第三話:悲しみの後、始まりの前
どうも、雨月です。え〜………毎週土曜日に更新しようかな〜って思ってます。これからちょっとだけ暗めかもしれません。
三、
出会いたくなかった、心が痛むから。会いに行きたくはなかった、心が責めるから。
それぞれに笑顔があった。出会えば消えた。
あなたはどうですか?そんな相手に会うとやはり、消えますか、笑顔が。
―――――
雨が降り出したらしい………どうせ、夕立だ。
あれから、一日がたった。
しつこく、あの二人は俺の家の前にいるようだ。昨日の様に飛び降りてもいいかもしれないが…………さすがに恐怖が俺の心を覆う。正直、高所恐怖症の人の気持ちが生まれてはじめてわかった気がした。
今、俺の心は少しの変化を見せていた。いや、高所恐怖症になったわけではない。
裏切った、あいつらは赦さない……………夜道で襲え、そして俺は警察へつかまって未来を潰してしまえ………そういった汚い感情は何故、あの二人は裏切ったのか……、なんで、裏切ったの?僕は………裏切って欲しくなかった、信用していたのに………という心に変わってきた。自分で何を考えているのかさっぱりわからない。
われながら、ガキだ。自分で考えていることもわからないなんてな。
あの二人は隣人として、俺に接しているだけなのだ。そう、それだけなのだ。過去のことは関係ない、気にしない、割り切るのだと………言い聞かせた。
心を割り切って、俺は深呼吸する。俺はガキじゃない。
玄関へと向かい…………扉を開けた。
「辰也!」
「辰也君!」
二人はとてもうれしそうな顔をした。この二人に俺はこれから、割り切ると言うとても悲しい言葉を言わなくてはいけない。心が痛い、だが、こうしなくてはこの二人を恨まずには………いられない。
「はじめまして、お二人さん。俺の名前は篝辰也。よろしく!」
「た、辰也?」
「…………」
落胆、恐怖、絶望…………そんな風に目の前の二人の顔は変わっていった。心が締め付けられる。
「ど、どうしてそんなこというのよ、辰也!」
憤怒の表情で食って掛かるように俺に問いかける双子の子………ああ、そういえばこの子はすぐ………いや、俺は知らない。この子のことなんて知らないのだ。だって、今日はじめてあったんだから。
「ごめん、初対面の人に名前を呼び捨てにされたくないんだけど………苗字ならいいんだけど」
「っ!!!」
心が折れそうになる。もうちょっとで、この子は確実に泣く。この子を泣かせたい、お前の所為でこんな風になったのだと思い知らせたい。
しかし、こらえた。このこはあの頃に比べて………強くなったのか?困惑が俺を包む。
「み、水森………」
がつんっ!!!!
「俺は篝だ!!!水森じゃない!!」
玄関の扉を右の拳で思い切り殴った。その音にびくりとする双子。
「あ、ごめんごめん………」
右の拳がめちゃくちゃいたい。涙が出そうだ、いや、マジで。
「た、辰也君…………どうしちゃったの?無理してるみたいだけど?」
その目、その顔………俺を怖がっているその顔だけで俺の心を誰かが支配していく………それを抑えることが今の俺に出来るのか?いや、気づけ、辰也………怖がっている顔なんかじゃない、この子は心配しているのだ、俺を。
「いや、急に玄関を殴りたくなったから……………ごめん、気にしないでくれ……さ、町を案内してあげるからついてきて」
俺はそういってさっさと歩き出した…………右手を振りながら。
―――――
二人のことを完璧に無視して…………俺は空気に町を案内するかのようにして雨の降る中かさもせずに歩いていた。
一通り町を案内して俺は町の中央にある公園のベンチに腰掛けた。既にベンチは濡れていたが関係なかった。
町を案内している間、二人はひっきりなしに俺に話しかけてきた。昔から話しかけてきた活発な姉、あんまり俺に話しかけてくることはなかったが、姉よりも長い間となりにいてくれた妹………名前は完璧に忘れてしまっている俺が悲しくなった。
話しかけられても俺は自分の心を抑えることでいっぱいだった。
「この町、どうだった?よくわからないところがあったら教えるけど?」
「……辰也、こっちにおいでよ」
青ざめた顔でそういう双子姉。
「風邪、引いちゃうよ?」
泣きそうな顔でそういう双子妹。
「………一つ、昔話をしてあげる。面白くなかったら聞かなくていいけどね」
惨めだ。俺はそう思った。
「ある日さ、一人の男の子が家に帰ったんだ。そこには首をつっている父と家宝だといっていた日本刀に貫かれている母を見た。愕然とした男の子なんだけど………手紙を見つけて読んだ。漢字が多くてわからなかったんだけどね………今では中身も忘れちゃってるよ、きっと」
双子姉はぎょっとして俺を見ており、双子妹は息をのんだ。
「それから、彼がどうなるか………そうだね、誰が彼を引き取るか。そういったことはまだ決まっていない間は小学校へ行くことになったんだよ。遺産の話をあまり聞かれないようにと厄介払いにね。ろくな親戚じゃないよね、まったく。小学校、いったっていいことはなかった。その男の子、仲良くしていた双子がいたんだけどね………」
双子と聞いて目の前の二人の顔は青ざめた。いや、もとから青ざめていたから勘違いだろう、俺の。
「…………その男の子の心、壊しちゃったんだよ。まるで、汚物でもみるかのように男の子を見てね…………信用してたのに、心を二人に預けていたといっていい存在だったのにね。男の子を選ぶことなく、他の友達をとったんだって男の子は思った。ああ、壊れた心はあとでちゃんと戻ったよ?他の人が治してくれた………ある程度成長したその男の子の前に双子が何をしにきたかはわからないけどきたんだよ。せっかく治った心を再び壊しにきたのかって男の子は思ってる。憎い、そう、殺したいと思っているのかもしれないね。けど、成長している男の子は双子を赦している。おかしな話だよね〜………それでさ、くだらない話だけど、それほどまでに男の子は双子のことを信じていたんだよ………どう?ちょっと悲しいお話だったけど?」
感想も聞かずに俺は立ち上がって家へと帰ることにした。いかん、そろそろ風邪を引きそうだ。
歩き出してすぐに……………
誰かに背中から抱きしめられたのを感じた。
「ご、ごめん………ごめん!!」
姉のほうだ………憎しみが心を支配する………彼女をどうこうしないうちに早く引き剥がさなければ………
憎しみの声でどけ!と俺は言うことにしたのだが………
「ど、けよ………」
悲痛な声しか出てこない。その声を自分自身が聞くことによって心は痛み、悲鳴を上げる。
「ごめんね、辰也君」
妹のほうも俺を抱きしめる……………心が人の形をしているのなら今、頭を抱えて目から血の涙を出しているに違いない。
涙が頬を伝おうとしている…………いや、涙じゃないな、これは。雨だ。雨粒が俺の頬を流れていっているだけだ。あの日、涙は見せない、流さないって決めているからな………まぁ、嘘だが。
「…………はなれてくれ………人が見てる」
俺は二人を引き剥がした。
「…………じゃあな」
そして、走り始めた。勿論、あの二人が追いつけないほどの速さで俺は家に帰ってタオルで頭を拭き、さっさと風呂に入って布団をひっかぶって寝た。そのおかげか、風邪を引くことはなかった。




