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●一章-3.雇用契約

この世界はTRPGなどで使用した思い入れのあるキャラ、

もう一度使いたいキャラを使って遊ぶためにデザインしています。

……純白の酒場なんて20年前程に運営していたPBWの設定デス。


※前回のあらすじ

 法律のない町

 ここは終わった者の楽園 エンデ

 金の話をしよう

-fate アキヒト-




「賃金は日に五千C、追加で1通につき百C。

 安いと思われるかもしれませんが、この街の物価、並びにインフラの大半が無料である事を考慮すればそれなりの額だと思います」


 一日大体40通。つまり日に約一万貰える程度。昨日の食事代を考えると、生活に困らない額かな。


「あなた方は二人セットでしか動けないことを考慮すると、一人分と見るべきなのですが、先ほどの件、我々の『お願い』がありますので、基本賃金についてはそれぞれにお支払いします」

「良いんですか?」

「はい。行方不明になっているアヤカ君の事については本社も問題としている件です。

 これから問い合わせることになりますが、まず通るでしょう」

「……どのような人なのですか?」


 シノが興味を示したことに少し驚く。

 問われたトミナカさんは一拍の間を置き、記憶を言葉にする。


「アヤカ君はエンジェルウィングスの初期メンバーの一人です。

 実家が修理工を営んでいるそうで、元の世界でもバイクを好んで走らせていたそうです。

 それらの経験から社長がスカウトした一人ですね」

「スカウト、って直接その世界に行って?」

「私の件は例外ですよ。

 アヤカ君は門前会議……管理組合成立前にこの世界に来ていたそうです。詳しい経緯は聞きそびれましたが」


 管理組合成立前ということは、大襲撃を生き延びた人か。


「溌溂としたお嬢さんで、ヴェルメの製作者と随分と意気投合しましてね。

 ヴェルメを預からせてもらうきっかけになった子で、ヴェルメがバイク型になった理由でもあります」


 ちらりと車庫側を見て彼は目を細めた。


「ヴェルメには大気中の魔力を吸収し推力に変換する特別製のエンジンが搭載されています。燃料の安定供給に不安を覚えていた我々が求めていた技術。その試作機です」


 出たな不思議パワー。そう言えば最初から魔法とか魔力って言えば分かりやすかったんだが……天使(と思われる)のマッチョメンの力に「魔」という言葉を充てる事を本能が止めた気がする。口にしていたらどうなっていたのか。うん。診察の時には気を付けよう。


「便宜上魔力と称していますが、この世界に措いては『超常の源となる何か』の総称ですね」

「……滅茶苦茶適当ですね……」

「ええ。その辺りは専門家が理屈をこねくり回していることでしょう。

 この世界はアバウト……変に柔軟な部分が多いのですよ。

 それが、多種多様な世界の多種多様な人種が普通に暮せている理由であり、勘違いを引き起こした問題でもあるのですが」


 それは興味があれば調べてくださいと微笑み、話を戻す。


「その魔力制御のため知能を付与したのですが、それが裏目に出たのでしょうね。

 アヤカ君の失踪後、ヴェルメはうんともすんとも言わなくなってしまったのです。

 何故君たちに反応したのかは興味深いところですが」

「心当たりあるか?」


 もしかしてシノが興味を示した理由があるのだろうかと聞いてみると、彼女は小さく首を振った。


「……ない、です」

「それが明確になればアヤカ君捜索の一助になるかもしれませんね」


 魔法云々が問題とするなら、そんな力に縁のない俺は関係ない気がする。思いつく限りでは大学に中型バイクで登下校しているヤツは数人居るが、友人というわけでもないし、大体男だ。

 アヤカという名前は日本人のようだが、日本人がキーワードならトミナカさんで反応して良いはずだし、他にもいろんな人に反応している事だろう。


「彼女はある日忽然と消えました。当初はエンジンの技術を狙ったものかとも考えましたが、実際の開発者はドゥゲストさんという技術屋です。彼女のレベルの知識なら地球世界で専門書を買ってくる方が簡単でリスクが無い。ならば人質にした脅迫かと考えましたが、音沙汰は無い。

 足取りを追っては見ましたが、手がかりは途絶えてしまいました」


 まるで黙祷をするかのように、あるいは祈るかのように、彼は目を閉じ、沈黙する。

 悲し気な、悔し気な、そんな感情を一瞬だけ垣間見せ、次の瞬間には穏やかな笑顔を作って話を続ける。


「この町の日常は穏やかです。

 しかし、非日常が薄壁どころか隣を歩いている事もこの街の一側面です。

 我々人間種は心配性なくらいが丁度良いのかもしれません。

 脅かすつもりはありませんが、その点は忘れないでください」


 町の光景を思い起こしながら俺は頷きを返す。昨日今日で、うっかり死ぬ可能性のある事象をいくつも見ている。巨人がうっかり振った手にぶつかるだけでも致命傷になりかねない。目にも止まらぬ速度で走る大型犬にぶつかれば車に轢かれたようになるだろう。

 とはいえ、元居た場所だって、非日常的な事件は毎日ニュースで流れている。差があるとすれば抗えるかどうか……って、不意の事故で死にかけたのは主観で昨日の事でした。


「さて、そろそろ話を本題に戻しましょう。

 先ほど述べた通り、賃金は日当で五千。これはお二人に。追加で一通につき百。

 あと、来たばかりで入り用でしょうから五万、契約料としてお支払いします。

 これについでは皆来たばかりの時に、似たり寄ったりの苦労をしていますからね」

「助かります。

 それで、仕事ってどの程度の頻度なんですか?」

「現状では週に3日働いていただければまず大丈夫ですね。

 毎日でも構いません。状況に合わせて本部からの分担を増やせますから」


 他に何かすることが思いつかない身としては、暇なうちに余裕を持ちたいところだ。

 スポットでは俺の世界の通貨にも交換できるらしいので無駄にはならないはず。


「シノ。できれば明日からなるべく働いておきたいけど、それでいいか?」

「アキヒトに任せます」

「……何かあったら言ってくれよ?」

「はい」


 ほんとかなぁとは思うがトミナカさんの前で問い詰めても仕方ない。


「じゃあ、明日からお願いします。

 四日後だけ、医者に行かなければいけませんのでその日は休む予定で」

「わかりました。予定表を作っておきますので明日以降記載してください。

 では、契約料をお支払いしておきましょう」


 トミナカさんが左腕を前に出すと、五万Cの受け取りについて脳内でアナウンスが流れる。


「ありがとうございます。ほんと、助かります」

「はは。では明日は朝9時頃を目安にお願いします」

「はい。これからお願いします」


 頭を下げるとシノも合わせるように頭を下げた。


 よし、じゃあ早速だけど昨日調達できなかった物をそろえに行こう。

 明日もこの服というわけには行かないだろうから、少なくとも下着と着替えだけは入手しておきたい。

(ピッ)無法都市 クロスロードの実績を解除しました。


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