。

 その言葉に不満を強くする青年だが、すぐに自分が白の制服集団に取り囲まれている事に気付き、焦りを見せた。


「な、なんだよ?!」

「お前も賞金指定されたんだよ。施行は二日後だが素直に捕まっておけ」

「ふ、ふざけるな!! 俺はただ……!」

「ただ、人様に迷惑を掛けただけ、だろ?」


 淡々と向けられる言葉はあまりにも冷たい。いや、心の底からどうでも良いという感情が伝わってくる。

 ちなみに鬼に捕まれた甲殻男は既に手足を力無くぶらんとさせていた。そりゃ、フェイスロックだけならまだしもそのまま宙に吊り下げられたら首が無事で済まないだろう。甲殻が重そうだし……

 ……生きてるのか、あれ?

 女性が鬼の裾を引く。訝しげに女性を見て、それから視線を辿り、「いけね」と鬼が手を放すと、ゴガッと重い音を立てて甲殻男が地面に落ちた。どうやらあの甲殻、本当に鎧のような物らしく砕けた中から髪が覗いている。血塗れながらも頭は原型を留めているようだ。生きているかどうかは分からない。


「あー、なんだ……

 ほら、終わりだ終わり、撤収するぞ。

 ったく、この程度、お前らだけで十分だろうに」

「誤魔化しが雑ですし、分かり切った返答を聞きたいですか?」


 眼光が刃の鋭さで向けられると、鬼は肩を竦めて「お説教に繋がるから要らねえ」と突っぱねる。そのままどこかへと歩き去ろうとする背中へ女性は大仰にため息を向け、その後ろを追いかけた。

 残された制服集団も二人を確保し、周囲に頭を下げて去って行ってしまう。

 気が付けばその場で立ち尽くしているのは俺たちだけだった。


「……結局今の、何だったんだ?」

「……捕り物?」

「いや、そうなんだけど……」


 あまりにも撤収が早すぎてドッキリでも食らった気分だ。やじ馬も含めてこういう光景に慣れているってことなのか。


「……ここに居ても仕方ないし、昨日の店に行こうか。

 何か聞けるかもしれないし」

「はい」


 確認せねばなるまい。

 法律の無い町で『律法の翼』を名乗る集団は何なのかを。

 こんな騒ぎが日常なのかを。


 つまり「明日からの仕事、大丈夫なのか」の情報を求め、俺たちは昨日の店へと向かうのだった。

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