第八話:見えぬ関係
七月七日、え〜実は皆さんに聞きたいことがあります。雨月の作品を以前読んだことがある方がいるかどうかわかりませんが……夏に向けて一つ息の長い作品でも書こうかなと考えています。それで、これまで雨月が書いてきた小説の中でお気に入りの作品なんかがあれば教えて欲しいと思います。まだまだ至らぬ部分(誤字など)が多々ありますが、がんばって執筆したいと思いますので出来れば協力してもらいたいなと思います。勿論、この小説も続けていきたいと思っていますのでこれからもこの小説をよろしくお願いしたいと思います。
八、
冤罪、それは責めたものが償うべき罪?
贖罪、それは罪をあがなうこと?
罪は何のためにあるのだろう?
彼の罪とは何なのだろう?
―――――
それは俺にとっておじにあたる存在。父さんの………弟だ。
「何で、無表情なんだろう?」
初めてアルバムを見てみると不思議なことが多いものだ。
それこそ心霊写真がこのアルバムの中に探してみれば一枚か二枚かあるかもしれないが(後で確認したがまったくなかった)全員が笑っている写真のなかで一人だけが笑っていない写真も珍しいものなのかもしれない。そういえばおじさんが笑っているところをみたことはあまりなく、生真面目……というよりもどこか陰のあるような人だった。
ピンポーン
「あ、はーい」
誰かが来た様で、アルバムを一度閉じると俺は玄関へと向かった。のぞき穴で確認すると………
「おじさん………」
先ほどまで写真の中で無表情だった人がそこには立っていた。笑みを浮かべて。
俺が扉を開けるとおじさんは中に入ってきた。やはり、笑みを浮かべて。
「やぁ、辰也君。約一年ぶりだね………兄さんの命日が過ぎるまでこの近くのホテルにいることになったんだ。ほら、お土産」
渡されたのは缶ビールとかだった。
「………」
言葉に詰まっているとおじさんはアルバムを見つけたようで、俺をちらりと見てたずねる。
「みていいかい?」
「ええまぁ………」
どうせ中に入っている写真はガキのころのものだ。いまさらみられて恥ずかしいことなどないだろう。
おじさんがアルバムを見ている間に俺はお茶菓子とお茶を準備してその対面に座ったのだった。
「今、幸せかい?」
「え?」
唐突にそんなことを尋ねてくるおじさん。俺はぼさっとしていたので再び聞き返す。
「どういうことですか?」
「今、辰也君は幸せかい?写真の中の君はとても幸せそうだ………今はどうなんだい?」
生半可な答えでは満足しないというそんな強固な意志を感じられる。両親を失った俺を心配してくれているのだろうかと思い、俺は答えた。
「幸せ………ではないですけど、不幸だとも思ってません。これからまた、幸せなことがあるでしょうし」
「そうだな、君はまだ若いから未来があったんだった…………あの日で終わりってわけじゃやっぱりなかったんだな………さて、それだけ聞ければ充分だ………私は失礼させてもらおう」
いきなり立ち上がって玄関へと向かっていくおじさんを俺は追いかけながら未だにこの人がどういった人なのかとはかりかねていた。
「辰也、いる?」
玄関が勝手に開き、そこから理恵の顔がこちらを見てくる。しかし、おじさんと目があったところで………
「あ!」
「ん?おや、君は………そうか、やっぱり未来はあったんだな」
「おじさん、理恵を知ってるんですか?」
「いいや、知らない」
「…………」
どう考えても嘘っぽい出来事。それはここの空気を変えるだけの力を持っていた気がした。おじさんは靴をはいて何事もなかったかのように俺を見て手をあげた。
「じゃ、また今度会おう、辰也君」
「ええ、わかりました」
「…………」
理恵は気がつけば俺の後ろ側にいて、そっと俺のTシャツの裾を掴んでいる。
扉が閉まり、理恵は俺から離れて彼女も扉に手をかける。
「え、え〜と、じゃあね」
「?」
何のために理恵がここに来たのかさっぱりわからなかったのだが…………理恵はさっさと出て行ってしまった。
「それにしても………」
それにしても、あのおじさんと理恵の間には何かあるのだろうか?まぁ、お隣だったし、さっきだってアルバムを見ていたのだ。
おじさんが『ん?おや、君は………』の後には『アルバムに載っていたこじゃないか?』かもしれない。
だが、それにしては理恵の反応がいささかおかしかった気がする。
あの目は知っている。里香が俺に向けていた目だ。そう、何かを恐がっている瞳の色………ただ、それにしてはおじさん自体を見ていた気がしない。自分で言っていてさっぱりわからなくなってきたが理恵はおじさんを見てはいたのだが視てはいなかった。なぜだろう?何故か漠然とした不安みたいなものを感じる。
なんとなくだが………俺は友人二人と話をしたくなった。携帯を取り出してまずは今頃暇であろう大輔のほうへ…………
―――――――
夢を見た。それは双子たちと一緒にキャンプに行った日の夜のことだったと記憶している。だが、そこにいるのは俺と母さんだけだ。
「ほら、辰也………水面に満月が反射して綺麗よ」
「うわ〜ほんとうだ〜」
「ふふ、まるで双子みたいよね?」
「双子?理恵ちゃんと里香ちゃんみたいなの?そういえばお空のお月様と水のお月様……一緒だね!」
「けどね、違うのよ。まったく同じなんてないもの………ほら、こうやって石を湖に投げ込むと………」
「あ、ぐにゃぐにゃになった!」
「きっと、お母さんが石を投げたから怒ってるのよ。怒りっぽい理恵ちゃんみたいね」
「そうだね〜……だけどさ、それならお空の里香ちゃんは?」
「視てなさいよ〜………えいっ!!!」
「歪まないね?」
「ええ、里香ちゃんはしっかりしていて石を投げても怒らないわね」
「すごいよね〜僕だったら泣いちゃうよ!この水面の月ってなんていうの?」
「湖面に映っているから湖面月でどうかしら?似て非なる双子ってことを覚えておいてね」
もう母さんの顔を思い出すこともあんまり………ない。十年という俺にとっては長すぎた年月が心の傷を癒してくれた。ただ、古傷はたまに痛むのかもしれない。ただ、夢の中の母さんと俺は双子のことで笑いあっていた。
――――――
「…………母さん」
夜中、目を覚まして自分の頬が濡れていることに俺は気がついた。どうやら、懐かしかったんで涙を流していたらしい。
「?」
ふと、誰かが近くに立っているような気がして俺はそこを見た。勿論、そこには誰もいない。
もしかしたら、母さんが近くにいてくれたかもしれないなと俺は思った。




