第十話:終焉
さて、今回で終わりになってしまいました。もしかしたら別の話を書くかもしれませんが………まぁ、そのときはまた、お願いします。最後に、一言、できれば、最後に評価お願いしたいと思います。
十、
これから先の物語
それは嘘かもしれない
幻想かもしれない
だけど、一つだけいえること………
元凶の終焉、そして、少年の消滅
それで、終わる
―――――
九月十四日、そこは、とあるビジネスホテルの屋上だった。時刻は深夜十二時を軽く回っており、遠くからは暴走する若者たちを乗せているバイクの音が聞こえてくる。
「…………あの、何で俺をここに呼び出したんですか?」
二つの影が闇と交じり合っているそこで、一つの影がそう口走る。
「ああ、ちょっと面白くないなぁと思ってね…………」
対して、冷静に答えるのはもう一つの影。心なしか、人間とは思えないような冷淡な表情、声を見せる。
「面白くない?どういうことですか?」
その答えに意味を見出せないもう一つの影は首をかしげるような仕草を見せた後に何かしゃべろうとしたが、それより先に相手が答える。
「あの日…………」
「あの日?」
そうだよ、あの日だよ………と答えてからさらに口を開く。
「あの日、あの場所、僕はいたんだよ………当事者と言ってもいいね。いいや、犯人。そういったって過言じゃない………」
「!?」
絶句する一つの影、それに対してその反応を見て嗤っている影。
「………あの日さ、僕は幸せそうなあの家にやってきたのさ。そのときはまだ、ね、なんとも思ってなかった。だけどねぇ、急に幸せって奴が憎くなった。だからね、普段はあんまりおこらない僕の兄さんを怒らせたんだよ。そのとき僕らの家に代々伝わってる家宝であるあの刀を兄さんは手入れしていたんだよ。勿論、そこで怒らせたら刺されるのは僕さ。僕が刺されちゃかなわなかったから兄さんが愛していた女性についての嘘情報を耳元でそっとささやいていたのさ」
「え!?」
愕然となる一つの影、やはり、それに比例して狂ったように嗤い始める影。
「その顔、その表情!最高だね!………だけどさ、世の中はうまくいかない。彼女に向かっていった兄さんは笑う彼女の手前で止まっちゃったんだ。まったく、いつの間にかあの男、自分で怒りをコントロールできるようになってたんだね。びっくりしたよ。これも君という存在がいたからかな?」
それを聞いてほっとする影、それに対してもう一つの影は面白くなさそうに鼻を鳴らしたが、歪んだ笑みをしていった。
「………僕が体当たりしてやったんだ。一発だったよ」
「な!?」
目を見開いた影に対する影、笑うのだろうかと思われたが嗤わずに面白くなさそうに言った。
「その後、僕は誰にも見られないようにその場を後にすることが出来たよ。何、目撃者だっていたかもしれないけど、僕はその日、その場所が一番安全だって知っていたからね………なんでだって?ふふっ、言ったら面白くないからね」
男は笑うと髪を掻いてさらに言った。
「…………あの男があの後責任を取って自殺するってことは簡単に予測できたよ。だって、僕らは兄弟だからね………責任感の強い男だった。押して彼女を殺したのは僕だけど、そんな状況、つまり、簡単に彼女を殺せるような状況にしたのは僕の術中にはまった自分のせいだって思うだろうと簡単に予測できた。ま、これで忌々しい幸せは潰せたかなって思ったんだよ。警察は僕を疑ってはいたが証拠を見つけきることが出来なかったようだね。計画がうまく行き過ぎて恐くなったよ……だけどね………」
すっと男の目が細くなり、青年を睨みつける。
「………君がいた」
「!?」
言葉も出ない青年に男は続ける。
「…………あのあとさぁ、君の小学校の生徒を探して僕の言うことを聞いてもらったんだ。何、単純な子を選んだつもりだったんだ。まさか、君の隣の家に住んでいる少女だとは知らなかった。それを知った後、信用してもらうには君と一緒に撮った写真を見せれば充分だった。あっさり信じてもらえた僕は彼女にこういった…………さて、なんていったでしょう?」
いやな笑みを浮かべて、目は既に焦点が合っていない…………青年にはそう見えた。
「わからない…………」
「だろうねぇ………ふふ、彼女には『君はいつか絶対にあの子に裏切られる』ってね」
「そんな………そんなことを小学生が信じるとでも思うのか?言葉の意味だって理解できないだろう!」
青年はそう答える。
「ああ、僕もはじめはそう思ったんだ。だから、ゆっくり、じっくりと教えてあげた。あの子が両親を裏切ったからあの両親はあんな結末を教えたんだ。あの子と一緒にいたら、君の家族もそうなるってね…………」
不幸を呼ぶ少年の事実を知り、絶句していた青年だったが…………顔を上げる。
「………殺す」
「その目、その表情…………やっぱり、あの男の息子だね」
青年は男に掴みかかり…………顔面に拳を突き出すがそれを簡単に避けられた上に鳩尾に膝蹴りが入り、緩んだ左手をつかまれて一本背負い………青年は屋上の端から落ちそうになった。元から立ち入り禁止になっていて扉には鍵がかけられていた屋上だから飛び降り防止の柵などなかった。いや、あったとしてもこの男が柵をどうにかしてどかしていただろう。
「ははっ……無様だねぇ!ほら、ほら、どうにかしてみなよ!!!!」
蹴られ、そのまま右手だけで体重を支えているような状況となった。青年は上ろうとするが、その右腕の上に男の左足がのせられる。
「ぐぅぅぅぅ…………」
「ん?どうだい?こんな高いところから落ちたら…………どうなるか、わかるよね?」
男を恨めしげに見る青年だったが…………その後ろあたりで視線が止まる。
「!?」
「ん?どうしたんだ…………ぎゃあ!!!」
男は急に苦しみだし、足を踏み外して青年と同じ状況となった。その間に青年は屋上へと上る。そして、右手で全体重を支えている男を見ようとしたのだが…………
青白い、右手が伸びてきた。
「ひっ!?」
青年はしりもちをついてそれから下がる。そして、その右腕は屋上の端を掴んでいる男の手を…………つかみ、引きずり下ろしたのだった。
「ああぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・」
そんな声が聞こえてきて、どしゃっという音が遅れて聞こえてくる。
「…………」
青年はしりもちをついたまま、壊れたように口をパクパクしていた。そして、その青年の耳にある言葉がきこえてきた。
『………一緒に来る?』
「…………」
何かが迫ってきていたのが青年にもわかった。
『どっちなの?』
また、一歩こちらへと近づいてくるのがわかった。屋上の端………さきほど、男が落ちたところに青白い右手が載った。
『優柔不断ではあの二人に嫌われるわよ?』
「あ、ああ………お、俺は……僕は、まだ、誕生日を祝ってなんかない!僕は、あの二人とこれからもずっと、ずっと、誕生日を祝いたいから………行かない!行きたくない!!!」
上ってこようとしていた右手は動きを止める。
『………そう、それなら………』
右手はひっこみ、青年は安堵したが…………急に後ろから声が聞こえてきた。
『………オヤスミ、辰也………』
青年は急に意識を失ったのだった。
―――――
これが夢であるというのは俺自身がよくわかっていた。
「結局、僕、幼い辰也………という存在はなんだったんだろうね?あの日から僕は狂っていたのかな?」
『さぁな、だけどさ、お前がいなくちゃ、今の俺はいなかった。悪いのはあいつでもなかったということだろうよ…………』
「………そうだね、だけど、僕は母さんについていくよ。あまりにもかわいそうだ。あれが何なのか………ま、明日の朝起きたら全部消えちゃうさ。それより、あの人が言ったこと、全部は理解できなかったけどさ、僕らは助かった。それだけでいいんじゃないのかな?」
『そうだろうか………』
「ま、僕は疑問が一つあるよ………きっとまだ君はわからないんじゃないかな?」
『………なんだ?』
「最後だから、僕の意見は言えないけどね………幽霊っているのかな?」
『さぁな』
その返事に対して、相手は返事をもう、してくれなかった。
――――――
九月十五日、俺は寝ぼけていたので慌てて学校に行くと教室中は近くのビジネスホテルから飛び降り自殺があったという話で持ちきりだった。
「お、珍しいな、君が遅刻なんて…………」
徹がいつものように俺に近寄ってきた。俺はそれに対して右腕のみをあげて返事を返し、話のほうにくいついた。
「なぁ、自殺ってどういうことだ?」
大策が今度は口を開く。
「ああ、それか………それがちょっと変な話だからきっと話題になっているんだろう。まぁ、普通だったらここまで大騒ぎにならないだろうからな…………ちょうど、その時間帯は下のほうで暴走族の集会みたいなのがあってたそうなんだ。それで、警察がそこに来てたら上から男性が落ちてきた…………それはそこにいた全員………のべ、三十人近く全員がわかっているんだが、中にはすさまじい形相をした女性と一緒に落ちてきたといった人がいるんだ…………だけどな、どしゃっという音が聞こえると、男は消えちまったそうだ」
「消えただぁ?なんだ、それ?」
俺は首を傾げるしかなかった。だってそうだろ?そんなに大人数が見ている前で消えるなんておかしすぎる。
「どこのどいつのほら話だよ?」
そういうと今度は徹が言う。
「ほら話ではないよ、中にはこのビジネスホテルで以前に自殺した女性がこの男性を連れて行ったとか、この男に恨みがあったからころした〜とかそういった適当なことを言っている連中がいるけど、律姉さんが見てたからね」
なるほど、あの人はそういった嘘はつかない。
「むぅ、それなら一体全体…………」
口を開こうとすると後ろから声が聞こえた。
「おはよう、辰也」
「おはよう、辰也君」
「あ、里香と理恵か………おはよう」
俺がそういうと徹と大策はおかしそうな顔をした。
「ん?何そんな顔してるの?」
理恵が二人にそういうがその二人は俺のほうを見る。
「終わったんだ、何もかも」
「終わった?ふぅん、そうかい」
「終わった?ああ、ご愁傷様ってことか?」
徹はやはり一発で理解し、大策はやはり一発では理解していないようだった。
「あ、それよりさ、辰也……こんどさ、水族館いかない?」
「水族館?」
「うん、今度の土曜日の午後から………どうかな?あ、勿論他の三人も誘うから」
その後、俺たちは水族館に行く準備の話をしていたのだった。他愛もない、どこにでもいそうな高校生の会話………俺にとっては新鮮なものに感じられた気がした。
――――――
九月十四日、とあるビジネスホテルの屋上に行くと男性の声と青年の声が聞こえて来るそうだ。内容はどれもおかしなことで、よく理解できないものにとっては気味悪がってその場所から去ってしまう。だが、その内容を知っているある人物がその場所に行くことがあれば、ある事件は解決するだろう…………。
――――――
裏切って、とある青年との信頼を回復するまで少女の道は長かった。彼女にはずっと、ある女性が見えていた。その女性は宙に浮き、青白かった。
『あの子をずっと、見ていてね』
九月十四日、そんな夢を見た少女は涙を流しながら心に誓ったのだった。彼女の妹ともに……………
――――――
エピローグ、
水族館、ちょっと疲れていたので俺はベンチに座ってばらばらに行動している連中を探すのにいい加減飽きてきていた。
「はぁ…………高校生にもなってみんなばらばらで行動するってどうよ」
エイがみたい!サメがみたい!イルカがみたい!鯖がみたい!と言ってここについて自己中心的に動いている連中がむかつくのはなぜだろう?
考え込んでいる俺の視界が急に暗くなる。
「だ〜れだっ!!!」
「………馬鹿かお前、この声は理恵だろ?」
手を振りほどいて後ろを見るとやはり、理恵だった。
「ばれたか……」
「ばればれだっつぅの!!………それより、エイはもう見飽きたのか?」
「ん〜ここに新種の水陸動物を発見したからそっちを見ようかと思ってね」
「…………」
「あのさ、辰也…………」
隣に座って理恵は言った。
「………幽霊って信じる?」
それに対して、俺は何かを思い出しそうになったのだが…………思い出せなかったのでこういった。
「ああ、いるんじゃないか?」
「うん!そうだよね!!」
「?」
俺の腕を取って嗤いかけてくる理恵。ううむ、何がなんだかさっぱりわからないが…………放っておくことにしよう。
「それより、そろそろ皆を探しに行くぞ。帰りの電車に間に合わなくなる」
「うん♪」
俺の腕を抱きしめ、理恵は立ち上がった。
「お?」
「ほら、行こう?」
その笑顔がいつか見た笑顔だったような気がするのは気のせいかもしれない。だが、俺はその笑顔を見れて何故か、ほっとした。
〜END〜




