●序章-1.問いかけ
こういう場には初投稿となります。
お見苦しい点もあると思いますが、生暖かい目でお付き合いいただければと。
-fate 青年(???)-
─────ですか……?
声が、聞こえた。
─────死にたく……ですか……?
しに……?
死……?
─────死にたく、ない、ですか……?
……俺は……
─────死にたくないのなら……
なら……?
─────私が、紡ぎ留めます。
つむ……ぎ?
─────はい
死にたくは、ないな。
─────。
最後に彼女は何と言ったのか。
確かめる間もなく、世界は白に染まる。
-fate 青年(???)-
目が覚めると知らない天井だった。
「……って、何処だよここ」
白い天井。学校とかで使われている黒く小さな穴が一定間隔で開いているヤツだ。
つまり……少なくとも下宿の天井ではない。
首を横に倒すと白いカーテンが揺れていた。もちろんこんな物も部屋にはない。保健室などでベッドとベッドを区切るために置かれている物だろう。
つまりここは保健室? ……それとも病院?
───なぜ、自分は病院に、いる?
「っ?!」
チリと幻聴を伴って走る頭痛。脳裏に浮かぶ光景。
飛び上がる勢いで上半身を跳ね起きさせ、体をまさぐる。痛みは、無い?
心臓が痛みを訴える程に動悸し、脂汗がぶわりと吹き出す。震えが止まらない。
断続的なフラッシュバック。頭が痛い。自分の意志とは関係なく記憶の断片が結合し、徐々に鮮明に構成される。
間近に過ぎて壁にしか見えぬそれ。直後の圧しか感じない衝撃─────
痛みすら知覚できないまま俺の視界は空に埋め尽くされて────
「落ち着け」
「げぶっ!?」
呼吸すらままならなくなりそうになった肺が背中からの衝撃で中身の全てを吐き出した。
痛い。背中も痛いが反動で無理に吸い込んだ空気で気管系が悲鳴を上げる。
いっそ気絶したいとさえ願ったが、咳と呼吸が入り混じった状態がそれを許してくれない。
十数秒の苦難の時間を経て、ようやく落ち着いてきた内臓を宥めるように細かく呼吸をし、目尻に溜まった涙を震える手で拭う。
「な、なにが……?」
「過呼吸で窒息しかけていたわりに、元気ではないか」
太鼓のような声音が弱り果てた横隔膜を直撃する。再び咽そうになるのを必死に堪えた。
「忙しい奴だな」
何時の間に現れたのだろう。というか、あのフラッシュバックにどれほど囚われていたのか。
そもそもいきなり背中を痛打し、太鼓のような重低音の声音を放つ男は何者か。
ぜぇぜぇと痛む喉に無理を強いて呼吸を整えながら少し前の光景を思い出す。
まるで保健室か病院にしか見えない部屋。そして涙に滲んだ視界に映る自分の装いは病衣のようだ。
つまり、ここは病院で俺は……助かった?
至った結論から安堵が生まれ、胸に穏やかさが流れ込んでいく。
深く息を吐き、引き攣るような笑みを浮かべてようやく俺は顔を上げる。
「あ、はっひぃ!?」
変な声が出た。
無理も無いと、主張したい。
こちらを窺うために顔を寄せていたのだろう。不意に視界を埋め尽くしたのは『圧』。
まるで岩から削り出したかのようなマッチョメンの顔面。
その造形は平時であっても後じさりしてしまう程であり……つまり色々と弱り切った脳と体に止めを刺すには充分な破壊力のあるシロモノだった。
結果。
脳が色々と放棄し、俺の意識は再び白い靄に閉ざされていくのだった。